村を燃やす 1月 /「入金済み」「ほぐし水」


入金済み / 丸山るい

揚々と電話を切ってそのあとはさみしいいかだとなって過ごした

カーテンに鳥影やがてまどろみがシチューのようにひろがってゆく

セーターを着たまま眠るセーターはあたたかい冬は立方体だ

夢よりは前世の話をしてほしい食べ終わったら割箸を折る

賃借の関係にあるひとだけが肉声で春を祝ってくれた

あれはダリ、あれはカトレア あと五百メートルほどで火葬場に着く

真夜中を素手で歩めば向こうからけものそれからおおきなけもの

一度だけ抱きしめられて内臓の位置はまるごと変わってしまう

まなざしをとりかわすごと深くなる森であなたは栞をなくす

燃殻を重ねるような日々のこと入金済みのしるしをつける

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ほぐし水 / 岡本真帆

水満ちたにおいを思い出したくて宇宙で独り聴く雨の音

ありがとうございますって受け取った本に私の没年がない

JASRACのサーチライトに照らされてそれでも絶唱してるQUEEN

謂われのない呪文を笑い飛ばしたい ブスから順にマフラーを巻く

森柄のトートバッグのいきものは虎だけなのでさみしいかもね

ひとしきり笑って告げる「ゆめだね」で 雪があなたをとじこめてゆく

喪失のあとが残っていることをこだまみたいに響かす手紙

しねまって名前を呼べば草原はスローになって焼き付けてくる

桃のこころ炎のこころ泥のこころ 駆け抜けるものぜんぶが私

ほぐし水のようなあなただ何もかも光ってみえる冬の坂道



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