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2023年印象的だったアイマス楽曲

 今年はずっとお世話になっていた渋谷TSUTAYAがついに閉館となりすべての音源を速やかに聞き始めるというような追いかけ方ができておらず、年末の休みでやっとしっかりと聞き込んだという感じでした。配信でそれなりには買っていますが、聞き込みのできた曲とできなかった曲の差が大きかったと思います。
 相変わらず内輪での発表会もしたのですが、割と選出方針によって変わってしまうところがあったので当時の発表会では漏れた曲も1曲加えて記事に書きました。

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2022年はこちら

星の声
作詞・作曲・編曲:秋浦智裕

 夜空を見上げる真乃のジャケットを見てからこの曲を聴いたら、あまりにも曲の雰囲気がジャケットの描写と一致していて聞きながらジャケットのイラストが広がるさまを想起するこができた。同じフレーズを繰り返す音がイントロから徐々に増えていき、歌唱も合わせるようにイルミネの3人から全員の歌唱となるサビまで連なる構成が、一つ一つの星の灯りから星空全体に視界を移しているようでとてもよかったです。
 シャニマスも5周年を超えて出てきた全体曲がこの曲だったことで、楽曲におけるシャニマス“らしさ”がある程度固まってきたのかなと聞きながら思いました。これまでも「Resonance⁺」や「twinkle way」での歌声の拡散しきった先の声が届かない余地があるような(それでも届けようとするような)空間の広がりがある余韻含みの雰囲気にそれを感じていたけど、特にこの曲は強かったと思う。

・Forward March!!!
作詞:渡邊亜希子 作曲・編曲:佐々倉有吾

 シャニマスから二つ目。個人的な音楽の入口にマーチングバンドが少しばかりあるので聞き込む前から好きになってしまった。マーチングバンドのリズムとスネアドラムの音にすこしばかり「Tree」の頃のセカオワっぽさを感じて懐かしさと親しみがあるかもしれない。
 2番Aメロで1番にはなかった「それは今日絶対見つかるね あるある!」のはみ出しながらも音がハマっているめぐるの歌唱部分が大好きです。逸脱もそれもまた味になるというのがイルミネのテーマを感じるからかもしれません。「Happy Funny Lucky」の「おっとはみ出た黄色」ですね。

・平行線の美学
作詞:園田健太郎 作曲・編曲:ねりきり(KEYTONE)

 今年も増えたアイマスのアイドル。斑鳩ルカは先に「神様は死んだ、って」があったのでその路線を継承しつつも尖り方に色があって3曲とも好きですが自分がずーっと好き好きいってる走るピアノがあるので案の定この曲が刺さりに刺さる。
 こういう若さと不可分な「病み」に由来する厭世的な感情は最近結構みますがこういうのも単純で純粋な感情の発露ではなく商業ベースにパッケージ化されてしまうよね、最近は。 …みたいなコミュが今後ありそうな気もするなあって3曲聞いて思いました。
 コメティックの曲にはAdoの「うっせえわ」が最初にバズったときの世間の揶揄に無粋だから表だって言わないけど心のなかで僅かながらに理解できてしまうような微妙な感情に近しい温度感を感じるのですが、「平行線の美学」に関しては難しいながらも外部に折り合いをつけていく部分がみてとれるのが“大人”になってしまった自分には良い塩梅でした。カラーレスというコメティックの色付けを「これから染まるもの」ではなく「色付け(≒他社からの評価)からの前向きな逃避の結果」という回答にしているのが面白いなと思います。

・サイン・オブ・ホープ
作詞:烏屋茶房 作曲:烏屋茶房・篠崎あやと・橘亮祐 編曲:篠崎あやと・橘亮祐

 特撮ソングはコロムビアの本家本元ですよと思わせる完成度。2番終わりからの後ろで引き続けるwowwowの声なんかは平成ウルトラマンの挿入歌を感じる。一方で歌唱は流石にキャラクターの顔と表情が見えるアイマスのそれが変わらず維持されていて個人的に欲しいところに手の届く曲でした。過去のシンデレラの曲で「輝け!ビートシューター」が結構好きなのでこういう子供の頃に好きだったコテコテした味付けも自分の聴く音楽のルーツに確実にあるよなと感じます。
 今年のこの曲で触れずにはいられないのは燿城夜祭でのパフォーマンスでしょう。手に汗をにぎって「やりきってくれ!」と心臓をキューっとドキドキして応援しながら見るパフォーマンスでした。ライブならではの一回性の極限であると思います。

・Rat A Tat!!!
作詞:モモキエイジ  作曲:佐藤貴文 編曲:半田翼

 この曲については曲の純粋な感想について触れることはできないしミリオンライブのアニメに対しての感想に強烈に紐づいてもはやそれはアニメの感想では?という形になってしまう。
 劇中のオーディションの場面での使われ方もぐっとくるけど、第一幕の終わりにOP映像とエンドロールが流れたときの「あっ本当にアニメがあったんだ」と強く感じた瞬間がこの曲の印象としてこびりついている。
 ミリオンのアニメが「ずっと探してた ずっと夢見てた」ものである一方でその「ずっと」の時間の長さの分だけ膨れ上がった期待に耐えうる作品だろうか?という気持ちが片隅にずっとあった。劇場で見たときにはすっと作品の世界に没入してしまってそれを忘れたけど、エンドロールに切り替わったとき、現実に引き戻されたと同時に作品の面白さと愛がそれまで抱いていた期待感が満足に満たされた感覚がとても強かった。つまりはエンドロールに画面が切り替わったときに「アニメの世界にいた自分」が「ずっと望んでいたミリオンのアニメがある世界にいる自分」に接続されたのだ。この感情の切り替えをシームレスに行っていたのがこの曲であって、2番の入りの音に今まさに自分がミリオンのアニメをついに見た!という感動が紐づいたのであった。
 「UNION!!」の歌詞に「一人も手放さない」とかなり勇気のいる歌詞があるけれど、それと同じくらい「気づかれずに終わらせはしない」という勇み足な歌詞が含まれているのがまたミリオンらしいと思います。作品の側からの呼びかけのようでもありながら、応援する我々にとっても自らをどのようにこのコンテンツに向き合うかを言い聞かせるような象徴的な言葉だと思いました。

・Crossing!
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:堀江晶太

 ミリオンライブが10周年を迎えた。765の10周年ですらそれなりに感慨があったけどそれすら過去になってしまったことを改めて感じた今年であった。
 昔話で恐縮だが、自分がはじめてミリオンライブに参加したのが2ndライブでその最後に「765プロの未来はここにある!」と曲中に宣言していたことが思い出される。菊地真と1対1のプロデュースの場が入口だった自分にとって、その後の11人、13人、そして50人や52人のアイドルがいる765プロもいずれも765プロが歩んだ先にある数ある世界の一つに過ぎないと考えているけれども、ミリオンライブが出てきて当初で先の宣言は「大きく出たな!」と距離を置いてみていた。
 そこから相当な時間をともにしてみると、ミリシタのみならずアニメでのALL STARSの登場の場など、まさに「765プロの未来」を見せてくれたことへの感謝がミリオンには沢山ある。この曲を聴いていると10年(765プロとしてとらえるならば更に長い)という一つのコンテンツにとってあまりに長く晒されてきた時間の不可逆性を、良かった思い出を過去に押し流してしまう抗えない激流ではなく、その先への未来に繋げるために積み重ねていく転換に捉えているようだった。その転換がさらにその先の未来をより前向きにとらえられるように思う。
「あの日生まれた声の架け橋が きっと後を行く誰かの道も繋ぐ」
 なんだかミリオンの全体曲には予言とその自己成就を重ねているみたいだなと書きながら感じた。今年また一つ加わった予言がさらにこれから成就することを願ってやまない。


 今年は記念碑的な楽曲ばかりになってしまった。noteに移行してから外に出してないメモ書きは積み上げられてばかりだけれどほかにも何曲か触れられればという曲があるので気が向いたら加筆するかもしれません。