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【映画感想】窮鼠はチーズの夢を見る

サンキュータツオさんが『ボクたちのBL論』のなかで激オシしていた水城せとな先生。どんな作品を描くんだろうと気になっていたら、ちょうど先生の作品を映画化した『窮鼠はチーズの夢を見る』をサブスクで発見。最近の若い俳優が全然わからないわたしが、なぜかどうにも気になる成田凌主演と聞き、興味がわき見てみました。

最初は、成田君かわいい!演技スゴッ!と思ってたんだけど、徐々に大倉忠義が演じる大伴のほうが気になってきて……。大倉君の落ち着いた演技、とてもよかったです。

そして、ストーリーめっちゃよかった。大伴のしょうもなさがストーリーが進むほどに見えてきて、大倉君の気だるい雰囲気と相まって、イケメンでやさしい、一見文句のつけどころのない大友のだらしなさが際立ちました。それから、出てる俳優さんみんなよくて、安心して見られました。

大伴の部屋で成田凌演じる今ヶ瀬がベッド脇のスツールに座ったり、パンツ履いて掃除機かけるシーンがとってもよかったです。今ヶ瀬の存在感、俺、今大伴さんの部屋にいるもんね、という執着を感じるというか。

台詞もとってもよくて。大伴の妻が夫に言う

そうやっていっつも私が何か言う空気を待っているのが気持ち悪いの

とか、今ヶ瀬が大伴に言う

わかってますよ、そんなの。あんたみたいなのは最悪だ!だけどね見た目がきれいで人間ができてる自分にいい思いをさせてくれる完璧な人をみんな探していると思ってるんですか? そういうもんじゃないんだよ

とか、人の心を抉る台詞にひいいいっとなりました。

わたしが今ヶ瀬くらいの年の頃は自分の存在を全肯定してくれる人を求めたし、また全肯定できる相手を求めてもいたけれど、そういうもんじゃないってわかったのは、ここ数年のような気がします。
今ヶ瀬、いったいどんな人生を歩んだらその年でそんな台詞が吐けるの。
この台詞を好きな人に向かって放つ今ヶ瀬の愛の深さに涙が出ます。

大伴のしょうもなさ、今ヶ瀬のいやらしさにハラハラしつつ、今ヶ瀬の愛し方と最後にようやく自分から選択をすることができた大伴に勇気をもらえるとってもいい映画でした。

未読の小説、マンガの購入にあてさせていただきます。