リトドリン長期投与についての若手産科医へのメッセージ

ふたつの学会につづけて参加して,切迫早産へのリトドリンの長期持続投与の問題について,何人かの若手から声をかけられて立ち話をしました.自院でリトドリン長期投与をやめたいがまわりの理解がえられていないとか,自分たちのところはリトドリンはいっさい使わずマグネシウムだけとか,大学病院をはじめ地域ではリトドリン長期投与がいまだ一般的で困っているなど,状況はそれぞれさまざまなようです.

でも声をだしはじめた5-6年前にくらべると状況はかくだんによくなってきている気がします.もちろんリトドリンの長期持続投与には有効性はなく副作用のリスクだけがあるという事実はあたらしい発見でもなんでもなく,気がきいた産科医ならばもともとよく知っていて,すでにショートトコライシスを実施している周産期センターは全国にそれなりにあったわけです.

しかたがないのでわたしが憎まれ役を買ってでて,当初はそれなりに反発もありましたが,いまでは表だってはほとんどなくなっています.いまでこそリトドリンをやめた産科医の「決断と実行力」が非常に評価されますが,すぐにそれがあたりまえになるでしょう.おそらくむこう5年以内にどこかでターニングポイントがおとずれ,そこをすぎるとリトドリンをやめる病院が雪崩のように続出することになるかと思います.

結局,切迫早産の管理もエビデンスの理解と強い信念でおこなわれているのではなく,横ならび意識が強いのだと思います.もうまわりではリトドリンの長期投与をやめているとなれば,あわてて自分のところも方針をかえて大勢にあわせていくことになるでしょう.

だから「まわりの理解がなくていまはどうしようもなく,自分自身も行動変容は容易ではないですが,一生懸命に考え続けていかなければ......」などとあまり深刻に気に病む必要はありません.もうすこしの辛抱ですよ.

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