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俳句日記「かはうそ祭」

クリームパンほおばりて残雪は黒くなりぬる

小用あって鎌倉に出掛けた。昼前に出発。
おやつにクリームパンを持った。
車を運転しながらパンをほおばる。
山間に雪が残る。
路肩の雪は黒く固まる。

かわうその祭やスーパーでアジフライ150円

七十二候に「かわうそ魚を祭る(獺祭魚)」とある。時季は2月20日前後のこと。かわうそが春になると取った魚を川岸に並べるという中国の伝説が元になる。ユーモラスでファンシーな空想だ。

昼食はスーパーに寄って惣菜を買う。
アジフライがまとめて売られている。
土地が変われば嗜好も変わる。
こんなに沢山のアジフライが売られるのは私の地元では見ない。
小田原が近いせいか蒲鉾が沢山売られている。
以降、同上のため割愛。

苛立ちて寡黙となりて春の波

海岸の道が混雑し始める。全く動かない。
遅々として進まず一時間。
苛立ちが募る。
今日は風強く波が荒い。

春来る 渋滞のまま海は眩しくなりにけり

鎌倉に着かぬまま、すっかり夕方になってしまった。鎌倉に行く気は挫けている。
由比ヶ浜が見えてからがまた遠い。
もう用事は止しにして帰ろうかと思っている。
波にウインドサーフィンがいくつも浮いている。
サーフボードを横に乗せた二輪が走る。
気を取り直してハンドルを握る。

紀元節 渋滞の後続威勢よく右翼

後ろの車は右翼の車になっていた。
渋滞中は遠慮しているのか、放送されない。
走り出したら演説が始まる。
本日は紀元節。

目を閉じて信号待ちて故郷夢見る

目を瞑って信号を待つ。
疲労。ちょっと夢を見た。
家を出てから五時間が経過。

これまでの無事喜びて春蜜柑

鎌倉到着。
用事を30分で終わらせて
これから帰路に着く。
庭先に蜜柑が生っていた。

(俳句日記「かはうそ祭」村崎懐炉)