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近くにもある「アストロバイオロジー」

「アストロバイオロジー」というのを聞いたことがある方は、生命の起源や地球以外に生物が住めそうな場所を探すなど、はるか昔、遠い宇宙での出来事を扱う科学を想像されると思います。

地球外生命という、いるかどうかも分からない物を相手に、日々探求を続ける…まさに科学者のロマンです。

巨大な望遠鏡で地球に似た惑星を探したり、衛星や小惑星に探査機を送ったりするには時間もかかります。一方で、「宇宙に行った地球の生命」の研究は、最近多く行われるようになりました。スペースシャトルや国際宇宙ステーションでは、これまでに人間を含めたいろいろな生物が、宇宙での生活を経験しました。

私もそのような研究に参加しているのですが、宇宙では体に様々な変化が起こります。まず、宇宙へ行くと、重力を感知するしくみの調整が必要になり「宇宙酔い」が起こります。また、体重を支える必要がなくなり、骨や筋肉が弱くなります。

地球の生命はこれまでずっと1G(地球重力の単位)のもとで進化してきましたが、その重力が突然無くなると、これ以外にも体のあちこちに、また、細胞内のミクロな単位でも変化が現れます。

宇宙全体からみると、1Gの重力があって、液体の水があって、太陽からエネルギーが供給されて、温度や気圧がこれくらい…という地球の環境はすごく特殊であることに気付かされます。そう考えると、広い意味での生命、存在には私たちが想像していなかった、いろいろなカタチがあり、たとえ身近にあっても気付かないのかもしれません。

人類が協力して国際宇宙ステーションを築き、宇宙で様々な活動を展開できるようになって得られた知識には、地球生命の未来を予見する上でも役に立ちそうな、興味深いものがあります。

私たちが目にすることができる生命の設計図にも、人類が宇宙に到達すると解けるように仕組まれた謎が、もっと多く隠されているのかもしれませんね。


「宇宙生命科学と進化」については、ここ数年いろいろなところで「カミングアウト」してきたのですが、とうとう、研究業界のオフィシャルなセッションが米国のアストロバイオロジー会議「AbSciCon2024」(2024年5月)で採択されました。
Insights from Terrestrial Life: what evolutionary biology can bring to our understanding of life in extra-terrestrial environments
https://agu.confex.com/agu/abscicon24/prelim.cgi/Session/215430

また、月刊誌「細胞」でも宇宙分野について紹介する機会があり、記事をまとめてみました。
「微小重力下で顕在化する「先祖返り」表現型からみた地球生命の生理的適応と進化」
https://www.fujisan.co.jp/product/982/
2023年12月号、39ページです


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