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現代詩 トイレタンクから水がチョロチョロ

現代詩 トイレタンクから水がチョロチョロ
村崎カイロ

トイレタンクから
水が
チョロチョロ チョロチョロ
漏れるのです

トイレから
静かな音が聞こえるのです
川のせせらぎのように
静かな音が聞こえます

森林に降る雨が
地下へと染みて
地下水脈を通って
湧き水になって
川になって
浄水場を経て上水道から
我が家のトイレに流れ続ける音です

とは言え
これは経済の話ですから
いつまでもポエジーに浸っていては
我が家の水道代が
悲しいことになってしまいます

トイレタンクを開くと
ボールタップと手洗い管が
黒いゴムホースで繋がっています
このホースからして既に
経年劣化の体現です
ホースが固くなってしまって
外れません

新しいホースを買いました
300円のプラスチックホースです
透明で劣化はしないかも
しれませんが如何にも安物です
でもこれは経済です

黒いゴムホースをハサミで切りました
ハサミは事務ハサミです
事務ハサミでもなんとか切れました
劣化したゴムホースから
旧時代の抵抗を感じましたが
切りました

タンクの底で栓になっている
浮きゴムを外して
洗ってみました
ベタベタしています
これもまた劣化でしょう

浮きゴムの代わりを用意しなかったので
ひとまず洗って装着しました

タンクを元に戻して作業は終わりです
チョロチョロが止まりました
森林から我が家に繋がる清流は
止水栓の機能が働いて
人間の制御に戻りました

劣化した浮きゴムにゴミがくっついて
隙間ができてしまっていたのでしょう

チョロチョロは止まりましたが
旧時代の浮きゴムはそのままです
また近いうちに
チョロチョロし始めるかもしれません
僕はその時
新時代の安っぽい浮きゴムを買ってきます
これは経済の話ですから
時代は淡々と終わるのです