しき

何でも良いから文章を書く場所を作っておこうと思います。おそらくエッセイが基本。

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何でも良いから文章を書く場所を作っておこうと思います。おそらくエッセイが基本。

最近の記事

二度目のヘアドネーションをした話

 最近めっきり寒くなってきた。もう冬至も過ぎたので当たり前の話であるが、そうなってくるとふと、今のうちに髪の毛を切ろうかなぁという考えが頭に浮かぶ。  髪の毛を長く伸ばす習慣のない方には一体何を言っているのだと思われるかもしれないが、私は大体髪の毛をばっさりと短くするのなら冬の時期と決めている。もちろん髪の毛を短くすると首元が寒くなる。しかしそれよりも、髪の毛が短く、結ぶことのできない状態で迎える夏は、とても暑い。来る夏に備えて、髪の毛を結べる長さにしておくために、私は冬に髪

    • 試し打ち

       久々の投稿である。  何か書き記したいことがあるわけではない、正確には、書き記したいことはいくつもあるものの、それが頭の中で文章として練られている状態ではない。  これは、タイトルの通り、試し打ちがしたくなったというだけの投稿である。何のことはない、PCのキーボードの試し打ちだ。  先日、新しいPCを購入した。記憶するに、5年ぶりのことである。  使っているPCが駄目になったというわけではない。少々カメラの調子がおかしかったが、それ以外に特段気になる部分はなかった。た

      • 洗濯日和

         週初から少しばかり、頭が痛かった。肩も凝るし、腰も痛い。座り仕事なのでこれらの症状とは長い付き合いだが、ふと意識をしてみるとなんだかいつもよりも具合が良くない。  そして、圧倒的に気持ちがだるかった。自宅でご飯を食べる気にならずにぼんやり座っていた時、ああ、これはダメなやつだ、と思った。今の私は、“生活をするのが面倒くさい”。  毎日問題なく仕事はしていたが、このまま日常を続けてはいけないと分かった。よしこうしよう、一人でふらっとどこか遠くへ。  特急券を買って電車に乗れば

        • 他愛無い赤の話

           先日、晴れた日の夕暮れ時のこと。  大通りを渡ろうと、横断歩道の入り口で赤信号をぼんやりと眺めて立ち止まっていた。  近所の小学生たちがきゃあきゃあ騒ぎながら駆け抜けてゆく。よく、あの大きなランドセルを背負ったまま走れるなぁと思う。ランドセルの中身は、走るとそれはそれは大きく揺れ動くのだ、私だって昔は毎日背負っていたから、よく知っている。  小学生たちが駆け抜けて行った方向は西側だった。なんとなく目で追った大通りの向こうに、信じられない程真っ赤な夕日が沈もうとしている

        二度目のヘアドネーションをした話

          透明なタクシーに轢かれそうになった話

           とりとめのない話である。  終電に近い時間に帰宅した時のこと。  駅から家に向かう道の途中で、一人立ち尽くしていた人がいた。  私と同じく、遅い電車で帰ってきた人が、速足で行きかう夜の街、誰一人としてその人を気に掛ける人はおらず、私も同様に彼を追い抜いて通り過ぎようとした。  その時である。立ち尽くしていた彼が、静かに手を挙げたのは。  私は驚いて、何食わぬ顔でその脇を通り過ぎながら、彼の視線の先をちらりと見た。暗い道には誰もいない。もう一度、手を挙げ続けるその人の顔

          透明なタクシーに轢かれそうになった話

          子供の頃は、毎年クリスマスパーティをした

           私は、お酒を飲むことは好きである。  弱い方ではないし、そもそも大量に飲むことはないので、酔うことはあまりない。  八分目、味わう余裕のあるところでごちそうさま、ああ美味しかった、これが醍醐味というものだろう。  他人に迷惑を掛けてまで飲む酒は美味くない。  まして、自ら他人に迷惑を掛けにいくというのは、どうした心持だろうと、思うものである。  ここ数日、あまり愉快でないニュースを目にする。"Trick or Treat!"――警察動員、街はゴミの山、あれ、おかしいな、

          子供の頃は、毎年クリスマスパーティをした

          言葉にせずとも

           真夏の休日。母と二人で旅行に行った。  あんたを育てて良かったわ、大きくなってもこうして一緒に旅行に行ってくれるんだもの。並んでのんびりとアイスを食べながら、母は楽しそうに言う。  母の言う通り、私は大人になった。途方もなく長い、ほんの一瞬の時間を過ごすことによって。  果たしてそれは、無意味に時間を重ねただけの「大人」ではなく、一緒に出掛けるだけで大喜びする両親が、ここまでかけてくれた時間に見合っただけの人間になったということなのだろうか。  そんな風に思う私をよそ

          言葉にせずとも

          晴れさせ女

           私は晴れ女だ。  入学式、卒業式、成人式……人生の旅立ちの節目を迎えた時は、いつだって好天に恵まれてきた。  旅行に行く時だって、いつも私は「良いお天気」。  良い天気とは普通、雲一つない素晴らしい青空のことを言うだろう。でも、ただそれだけとは限らない。  曇りだったけれど、霞のかかった綺麗な月が見られたから、良い天気。台風の予報だったのに、ほんの少し小雨に降られただけだから良い天気。大雨に全身びしょ濡れにされたけれど、雨上がりに虹を見られたから良い天気。  それら全て

          晴れさせ女

          さくらももこさんを悼んで

           まるで、空がストロボを焚いているようだと思った。  ほんの数日前、突然の嵐が来た日の話である。  なんとも、おかしな天気であった。私は帰宅するまでの間、幾度となく空のストロボに照らされたが、一度として雷鳴を耳にすることはなかった。一体この雷はどこを走っているのだろう。もしかしたら空の上で、誰かが今この時を記録に残そうとして、いくつもの写真を撮っているのかもしれない、とくだらないことを考えながら、私は自宅へと向かう足を早めた。  本当は、夕飯を食べに近所のカレー屋に寄るつ

          さくらももこさんを悼んで

          一呼吸ごとに終わりに近づいている

           夏目漱石の、『こころ』という小説がある。  読んだのはだいぶ前のことだけれど、印象的なシーンは数多くある。  その中に、主人公の「先生」による、自分は死ぬなら明治の精神に殉ずるといった発言があった。  「先生」は、史実でもある乃木大将の明治天皇への殉死にいたく感動したようだが、これは紛れもなく、夏目漱石自身の感情なのだろうと思う。  江戸、明治、大正と、激動の時代を生きた文豪は、きっと自分が明治を築いた一員だという気持ちを持っていたのだろう。一つの時代が終わり、自分の中で

          一呼吸ごとに終わりに近づいている

          幼い私へ、拾い上げた筆で綴ること

           記念すべき一行目になんという言葉を配置すべきか、気が付けばもう数日悩んでいる。  会員登録のためのアドレスその他の情報は、あんなにもスラスラと書き込めたのにねと、心の中には嫌味を言う私がいる。  幼い頃から、文章を書くのが大好きだった。本を読むのが大好きだった。  美しい日本語を、自在に操ることができるようになるのが、夢だった。  でも、今となっては。  自分の意志で、自分の頭で考えたことを、しっかりと文章という形にして書くのは、いやに久しぶりだと思っている。もう最近

          幼い私へ、拾い上げた筆で綴ること