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異次元フェスの個人的レビュー

 異次元フェスお疲れさまでした。2023シーズンの最後にふさわしい化け物みたいなライブだったと思います。プレビューも書いたのでがんばってレビューも書こうと思います。よく見知ったアイマスについてはざっくりとになりますが、グループごとに触れていきます。
 アイマスですら全曲追うのは相当大変なのですが、ラブライブの曲を抑えたくなりました。ラブライブは周囲のオタクから流れ出てくる副流煙による受動喫煙程度しか知識がなく、このフェス前に自分のペースでいくつか曲を漁った程度だったのですが、この記事を書いた時点で〇〇分で分かる!シリーズの動画までは見終わるなどしました。

・アイドルマスターシンデレラガールズ
 
浅利七海の「ラブレター」は素直にひっくりかえってしまった。
 ユニットで動くシャニマスに比べて演者の並びだけを見ても何が披露されるのかが全く不明なシンデレラとミリオン。そんななかで二日目のニュージェネレーションズとU149はしっかり定番を抑えてくれたのは安心しました。意外だったのは初日でのTaku Inoue曲の未披露。大槻唯、宮本フレデリカ、速水奏、ナターリアと決め手はないながらも揃っていなくもないという状況でしたが、結果は二日目で「さよならアンドロメダ」の披露でした。こういうフェスの場では客席で「見たい!」ものがある以上に贔屓のコンテンツを知らない他の客に「見てほしい!」欲求もあると思いますが、765以来のコロムビアが持つテイストの違う楽曲の代表として「さよならアンドロメダ」をやれたのはとてもよかったです。次にこういう場があれば椎名豪を聴いてみたいかもしれません。あと次の機会にはぜひ「パ・リ・ラ」を。
 「MY舞☆TONIGHT」の小市さんのダンスは遠くからもはっきりわかる大振りのキックが最高でした。SS3Aで初めて見たときから「この人のダンスを見るために金を払ってる!」と見るたびに毎回思ってます。足にスプリングが仕組まれているみたいだ。

・アイドルマスターミリオンライブ
 現地では「おいおい、JUNGOのお気に入りセトリか~」とか思ってましたが終わってみれば「ジャングル☆パーティー」のバズりに結果としてよかったのか?という感じ。ただ、客観的には同じような位置であろう「Eternal Harmony」は条件反射で大喜びしてしまったのでそのへんは“定番”に対する個人的な喜びの差かもしれません。たしかに「見たい!」ものでいえば直近の10thツアーでやるのが先ですよね。今回の3rd~4thの頃の人気曲詰め合わせは曲が育ちきってるので普段ミリオンのライブに来ない人にも割かし入りやすいといえばそうだったのかも。ミリシタ以降のシーズン曲についてもコロナまわりでイベントの減少がなく、披露機会がしっかりあり、曲が育ってくれればこういう場にも入ってきたかもしれません。披露の場が重ねられていれば「真夏のダイヤ☆」「スペードのQ」の2曲なんかはここ来てもよかったかな?との期待はありました。

・アイドルマスターシャイニーカラーズ
 はじめてコメティックを現地にて見ました。アイドルコンテンツでありながらがなりができる「無自覚アプリオリ」は時代性の反映なんでしょうがフェスの場だと異質で強烈な印象があってよかったです。他のユニットの披露曲はどれも個人的な予想とは外れた印象でした。「アルストロメリア」でアニメやシャニソンもあるし分かりやすくいくのかな?と思ったら「学祭革命夜明け前」や「abyss of conflict」などちょっとど真ん中から外した選曲で来たように思えました。コラボで使われた「キャットスクワッド」もそういった曲の一つだったのですが最後の曲が終わらないギミックを楽しむのにこれ以上にない場で面白かったです。個人的にはコラボがある場なら「相合学舎」を次に期待しています。

・ラブライブ!サンシャイン!!
 「コットンキャンディーえいえいおー」。ラブライブの曲を調べよう!と公式youtubeを開くととにかく主張の強いサムネイルがあるのですが、熱帯の両生類とか毒キノコみたいな「覚悟して手を出してね!」って訴えてくるようで結局触れてきませんでした。ただ現地でこれ以上にない盛り上がりのタイミングでやってきて初見なのに喉が破壊されてしまいました。黒澤ルビィは双葉杏みたいな面白おかしいキャラクターなのかな?と思ってアニメのまとめ動画見たら全然そんな様子がないのも割と困惑ポイントです。連番にラブライブもアイマスも全曲分かる人間がいて、その彼が言ってたのですが、このフェスであのセトリ位置にもってくれるぐらいのパワーのあるソロ曲というのは一種の到達点を見たかもしれません。
 「WATER BLUE NEW WORLD」の文脈など見るべきものは沢山あるはずなのですが、過去のバンナムフェスで披露された「JIMO-AI Dash!」もあって、劇薬をもってるコンテンツという印象が強化されてしまったかも。
気になった人:高海千歌役伊波杏樹さん
 曲じゃなくて人です。二日にわたって全体MCで中心にいたのもあるけれど存在感が強かった。ふりかえってみればAqoursが曲数を少ないながら(ライブ終了後に知った)もそれを感じさせなかったのはこの人がいたからかも。「繚乱!ビクトリーロード」の最初の「日本一の富士の山!」の勢いと音圧が、二日目最後の会場の熱気と盛り上がりに最初に火をつけたと思います。全体的に中村繪里子さんもかくやの覇気を発していたように思えたのですが、これはきっと長くコンテンツの真ん中で色んなことの矢面に立ってきた経験と覚悟から出てくるそれに感じました。

・ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
 予習のときからメロディがわかりやすくて一発で覚えられた「わちゅごなどぅー」が初日の最初の方にきたのは安心できました。それまで矢野さん演じる高咲侑をアイドルの一人かと思っていて、途中で追加出演発表だったのもあって仕事の都合でソロ一曲だけやるのかな?とか考えていました。〇〇分で分かる!youtube動画をライブ終了後に見たところ、出てくる子をどんどんたぶらかしていく様子に「ヒトリダケナンテエラベナイヨー」の曲の聞こえ方変わりました。「異次元★♥BIGBANG」でアイマスのキャストもいる中で壇上に一人制服の子がいるのも異質でよかったな。
 ソロ曲が中心の披露だったのはこのフェスの中では格別にコンテンツの色の違いを出していたと思います。時間的に仕方ないのですが、ソロ曲やるならやっぱりフルで聞きたい!と思ってしまうところはありました。どのソロ曲にも背景にMVあるのがよかったです。アイマスは基本的に映像に既成のアニメやゲーム映像を利用しませんし、フェスの場でもゲームの映像になるので、MVの利用は新鮮であったと同時に、知らない曲でも視覚的な刺激が楽しみ方の補助輪になってくれました。
気になった曲:無敵級*ビリーバー
 イントロよし、メロよし、サビよし、かわいいMVの映像よし、後ろの結構クラシカルな音よし、なにより最後のハニカミのギミックよし。後で人気曲というのを知ったのも納得のスゴ曲でした。

・ラブライブ!スーパースター!!
 プレビューでも書いたようにラブライブでもこういう曲あるんだ!と思った「Day1」が来てくれて嬉しかったです。まさかの「Day2」でしたが。全体的に踊りがめちゃくちゃすごいのですが、こういうフェスの場ならともかく曲が連続する単独の場ではどうしてるんでしょうか。かなりかっちりと固まってるフォーメーションにアイドルコンテンツらしいというよりも、アイドルらしさの追求を感じました。今回ユニット披露以外では全体衣装が統一されていたのが初見の曲でも今はLiella!の出番ですというのがわかったのがありがたかったです。(逆に言えばコラボなどではどのコンテンツの方の歌唱なのか不明なままがほとんどであった。大きな問題ではないですが)アニメのまとめ動画をさらっと見た限りでは次の機会には「未来予報ハレルヤ」を聴きたいですね。
気になった曲:私のsymphony
 発見でした。陳腐な言葉ですが、エモい王道曲に個人的に弱いのでそこに綺麗にはまりました。初見の曲は歓声と高揚感で聞き込みができない分、現地では分かりやすくノレる曲がライブ直後の印象では強烈に残るのですが、こういう曲はアーカイブや披露楽曲の復習をしたタイミングでじわじわとやってきます。個人的な異次元フェス後の最リピート曲です。今回のフェスだとシンデレラガールズとの共演だったのでそうはなかったのですが、音源だとソロのパートがしっかり用意されていて“推し”の感情が入る部分をしっかり聞き込めるポイントが用意されているのがとてもよいです。

・ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ
 最新のコンテンツということもあって曲数が少なくとっかかりやすいことから一通り曲を聴くことができたことに加え、近しいオタクからの布教もあって事前に一通りの盛り上がりを把握できていた唯一のラブライブコンテンツ。事前に「ド!ド!ド!」や「Mix shake!!」は盛り上がって楽しめる!と話に聞いていて、事前に聞いたときは「なるほどこれは盛り上がるだろうな~」なんて理屈としての把握に留まっていたんですが、実際に会場で聞いて本当に意味で曲の強さを理解しました。でも一番刺さってるのは予習でしか聞いていない「ココン東西」。このフェスの終了後にタイムラインの結構な人がアイマスの新作か?ってぐらいみんなアプリを導入しているのが本当にすごいです。
気になった曲:Holiday∞Holiday
 タイムライン上の数多のオタクと同じですが、多分に漏れずめちゃくちゃよかったです。事前に全曲聞いてたはずなんですが現地で新鮮に発見できたので、予習の時は聞き流していたのかなあ。ドームでの手を横に振りながらの「月火水木金土日~」のところは他にそういう横ノリの曲が少なかったのもあって印象的。サビを通して破綻しないちょうどいい上擦り気味の歌唱が聞いてて心地よい。

・765PRO ALLSTARS μ's 異次元★♥BIGBANG
 初日も二日目もあまりにもな出来事だった。二日目の「異次元★♥BIGBANG」はもう東西ドイツ統合記念のベートーヴェン第九か?とか思いました。当時のドイツ市民ってああいう気持ちだったんだろうな。ドームのモニターに大きく765PRO ALLSTARSとμ'sの文字にお互いのコンテンツのロゴが並んでいるだけのモニター表示がシンプルだけど過不足なく何が起こってるかを雄弁に語っていた。
 ラブライブのアニメを全く見ていなかった自分でさえも「snow halation」の落ちサビUOや物語上の人気曲であること、この曲が来たときのラブライブのファンの見たいものを見れたことへの喜びが想像にあまりあること、そういうのをひっくるめてあの場でUOを折れたことへの誇らしさがありました。
・よかった曲:M@STERPIECE
 題名に“最高傑作”の意を与えるなんてそうそう出来ることではないとこの曲の登場以来ずっと思っているのですが、その名にふさわしい楽曲の強度があるなと披露される度に思います。もともとは劇場版の挿入歌ではあるのですが、個人的にはメタ的なアイマスというコンテンツのテーマ曲としての思い入れが強いです。
 劇場版の中で「私の今居る場所は、今までの全部でできているんだってことなの」という天海春香のセリフがありますが、2015年のアイマス10周年のライブにようやく辿りついたドームの地で大サビの「夢をはじめて願って今日までどれくらい経っただろう」で泣き崩れる中村繪里子さんを見たときに、当時のシンデレラガールズとミリオンライブ等も含めたすべてのアイドルマスターが無ければこの見たい光景を見ることはできなかったと実感した。この曲は自分にとって天海春香のセリフのとおり、自分がアイマスを知ったときには姿形もなかった沢山の後輩が広げた「今までのぜんぶ」のおかげで765プロが、アイマスが今ある場所に辿り着くことができたと再確認できる曲だと感じています。2月の合同ライブではSideMやシャイニーカラーズも加えての歌唱になり、広がったアイマスの世界を包摂する曲としての強さをとても感じました。
 今回のお互いに歌唱を交換することでラブライブ側がこの歌を歌うことになったことで、それまでアイマスというコンテンツの中での曲だったのが、ラブライブという互いに影響しあったライバルコンテンツであったというアイマスの枠を超えた部分についても、それらを「今日までどれくらい経っただろう」の一節で飲み込んでしまったように感じて、猛烈に感動してしまった。
 全てのアイマスアイドルに歌ってほしい普遍性をこの曲には求めていたけれど、アイマスという枠を超えてしまえるぐらいになったんだなとこの曲で涙する大熊さんを見て思いました。とてもよかったです。

・総括ほか感想いろいろ
 レビューではある程度コンテンツの垣根を超えたものが見れるのでは?と予想しましたが、バンナムフェスではブロックごとだったのでそこまでハードルを上げてもいけないなと期待値低めで行ったのですが本当によかったです。フェスという場は良くも悪くもよく知らないコンテンツの披露時は主体性のあるファンではなく、パッシブな聴衆になってしまうことはバンナムフェスの過去の経験からいっても十二分にあるだろうなと思ってましたし、事前の期待値の低さは、この分からないものを楽しめるかの不安によるものだったのだと思います。だけど今回はセトリや演出の妙もあり、知らない曲の披露であっても、楽しめなければもったいないと思わせ、主体的なファン経験に巻き込むことができたからこそ、フェス終了後のSNSでの盛り上がりに至ったものだと思います。
 もはやそういう時代でもないのでしょうが、近しい趣味であることはお互い分かっていながらも、コンテンツの作法や形作ってきた文化の違い、そしてなによりお互いのコンテンツの供給でいっぱいいっぱいでその意識を擦り合わせる場所がただ無かっただけなんだなと。同じものを見て、同じ声援を出して、同じ経験をしてしまえば、それまでのうっすらとした心理的障壁なんてものは大したことないんだと体験で分かってしまった。こういうことの喜びを感じられる経験って本当に稀有だと思いました。
 最後に一つだけ注文をつけるのであれば、コールの映像での表示は丁寧にしすぎてもしすぎないことはないと思います。