現代詩「テトラポッドは象なのだ」

テトラポッドの上に座って僕は
遠い水平線を眺めている
海岸線のテトラポッドの集積所には
付番されたテトラポッド達が
幾つも並んでいるのだ

テトラポッドは何処から
やってきたのだろうか
ある人は
砂の中から生まれたのだと言い
ある人は
宇宙から飛来したのだと言う

僕が考えるに
テトラポッドは象である
大草原を旅した象の一団が
海を超えてやってきて
終息して石になると
テトラポッドになるのだ

テトラポッドに耳を当てると
ほら
まだ微かに温かく
心臓の音がしている
潮汐に呼応して
静かに

潮の満ち引きと
テトラポッドの心音と
僕の血流は同じものから
出来ているのだ

テトラポッドを持ち上げて
海岸線に並べてみると
彼らは象であった時の
威容を思い出して
さも雄壮に海に対峙する

凪の日には目を細めて
海の生き物と遊び
大時化の日には
唇を噛んで
高波に耐える

寡黙の時代が過ぎて
彼らを知る者はもう誰もいない

僕が思うに
テトラポッドは象なのだ
あなたも両手を広げて
夕陽の中のテトラポッドに
抱きついてみるといい
きっと
それが分かる

(現代詩「テトラポッドは象なのだ」村崎カイロ)

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