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七つの前屈ep.安楽詩衣「機能、役職、委員長~据われ、軸。~」

3.

「お化け屋敷か、演劇でいんじゃね?」

──メイド喫茶で決定ということで、よろしいでしょうか?

 手を叩いてそう呼びかけようとしていた安楽詩学級委員が口を開きかけたところで、どこからともなく、そんな声が飛んだ。

「文化祭っつったら、大体このどっちかだろ」

 茂武無像園他。暴食に時間を浪費するクラスメート。悪びれもせずにごめんなさい。

 外形的な中心人物。体裁上の人気者。

「また貴様はそうやって……! 真にこのクラスを仕切るべきはきみでも安楽詩……くっ……学級委員でもなく、僕であるべきなのに」

 罅歪才能。ひびいびつせんす。公立域還高校二年二組出席番号二十二番。天才な優等生。

 歪に歪んで罅割れた、屈折したサイノウ。

 彼は役職を全うする学級委員や、仮初のカリスマ性でクラスを仕切る人気者への皮肉を隠そうともせず、歯ぎしりを立てる。

「……まあ、いいだろう。僕は演劇に賛成だ。どんな役でも、完璧に演じ切って見せるさ──だって僕は、天才なのだから」

 それでも、筋の通った意見にはしっかりと理解を示し、賛同する。それが彼の、優秀ではあっても愚かではないところだ。

「うん……うんうん、いいんじゃないかな。わたしの占いにも、二組は演劇をするべきって、出てるよ」

 噂花秘密子。うわさばなひみこ。公立域還高校二年二組出席番号六番。域高きっての情報通。

「はいはい、賛成賛成。さ、ギンザ、帰りカラオケ寄ってく?」

「興味ないからそれでいいよ。……渋谷が行くなら行く」

「そのたくんがそれでいーってんなら、それでいいけど。あーあ、メイド見たかったなあ」

──では、演劇で決定でよろしいでしょうか?

 彼女は、中心に座ったまま、手を──。

「あのさ! でもどうせなら、お化け屋敷とかで、こう、ガツンと! 驚かせてやりたくねえか!?」

 黄仙沼白桃。けせんぬまばくと。公立域還高校二年二組出席番号十番。元『ニードルビー』構成員。

 公立域還高校二年二組の学級会は、まだ、終わらない。

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