見出し画像

私花集「円盤【Saucer】眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー201905号」まとめ

眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー、早いもので一周年でございます。
毎回一つのテーマで皆様の作品をアンソロジーに繋げております。
今回描き下ろしもあれば古い作品もございます。
記事に費やす私共の熱情は色褪せません。古い作品の発する温度は今も当時と変わらぬまま。新旧の作品合わせてお楽しみ下さい。
(旧作品は私が面識のない方々に不躾にお借りしてきたものです。初対面にも関わらず快いお返事を下さった皆様、有難う御座いました。)

(※もしか、本アンソロジーに提出した作品が掲載されていない事があるやもしれません。私も相当頭がアレになっているものですから。お気づきの点はご遠慮なくお知らせください。あと円盤絡みの作品はnote内にも多数あり掲載できなかった作品も多々ありました。お赦し下さい。ハッシュタグ「ネムキリスペクト」の付いたもの、コメントにてお知らせ頂いた作品はすべて所収してある筈・・・と思うのですが・・・。)

さて表題の件、
今回のテーマは円盤でした。

円盤と云えば「空飛ぶ円盤」。世にも怪奇なフライングソーサーでございます。恐ろしいですね。怖いですね。沢山のUFO譚が蒐集されました。
しかしそれだけに留まらないのがnoteユーザー様の底力でございます。
発想の奇抜な円盤も沢山登場致します。
どんな円盤が集まったのかは幕が開いてからのお楽しみ。

眠れぬ夜はあなたとともに。
眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー、当月も無事、開演でございます。

目次

01 gif「D I S C - O - T H E Q U E 」 y.さん
02 音楽「夜明けのモノリス、動物の旅(Demo)」ヤチダモの幹さん
03 短編小説「円盤夜話」わたし
04 コミックエッセイ「まつりのあとに(ミョーチキリン日記112)」 MAYBECUCUMBERSさん
05 コラム「昭和55年ケイブンシャ世界の謎大百科からハマキ型円盤のこと」 たそがれ時のこいきなやつ等(たそラジ)さん
06 小説「空飛ぶ」KOKAGEさん
07 漫画「夜中に顔を洗う」緒方ろきさん
08 小説「舞ってくれ。」ウネリテンパさん
09 コラム「ドーナツと私」伊都佐知子さん
10 小説「円盤が空を飛ぶ」アセアンそよ風さん
11 コラム「いま、鉄の蓋がアツい。~蓋と意匠とまちあるき~」黒田玄さん
12 詩「ルンペルシュティルツヒェン」fuyuno coatさん
13 小説「落ちゆく星々」クマキヒロシさん
14 掌編小説「惑星ズヴェツダの丘の上で」くにんさん
15 イラスト「宇宙人の襲撃」KOKAGEさん
16 小説「祖母は円盤に乗って」民話ブログさん
17 コラム「我が心のペペラッツ」ことり隊長さん
18 漫画「いるいない」おおえさきさん
19 コラム「そうだ!UFOの話をしよう」りす=ハードボイルド
20 音楽「星」イーグルフェロモンさん

アンソロジーはこちらから。(https://note.mu/murasaki_kairo/m/m5c588bec02be)

解題

01 gif「D I S C - O - T H E Q U E 」 y.さん
毎回、素敵なGIFを作成されるyさんの新作です。本アンソロジーのために作って下さいました。このような零細企画には勿体ない光栄です。
円盤と云えばUFO一色になるかと思いきや、全くそうはならないのが、このアンソロジーにご参加される皆様の面白い所だなあとつくづく感じます。
アンソロジーの初手となるyさんの作品は円盤は円盤でも「レコード」です。
今回のアンソロジーで私も世間様の事をお勉強しましたが、好きな映画やアニメのDVDの事を円盤と呼んでいるそうですね。用例としては「これはアマゾンプライムでも見られるけれど円盤を買おう」など。
という光学反射の艶々の円盤ではなく、yさんの選ぶ円盤は漆黒のダークマターです。
その上を坊主頭のホウキギター少年がロックジャンプしております。この何一つ現代を感じさせる所がない点に驚愕致します。
しかし、それらの昭和然としたオブジェクトをまとめ上げるyさんのセンスは抜群の新時代感を伴っております。
旧いものと新しいものの交錯は本アンソロジーの普遍のテーマであり、また今回の「円盤」に因む隠れテーマでもあります。
素敵な作品を有難うございました。

02 音楽「夜明けのモノリス、動物の旅(Demo)」ヤチダモの幹さん

わたむしさんの録り下ろしです。「モノリス」はスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」に出てくる謎物体です。人類の進化を爆発的に促すなど特異点を発生させる役割を担っています。
「2001年宇宙の旅」を始めSF世界では時に「人類以上の高次の存在」が登場します。
それら高次の存在が私達を時に支え、見守り、また私達を滅するための敵として現れます。
私達はこの高次の存在に対して親愛と畏怖を感じますが、この親愛と畏怖は私達が大自然に対して感じているものと同種のものに思われます。
ヒトザルがヒトへと進化する夜明けの事を私達は知り得ませんが、旭日は今も変わらず昇っています。そうした夜明けを見るときに、大自然に触れたときにヒトは自らが此処に至る数千万年に思いを馳せるのでしょう。
普遍の審美性に感動するイノセントを追体験するかのような曲です。美しいです。


03 短編小説「円盤夜話」わたし

わたしです。
結末が些か冗長になってしまったので、そのうち手を加えたいと思っています。

04 コミックエッセイ「まつりのあとに(ミョーチキリン日記 112)」 MAYBECUCUMBERSさん
MAYBECUCUMBERSさん、前回のアンソロジーに引き続き再びご登場願いました。
花笠音頭を見ていたエツさんとトシさん。
その帰り道にお二人が目撃した謎現象についての実録回顧漫画です。
一コマ目の花笠音頭の描写が端的に美しくて好きです。そしてそれを語り合うエツさんとトシさんの改まった立ち振舞もユーモラスですね。
このエツさんは「不思議で奇妙なもの」を引き寄せる体質との事です。
MAYBECUCUMBERSさんで連載されているミョーチキリン日記は、エツさんの出会った不思議体験を漫画にしたエッセイコミックです。
昔、蜘蛛学者のエッセイを読んだときに、「蜘蛛の目」という言葉がありました。普段、蜘蛛は至る所にいるのですが、小さく目立たないので私達はそれに気付きません。しかし、蜘蛛好きの畸人はいつでも蜘蛛を探しているので、他の方が気付かない蜘蛛でも沢山見つける事ができる。「蜘蛛の目」が備わるからだ、と。
ミョーチキリン日記の主役はエツさんとコセさんですが、お二人はきっと不思議な物が大好きで「不思議の目」が備わったのでしょうね。
そのような目で世界を見れば、その姿は極彩色の彩度を以て輝いていると思います。素晴らしい事です。


05 コラム「昭和55年ケイブンシャ世界の謎大百科からハマキ型円盤のこと」 たそがれ時のこいきなやつ等(たそラジ)さん

誰が買ったのか分からない「児童向けオカルト書」が我が家にもありました。湿気が籠もる納戸の奥に仕舞われたそれは黴臭く陰湿な雰囲気をまとっていました。それは怪奇の世界を助長して、子供の目には非常な恐怖を喚起させました。当時にして既に古びたイラストは鮮烈に焼きつけられております。
たそラジさんのコラムはその「オカルト」を再読したお話。当時のオカルト特有の興味深いお話に満ちています。知的好奇心の偏奇な部分が刺激されます。
昭和という時代はエログロナンセンスに始まって戯けているようで、世界観が徹底しています。「アイドルは鼻毛が生えない」的な神話を狂信できた時代です。オカルトに於いても然り。どんなナンセンスであろうとオカルトは真実です。
そういったある種の生真面目さはくすぐったくも、心地良いものです。昔懐かしい、そして得られる知識は新しい面白いコラムでした。


06 小説「空飛ぶ」KOKAGEさん
KOKAGEさんです。私などはすっかり枯れて過去を生きているようなものですが、KOKAGEさんは歴とした現世人です。
変な紹介ですが、そうなんです。
前述の解説文に「昭和」の時代性について触れた部分がありますが、平成という時代はどことなく昭和のパロディ的な時代であったように、私は感じます。そう感じる最たる要因は私が現代を直視せず何を見ても感傷懐古的に穿って見ているからなのだと思います。
後ろ向きな私と異なりKOKAGEさんの視点はリアルタイムに前向きです。書かれる記事も日記、コラム、音楽PVの紹介、写真、イラスト、時には俳句、そして最近は作曲と多岐に及びます。どの記事もKOKAGEさんのポジティブ、愉しさが伝わる良い記事です。
そのKOKAGEさんが小説を書き下ろしてくれました。
昔のオカルトには「四次元」という物がありました。我々の世界に突如開く四次元の穴。其処に迷い込み帰ってこれる者は僅かです。バミューダトライアングルとか四次元スポットと言われてましたね。最近はどうも聞かなくなりました。
と、KOKAGEさんの小説はそのような異次元ものです。食指が動きます。


07 漫画「夜中に顔を洗う」緒方ろきさん
Noteに眠る旧作品から。2016年の作品です。
4コマ漫画です。構成の中に「変転」が二つ。二段滝のような急流ですが、この流れは心地良いですね。
そもそも変転と感じるのは我々と世界観にズレが生じているからで、このズレを修正しようとする時に、我々は変転を感じます。ですから世界観の住人にとっては変でも転でもないのです。
この世界の中では水鏡にUFOが映ることも、そこに故人が乗る事も当た前。
そうした蓋然性の中で静謐の夜が過ぎます。
良い夜ですね。良い朝を迎えられそうな。


08 小説「舞ってくれ。」ウネリテンパさん

ウネリテンパさん(ウネテン氏と略されることがあります。)のユーモラスな短編小説です。
矢継ぎ早に繰り出されるジョークについつい吹き出します。本当ですよ?
性格が悪くて天の邪鬼の私が吹き出す程です。
さて、ユーモアというものは実に偉大です。
もしあなたが何か難問に苦慮されているとして、解決の糸口が見えないとき、其処に足りないものは恐らくユーモアです。
膠着した状態で人はユーモアを失います。
ユーモアを失ったから膠着するのだ、とも言えます。ウネテン氏を見倣ってどんな時でも心にはユーモアを一掬い。
どなたも楽しい気分になる処方です。
騙されたと思ってお試し下さい。


09 コラム「ドーナツと私」伊都佐知子さん

私は食べる事が大好きです。
本年に入ってからダイエット継続中で、常時飢餓です。
飢餓の私は私の渇きを満たしてくれるようなグルメ系コラムに目がありません。
しがないサラリーマンの私は会社の公式Twitterを担当しておりますが、フォローにスイーツ系アカウントが日増しに増えます。
スイーツ万歳。スイーツ万歳で、ございます。
伊都さんのドーナツの記事です。
美味しそうですねえ。
クリスピークリームドーナツですか。
田舎暮らしの私には縁遠い話ですが、食べてみたいですねえ。
そう言えば我が家は朝食のトーストをフライパンに油をひいて焼いて作ります。
パンの耳は切り落としてカリカリのラスク状にして、だし調味料と塩で味付け。
食パンの顔??の部分は包丁で切れ込みを入れてマーガリンとアオハタのイチゴジャムを入れて、半焼です。美味しいですよ。
切れ込みに具を入れてポケットサンドイッチにしても良いですね。
食べる事って良いですねえ。
伊都さんに改めて感謝申し上げます。


10 小説「円盤が空を飛ぶ」アセアンそよ風さん

アセアンそよ風さんの書下ろし小説です。作品のご提供ありがとうございます。
アセアンさんは最近数冊の本を出版されました。
「伝説のベトナム井戸:とあるベトナムガイドの一日 東南アジア小説」 
「島津の九州王国!鉄砲伝来が5年早ければ起きた島津の九州統一ともう一つの日本建国?20分歴史シリーズ (黒熊文芸文庫)」
https://note.mu/kumakuma2018/n/n0e9bc0b01c90

御出版おめでとうございます。
海外と日本を往復するお仕事をされておりますので、知見が違います。
一つはアジアの本。もう一つは「もしも」の歴史小説。凄いですねえ。

今回のお話は「円盤」がテーマになっておりますが、構成がミニマルで良いですね。物語の決着が大変に潔い。主題に対して理想的な終わり方だと感じました。
通常は書きすぎてしまいますからね。見習いたいと思います。

11 コラム「いま、鉄の蓋がアツい。~蓋と意匠とまちあるき~」黒田玄さん
本アンソロジーも「円盤」の形は多岐にわたっておりますが、お次の円盤はマンホールでございます。
マンホール・カードという名前は聞き覚えがありますが、改めて記事を読むと奥深いですねえ。
昭和にはない遊び心です。昭和も平成も宇宙史的に俯瞰すると文化にさしたる違いはございませんが、隙間に遊び心を取り入れたのは平成特有の文化気質ですね。
鉄の蓋に綺麗に彩色を施して尚且それが唯一無二の製造物。マンホールを見るためにその土地に観光に行くことなどもあるわけです。
「マンホール観光」。旧時代では考えられない言葉です。
黒田さんは他にもマニアックなネタを揃えておりますので、他記事も是非ご覧下さい。

12 詩「ルンペルシュティルツヒェン」fuyuno coatさん
数ある冬野さんの作品群から私、ムラサキ編集長が択抜致しました作品がこちらです。
このお話、皆さんご存知ですか?
世界中に類話が散在しています。
困った農夫や少女、お内儀さんの所に悪魔(小人)がやってきて超人的能力で忽ち難問を解決するのですが、求められた代償は闇深く支払いは困難です。この悪魔の代償を回避する方法は只一つ。「悪魔の名前を当てること」です。
本当の名前を「真名」と呼びます。日本でも古来「本当の名前」は隠すという風習があったそうです。名前が特定されると呪術の対象になってしまうのです。
これは現代のネット社会でも同じことが言えますね。私どもはめいめいハンドルネームで暮らしており、真名を隠します。身バレすると呪われますからね。
悪魔にとっても同じで名前がバレさえしなければ何をしても許される無敵の状態です。名前がバレると急に萎れます。古代も現代も人間の本質は変わらないですねえ。
冬野さんの詩の中では心優しい悪魔が登場します。
水車糸車と運命の円盤を回転させて、無理難題など申しません。人知れず無垢の少女に寄り添うだけです。
それでもきっと悪魔は名前を当てて欲しいと言うのでしょうね。独りは寂しいですからね。少女が悪魔の名前を言い当ててくれると良いですね。名前を知られることを忌避しながらも、どこかで名前を呼んで欲しいと願っているのが私たちです。


13 小説「落ちゆく星々」クマキヒロシさん

クマキさんの甘酸っぱいSF小説を。
円盤がテーマでSFですから件の円盤かと思いきや、クマキさんの描かれた円盤は先日世紀の大発見と報じられたブラックホールの降着円盤です。
「降着円盤」とは「ブラックホールや中性子星や白色矮星のようなコンパクト星に落ち込むガスや塵が、高密度天体の周りに形成する円盤のこと。 これらの物質は、コンパクト星に落下しながら差動回転運動をしている。」(wikipedia)
つまるところ降着円盤とは重力の吸引です。
重力とは引き寄せたいと願う力。
恋にもならない二人の恋心。
私などが二人の心情を語っても空々しいので慎みますが、クマキさんの描かれた少女二人は活き活きとして淡く切ない存在です。
少女、というUMAの如き特殊な存在を見事に描かれたと思います。

14 掌編小説「惑星ズヴェツダの丘の上で」くにんさん
「ズヴェツダ」という不可思議な言葉がタイトルになっております。
くにんさんの解説によるとロシア語由来の造語なのだそうです。「ズヴェツダ」はロシア語で星を表す言葉とのこと。検索すると綴りは「звезда」でした。発音はzvezda。
これを見て私は「顔みたいだなあ」と。ツダ、の部分の「зда」が顔。
と、まあ私の世迷言は放っておいて、本作はSF小説です。
ロシアの異国情緒って独特ですよねえ。国土のほとんどが針葉樹林帯で極寒。広大な土地はほぼ未調査。未開の土地です。
そうした極限の国土にSFはよく似合います。
作品の中には「樹木」や「アンドロイド」が登場しますが、彼らの存在は無垢そのものです。彼らには自らの存在に対して欺瞞がありません。そして同時的に彼らは「ヒト」です。
ここにはどのような宇宙神話が存在するのでしょうか。読後も余韻に浸りたいお話です。

15 イラスト「宇宙人の襲撃」KOKAGEさん
最近アップされたKOKAGEさんのイラストたち。KOKAGEさんが小学校の頃にお絵かきソフトで描いたものだそうです。
描いている時は気楽ですし、簡単に描けて簡単に消せます。その気楽さ故に本当の価値に気付きません。子供にとってはただの落書きが時間とともに貴重な宝物に変わっていました。
そういえば私も意固地になって詩人を自称しておりますが詩人活動は断筆を繰り返して現在は第三期に当たります。第一期は20年前に遡りますが、いま思えば思いつくままに言葉遊びを羅列した安い言葉でありました。価値などない、と断じつつももしかしたら今になって価値の出た言葉もあったかもしれません。何せ20年前の言葉です。骨董品的価値が生じていてもおかしくありません。が、何せ20年前ですから、何一つ残っておりません。
ははは、(笑)です。
KOKAGEさんの絵は残っていて良かった。こんなに可愛らしい絵、見ているだけで微笑ましい。今後も御大切にされて下さい。

16 小説「祖母は円盤に乗って」民話ブログさん
先日、民話ブログさんが2か月遅れでアンソロジー(テーマ擬音「ぱりん」)への作品を完成されました。ご提供ありがとうございました。
文学的檸檬とネットと黒魔術が融合した大変楽しい作品でした。
先ほど冬野さんの解題でネットと呪いについて触れましたが、元祖ネットと呪いが民話ブログさんです。私はオカルトも民俗学も好きなので(詳しくありませんが)、民話ブログさんの世界はとても好きです。
日記とオカルトSFが融合したメタフィクション。フィクションでありながら現実の枠を超えない均衡が面白いです。
さて、今回の民話ブログさんの小説は「ごろつき」と「おばあちゃん」の話。
もし人生をやり直すことができるとしたら?
最近は「人生リセットボタン」なる言葉で語られる命題です。
どの時点からやり直しますか?
私もねえ、やり直したい地点はあったわけですが、最近の脳細胞の老朽化を考えると、この半ボケの頭脳のまま過去に戻ってしまうと人生の半ばで若年性認知症的なものになってしまうのでやり直しはご勘弁願いたい・・・と思うようになりました。
終わらせる事とは救いでもあるんですね。
おばあちゃんのお話であってハートウォームではあるのですが、このおばあちゃんの使いどころが凄いです。おばあちゃんの登場を待ちわびながらお読み下さい。登場したと思ったら後はノンストッパブル。終末まで一気に駆け抜けます。

17 コラム「我が心のペペラッツ」ことり隊長さん

先ほど、くにんさんの小説でロシアとSFの親和性について触れた所ではありますが、名古屋にある雑貨屋さん「SIPKA」の店長「ことり隊長」さんが本アンソロジーのために旧ソビエトの名SFについてコラムを書いて下さいました。ありがたいお話です。
「不思議惑星キンザザ」
知る人ぞ知るソ連SFのカルト作品です。「ことり隊長」さんも仰っているようにソ連SFは何と言っても「惑星ソラリス」です。アンドレイ・タルコフスキー監督です。(リメイク版は観てません。同監督の「ストーカー」も同種の感動を喚起した作品です。)人間とは何か、を追及する視点の「深度」が他映画と一線を画しています。凍土の人間は思慮が異なると若かりし頃の私は感動致しました。丁度第一期詩人期に当たる頃です。
その感動も収まらぬ頃に見たのが「不思議惑星キンザザ」でした。だからこの映画を観たのは20年前なんですね。いつの間にか時間が20年も経っていて怖いです。
ちょっと気を抜くと10年単位で時間が過ぎますね。
キンザザは凄かったですねえ。
スターウォーズの対極にある映画は前述の「2001年宇宙の旅」なのか「惑星ソラリス」なのかはたまた「キンザザ」なのか意見は分かれる所でしょうね。「ことり隊長」さんの本文は私にとっても大変共感する事が多く、私自身、本映画で人生の価値観を変えた人間の一人です。
映画の魅力は本文にてすべて語られています。是非お読みください。そして是非ご興味を持たれた方は映画をご覧ください。私と「ことり隊長」さんおすすめの映画でございます。

18 漫画「いるいない」おおえさきさん
漫画家のおおえさきさんです。かわいいキャラクターが扱う大阪弁のギャップが可愛らしい哲学漫画です。
「いる」ことと「いないこと」。そして最後のコマのドーナツはそのまま本アンソロジーに収録された伊都さんのドーナツの話に還流されます。
伊都さんもコラムの中で「ドーナツの穴」について述べています。
ドーナツの穴は「ある」のか「ない」のか。
穴はありますが生地はありません。これは「ある」状態なのか「ない」状態なのかどちらでしょう。
空飛ぶ円盤は我々の理知が欠落した間隙に存在しています。UFOもUMAも我々の理知が至らぬ蒙昧の中の存在です。
逆説的に理知外の「其れ」は存在しえぬものとも受け取れます。
空飛ぶ円盤はあるのか、ないのか。
私の過去は。
スランプ気質の私は無性に過去が懐かしくなります。
過去に書き散らした作品、既に失われた作品に価値はあったのか、なかったのか。
そして未来は。
まだ訪れぬ我々の未来。
未来はあるのか、ないのか。
平成の世が終わり、私も三時代を生きた人間となりました。
時代は我らの揺籃です。その時代が一つの区切りを迎えて多少感傷的になります。

19 コラム「そうだ!UFOの話をしよう」りす=ハードボイルド
りすさんのコラム。UFOの話です。
UFOと言えば日本テレビ、そして矢追純一です。
日本テレビの特番的「常識」を前に子供心に戦慄を感じたものですが、段々大人になるにつれその「常識」が日本テレビ以外に語られていないことに気付くわけです。そして世界に対して懐疑を抱くのです。
そうして大人になった私は「矢追純一」というブランドにある種のレッテルを貼り、自分の理知外に追いやるのです。
それから20年。自称詩人は第三期詩人期に突入しているわけですが、その第三期の私はここでこのように皆さんの理知に触れています。
りすさんのこのコラムには本当に驚いた。驚天動地。青天の霹靂。いや本当に。
一体、何が真実であったのか。私が20年前に置き去りにしたものが、ここに現存して、それは世の中のすべてを明快に語っていました。(私にとって)隠されていた二十年来の秘密が此処にありました。
りすさんのコラムによって目からウロコが落ちた私は断言します。
矢追純一氏は正しかった、と。
UFOはいる。
というよりも「いる」「いない」の真偽は問わずして「いなければならない」と。
今回のアンソロジーのテーマは円盤ですが、私にとって「空飛ぶ円盤」は時空と時空をつなぐ装置なのです。円盤の現前は過去と未来の同時存在なのです。それは視点の装置でもあります。
過去を見つめる視点、そして未来を見つめる視点です。

KOKAGEさんの子供時代のイラストが今になって輝くように。これから生み出される未来の作品はその先の大未来において更に光り輝くはずです。
いま私たちが生み出す作品は、未来において今よりもっと光り輝くはずです。
昭和、平成、令和と元号が激動の大回転をする中で我々は明るい未来を待ち望んでいます。明るさは光の中では自覚できません。
過ぎ去った過去が明るかったことに気付くのみです。
だから、いまを大切に。きっとそんなに捨てたもんじゃないんです。
今晩泣いている方も、今晩の涙を大切に。
時代という円盤が回転すれば、きっとそんなに捨てたもんじゃなかったことに気付ける。
はず。

未来からやってきた我々がきっと空飛ぶ円盤の中からそんな檄を飛ばしていますよ。

本アンソロジーはこれで終了です。
今月も沢山の方にご参加頂きました。
眠れぬ夜の奇妙なアンソロジーの一周年記念にして
そしてもっと大枠の話をすれば改元記念の本号でした。
眠れぬ夜はあなたと共に。
ごゆっくりお休みくださいませ。



アンソロジーの最後に終幕曲を。
20 音楽「星」イーグルフェロモンさん

イーグルフェロモンさんの「星」です。
歌詞を転載します。
------------------------------------
ほらみてごらん
あれが星といういきものだよ
しっかりおぼえていてね
きっとまたこのまっくらやみに
あらわれるときがくるから
-----------------------------------
しみじみと良い歌詞ですねえ。
星の出ない晩もございますが、星は再び現れるものです。
そのように、私もまっくらやみに現れる誰かのための星になりたいものです。

イーグルフェロモンさんが最近リリース致しました「チキンカレー」がamazonをはじめ各所で人気です。
ジャンルはR&B。名曲ですよ。(陰ながら応援しております。)
https://note.mu/tamatebako/n/n784aa318231e

ご視聴下さい。

---------------------------------------------------------
眠れぬ夜の奇妙なアンソロジーは「ネムキ」を信奉するネムキ派の提供でお送りしております。

アンソロジーはこちらから。(https://note.mu/murasaki_kairo/m/m5c588bec02be)