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【8月31日の夜に①】人生は結局、復讐みたいなものだから。

※毎日更新のコラム、81日目。この投稿は、ハッシュタグ企画「8月31日の夜に」のエントリー作品です。当作品は2部構成を予定しています。今回の第1部では、十代の当事者に対するメッセージ、後日執筆予定の第2部では、僕がこのメッセージを発するに至ったバックグラウンドについて語りたいと思っています。《閲覧留意事項》なお、当作品には一部、大人・親・先生・学校などを否定するような過激な表現がありますが、学校でのいじめ・家庭の問題など、あらゆる悩みと向き合う十代に、当事者目線で語りかけることを想定して書いた二人称の文章ですので、その点はご容赦くださいませ。それでは、ご覧ください。※


 伏せってるところ急にごめん。

 ちょっと顔をあげてごらんよ。


 こんばんは。

 僕の名前は狭井悠っていうんだ。

 よろしくね。

 突然だけれど、話をしないかい?


 僕の年齢? 三十四歳だよ。

 あ、今、めっちゃおっさんだと思ったっしょ。


 でもね、僕の中には、あなたとそう変わらない年齢の自分がいる。

 だから今日は、三十四歳のおっさんの身体から、飛び出してきた。


 僕とあなたは、今はもう、同い年みたいなもんだよ。

 ここ出会ったのも、何かの縁だと思うから、ちょっと話をしよう。



 なつやすみも、あと数日しかないね。

 あなたがだいきらいな学校にも、来週には行かなくちゃならない。


 すべてを投げ出したくなる気持ち、すごくよくわかるよ。

 だってさ、結局だれも助けてなんかくれやしないもんね。


 最近の大人は、どいつもこいつも、都合のいいことばっかり言う。

「学校なんか行かなくていい」とか、

「親や先生の言うことは聞かなくてもいい」とか、

「いじめっ子からは全力で逃げろ」とか、

 あげく、「死ぬな」とかさ。

 そんなことわかってるよ。


 そんなに簡単に投げ出せるもんなら、悩みやしねーっつう話だよね。

 笑っちまうよなあ。子どものことを舐めてるとしか思えないよねえ。


 そうやって投げ出したとして、そのあとの責任は誰がとるんだって。


 結局、僕たちが、自分でどうにかするしかないんだよ。

 僕たちにはそれがよくわかっているんだ。

 だから、死ぬほど悩むのにね。


 人生の面倒事は、結局、自分たちでなんとか片付けていくしかない。


 大人は、子どもが生きる世界がどれだけ野蛮なものなのかを、ぜんぜんわかっていやしないんだ。

 あなたの人生に対して責任を持とうと思っていない大人の甘い話なんて、何も聞かなくていいよ。


 だって、子どもは、環境を選ぶことができないんだ。


 自分のことを何一つわかってくれない、

 親、学校、先生、先輩、同級生、後輩。


 どれだけクソみたいな環境の中にいたとしても、

 僕たちは、目の前にあるものを受け入れて、生きるしかない。


 そんな僕たちに、まるで他に選択肢でもあるかのような甘い話を、簡単に言うなよって話だよねえ。


 僕たちには、他に選択肢がないんだ。

 僕たちは今、何かを選ぶことなんてできないんだ。

 だから、結局、生きるためには、学校に行くしかないんだ。


 それが誰よりもわかっているから、あなたは悩むんだよね。



 でね、今日あなたに伝えたいのは、

 人生って何のためにあるのかってこと。


 人生ってさ、何のためにあると思う?


 良い学校に入るため。

 良い会社に入るため。

 良い家庭を作るため。

 自分の夢を叶えるため。

 誰かを幸せにするため。


 たぶん、あなたの親や先生は、こんなことを言うだろうね。

 テレビをつけても、インターネットを見ても、同じようなことばかり言われる。

 でも、これらは全部、「人生は何のためにあるか」という問いにたいするほんとうの答えにはなっていない、ただの綺麗事ばかりだよ。

 これらは、手段ではあるけれど、目的ではないんだよなあ。


 いいかい。

 今から大事なことを、あなただけに伝える。

 僕はそのために、ここまでやってきたんだ。


 先生が学校では教えてくれないこと、親が教えてくれないこと。

 テレビやインターネットでは見つけられないこと。

 そんな、本当に大事なことを言うよ。




 人生はね、復讐のためにあるんだよ。

 あなたを苦しめるすべてに復讐する。

 そのために、あなたの人生はあるんだ。




 クソみたいな不良やいじめっ子に復讐するために、奴らが行けないような良い学校を目指して勉強する。

 クソみたいな先生に復讐するために、社会に出て、先生よりも、ずっと面白い経験ができる仕事をする。

 クソみたいな親に復讐するために、やりたいことをやる夢を叶えて、親よりもずっと立派な家庭を作る。



 人生っていうのは、結局、復讐みたいなものなんだよ。

 親や先生が教えるような綺麗事は、本質ではないんだ。

 あなたを苦しめる奴らを見返すためには、生き抜いて復讐するしかない。



 そして、本当の復讐ってのは、自分や相手を殺したり、傷つけたり、奪ったりすることじゃない。

 あなたを苦しめる奴らが到底たどり着くことができない、誰にも文句を言わせない魅力的な人間になって、最高な人生を送ることが、本当の復讐なんだよ。





 どうだろう。

 今、伏せっているあなたの心の中に、

 小さな「復讐の灯」はともったかな。


 復讐を達成するためにはとりあえず、

 9月1日は、学校に行く必要がある。


 でも、9月1日に、

 クラスの机に向かうあなたは、

 昨日までのあなたじゃないよ。


 親、学校、先生、先輩、同級生、後輩。

 あなたを苦しめるすべての奴らに「復讐する」と決めたあなたは、物凄く強い。

 たとえ、その場で誰かにまた負かされたとしても、それさえも、未来のあなたのエネルギーの源になる。

 これまで負かされてきたことで、あなたは誰よりも、痛みを知っている。


 そして、若くして痛みを知っていることは、後々の人生で、すごく意味のある経験にもなるんだよ。

 なぜなら、あなたは、他人の痛みがわかる人間になれるから。

 そこでまた、あなたを苦しめる奴らと、どんどん経験の差がついていく。

 あなたを負かして、いい気になっている奴らは、そのままにさせておけばいい。

 あなたを支配できると思い込んでいる奴らは、そんなふうに思わせておけばいい。

 あなたはその間に、どんどん魅力的な人間に成長していくのだから。

 そして、そう遠くない未来に、あなたは復讐の誓いをエネルギーにして、奴らを差し置いて、もっと、もっと、高いステージに行くことができる。



 いいかい。

 9月1日から、

 あなたの心持ち次第で、

 あなたは別人に生まれ変わることができるんだよ。




 そして、あなたが大人になったときに、あなたには、巨大な羽が生える。

 クソみたいな環境から、思いっきり羽ばたいて、自分らしく生きられる。

 復讐のために自力をつけたあなたは、誰よりも強く、気高く生きられる。

 あなたを苦しめた奴らには到底、到達できないような場所にたどり着く。



 そんなあなたを慕って、素敵な人たちが集まってくる。


 それは、

 信頼できる友達だったり、

 尊敬できる先輩だったり、

 愛しぬけるパートナーだったりする。


 たまたま同じ地域で生まれたからとか、

 たまたまクラスが同じだったからとか、

 たまたま学校の担任になったとか、

 たまたま産み落とされたからとか、

 そういう、僕たちが選択する手段がなかった理由で、一緒にいなければならない奴らとは違う、「本物の仲間」ができるんだ。


 そのときに、あなたは復讐というエネルギーを捨てて、新しいエネルギーを発したいと思うようになるだろう。

 そして、あなたは間違いなく、その瞬間に、「今まで諦めずに生きてきてよかった」と心の底から思うはずだよ。



 ——これからが、楽しみだね。



 あなたは、9月1日から、世界で一番タフな十代になる。

 大丈夫だよ。あなたには、それができる。

 僕には、それがわかる。



 とりあえず、あなたが二十歳になったら、また会おう。

 そのときは、一緒にお酒でも飲もうね。

 今日は、ゆっくり寝よう。

 おやすみ。



How many ways to get what you want
(お前の欲しいものを手に入れる方法はいくらでもある)
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(自分のベストを尽くして、最後の切り札を使って)
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SEX PISTOLS “Anarchy In The U.K.”

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