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5分で特別法_国際私法(法の適用に関する通則法)

概要

 国際私法(法の適用に関する通則法)について、その内容を5分で読める程度のダイジェストでまとめました。
 かなりダイジェストなので、若干正確性を欠く記述もあること、国際私法の重要項目全てを網羅しているわけではないことはご承知おきください。


国際私法(法の適用に関する通則法)

法の趣旨

外国籍の者との法律関係や外国での法律行為などの場合において、どの国の法律を適用すべきかを明らかにする。(1)

行為能力

人の行為能力は、本国法(≒国籍がある国の法律)で判断する。(4Ⅰ)
→X国人の行為能力はX法で判断する

ただし、行為地法によれば当事者に行為能力があり、全ての当事者が行為地法の地域内にいる場合、行為能力者とみなされる。(4Ⅱ)
→X国法では17歳以上に行為能力が認められる場合、17歳日本人A(日本法では行為能力なし)が旅行先のX国で買い物をすると、その買い物については行為能力者とみなされる。

法律行為

契約に際し当事者が決めた準拠法があれば、契約の成立と効力はその準拠法で判断する。(7)
→日本企業とX国企業の契約で、契約書に「本契約はY法に準拠する」と記載があれば、契約の成立や効力はY法で判断。

準拠法の取り決めがない場合、契約成立時に契約と最も密接な関係がある地の法で判断する。(8Ⅰ)

物の授受などがある場合、物を渡す方の当事者が居る国の法律が最密接関係地法と推定される。(8Ⅱ)
→X国に住む日本人がY国人に物を売る場合、X法が最密接関係地域法と推定される。

不動産についての契約は、不動産の所在地の法が最密接関係地法と推定される。(8Ⅲ)

当事者の同意で事後的に準拠法を取決め・変更することも可能。ただし第三者の権利を害するときは第三者に対抗できない。(9)
→XとYの契約についてZがXの保証人である場合、XとYの合意で準拠法を事後的に決めることはできるが、準拠法によってZが不利になる内容についてはYはZに主張することができない。

法律行為の方式

法律行為の方式(保証契約は書面が必要等)は、↑の契約成立の準拠法か、契約した地の法のどちらかを満たせばよい。(10Ⅰ,Ⅱ)

X国とY国の人がメール等により遠隔で契約する場合、契約成立の準拠法、X法、Y法のどれかの方式を満たせばよい。(10Ⅳ)

X国からY国の人に遠隔で単独行為(取消・解除など)をした場合、X法が契約した地の法となる。(10Ⅲ)

不動産など登記に係る法律行為は、契約成立の準拠法の方式を満たさなければならない。(10Ⅴ)

消費者契約

X国事業者が日本にいる日本人消費者と契約する場合、契約に「本契約はX国法に準拠する。」と記載があっても、日本人消費者は日本の消費者契約法の強行規定の適用を主張できる。(11Ⅰ,Ⅲ)

契約に準拠法の記載がない場合、契約の成立、効力、方式は消費者の居る地の法で判断する。(11Ⅱ,Ⅴ)

ただし、消費者が相手の事業所に出向いて契約した場合、事業者の所在地で債務の全部を履行することが予定されていた場合など、同条が適用されない場合もある。(11Ⅵ)

労働契約

X国人がY国企業で働く場合、X国人は労働契約の最密接関係地の法の強行規定をY国企業に主張できる。(12Ⅰ)

労務を提供する地が最密接関係地と推定される。(12Ⅱ)
→日本人が日本にあるY国企業で働く場合、労働契約書に「準拠法はY法」と書かれていても、日本人はY国企業に対して日本の労働基準法の強行規定を主張することができる。

物権

物権は目的物の所在地の法による。物権変動は原因となる事実が発生した地の法。(13)
→日本人がX国人とY国にある物の売買契約を締結した場合、所有権の変動時期はY法で判断される。

不法行為

不法行為は、加害行為が発生した地の法で判断する。その地での結果の発生が予見できない場合、加害行為が行われた地。(17)
→X国で有害物質が発生し、隣のY国で被害が生じた場合、Y国で侵害結果が発生することが通常予見できるならY法、予見できないならばX法で判断する。

生産物責任については、生産物の引渡しを受けた地の法で判断する。その地での生産物の引渡しが通常予見できない場合、生産者の主たる事業所の所在地の法による。(18)
→X国のみに事業所がある企業が製造し、Y国のみで販売されている製品について、日本人が購入して日本で製品に起因する事故が起きた場合、Y国で買ったならば準拠法はY法。Y国以外の地域で個人転売等により入手していた場合、準拠法はX法。

名誉・信用棄損については、被害者が通常居る地の法で判断する。(19)

不法行為の準拠法は↑を前提としつつ、最密接関係地が他にある場合は、その地の法で判断する。(20)
→海外で行われた不法行為でも、当事者が両方日本人であること、不法行為の内容が日本で行われた契約に端を発するものであること等の事情があれば、日本法が準拠法になる可能性がある。

不法行為の準拠法も事後的に当事者で変更可だが、第三者に対抗することはできない。(21)
→海外旅行先で起きた事故について、当事者で準拠法を合意することができるが、その準拠法を保険会社に対抗することはできない。

不法行為の成立・損害賠償は、日本法で認められる範囲でしか認められない。(22)

婚姻の成立

X国人とY国人が結婚する場合、X国人はX法、Y人はY国法の婚姻要件を満す必要がある。(24Ⅰ)

X国人とY国人がZ国で婚姻する場合、X法、Y法、Z法のどれかの婚姻の方式を満たせばよい(日本なら婚姻届の提出)。ただし、日本で日本人が外国人と婚姻する場合は、日本の方式しか認められない。(24Ⅱ,Ⅲ)

婚姻の効力(夫婦は同居しなければならない等),離婚は、夫婦の本国法が同じならその本国法、夫婦の居住地が同じならその居住地の法、いずれもないなら最密接関係地の法による。ただし、日本に住む日本人が離婚する場合は日本法のみ。(25,27)

夫婦のどちらかの本国法で出生時に子が嫡出となるときは、子は嫡出子となる。(28)

嫡出でない子は、父とは父の本国法、母とは母の本国法により親子関係の成立を判断する。ただし、認知による親子関係の成立は、子の本国法で子又は第三者の承諾が求められている場合、その承諾も必要。(29)

父、母、子のいずれかの本国法により準正が成立する場合、子は嫡出子の身分を取得する。(30)

養子縁組は養親の本国法による。ただし、養子の本国法に承諾や許可などの要件がある場合はそれも求められる。(31)

親子の法律関係は、子と親の同一本国法、同一本国法がない場合は子の通常居る場所の法による。(32)

相続

相続・遺言の成立及び効力は、被相続人・遺言者の本国法による。(36,37)

補足

国籍が2つ以上ある人は、国籍のある国の内当人が住んでいる地の法、どの国籍地にも住んでいなければ国籍のうち最密接関係地となる地の法が本国法となる。ただし、日本国籍がある場合は日本法を適用する。(38Ⅰ)

国籍がない者は、通常居る場所の地の法による。(38Ⅱ)

州や宗教で法が異なる地域に住む者の場合、その国の規則でどの法を適用するか判断する。規則から判断できない場合、最密接関係といえる法を適用する。(38Ⅲ,40Ⅰ)

当事者の本国法によるべき場合、その本国法では日本法によるべき場合は、日本法による。(41)
→日本の通則法ではX法が準拠法となるが、X法では日本法が準拠法となるような循環が生じた場合、日本法で判断する。

外国法によるべき場合、その適用が公序良俗に反する場合は適用しない。(42)
→X法では結婚年齢に制限がない場合、日本の成人は何歳のX国人とでも結婚できることになるが、そのような帰結は公序に反し認められない。


結語

 「人の読める文字数は1分間で400~600字程度」と聞いたので、3000文字を上限としてまとめてみたのですが、実際に作ってみると5分で読むのはやや厳しい分量になってしまった感があります。

 12月はかなり時間が取りやすいので、今のうちにこういった法律の知識習得兼アウトプットを実施していきたいと思います。

 次は労働法の予定です。

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