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ホットリンク連続小説かざぐるま-第3話「お前の熱を伝搬させよ」

このnoteは、2019年6月11日に配信した「ホットリンク連続小説かざぐるま」のバックナンバーです。メルマガ講読フォームはこちらhttps://service.hottolink.co.jp/mailmag/

バックナンバー
第1話「ユージーシー?
第2話「断ち切られたクチコミ
第3話「お前の熱を伝搬させよ
第4話「拡散されるバグ
第5話「ハックと制裁
第6話「まわりだすウルサス


ーーーSNSを学ぶために連れて行かれた先はソーシャルサクセススクール。
そこで知らされた2つの事実とは…

■登場人物紹介
綾小路:主人公。新卒で入社3年目
白鳥:綾小路の直属の上司
池下:SNSについて教えてくれる人
●●:???


●●:
池下さん、お久しぶりです。お元気でしたか?

綾小路:
あ、あなたは…?

池下:
おおお。轟さんじゃないですか。久しぶりですね。お元気でしたか?
何やら風の噂で聞いたのですが、理事長になってから大活躍だとかなんとか。

轟:
はい。今年で赴任して10年目です。おかげさまで学内改革も進み出しています。
今では、卒業生がP&Qなどのグローバル企業のCMOも務めるようになりました。
これも池下さんの教えがあったからです。

池下:
いやぁ、さすがですね。これからもさぞご活躍するんでしょうね。

轟:
いえいえ、謙虚に頑張っていきます。
ところで、こちらの方は?

池下:
SNSについて学んでもらうために、連れてきたんです。
綾小路さんです。

綾小路:
あ、綾小路と申します…。

轟:
よろしくお願いします。綾小路さん。
では、池下さん、綾小路さん。教室を回ってみませんか?ご案内いたします。

*  *  *

講師・沼上:
えー、今日はInstagramのハッシュタグの付け方について、徹底的に分析してみよう!
ビッグタグ、ミドルタグ、スモールタグと分けられますが…

講師・望野:
Instagram向けの写真の撮り方講座を今日はやりたいと思います。
まず、写真には、いくつかの重要な要素があります。
ひとつは露出…

講師・木:
では今日は、この商品のクチコミが増えていった理由を、ソーシャルリスニングという手法で分析してみましょう!
いつやるの?いまでしょうよぉ〜!

講師・李:
微博大V張大奕、抖音紅人毛毛姐、鬥魚主播馮提莫,這些動輒數千萬粉絲的網紅背後,均有專業MCN機構加持…

綾小路:
すごい、レベルが全然違いますね。

池下:
中国は進化していますねぇ。
それにしても、さすがソーシャルサクセススクール。
ソーシャルメディアマーケティング界のMBAと言われているだけありますね。
どのクラスの講師も生徒さんもレベルが高く、感心します。
綾小路さん、ここで教えてもらいましょう!

綾小路:
でも、仕事があるので…

池下:
大丈夫ですよ。ここの2ヶ月は向こうの2日なので。
2日くらい休んだって大したことないじゃないですか。

綾小路:
2ヶ月が2日?どうゆうことです?

池下:
まぁまぁ、細かいことはいいじゃないですか。
轟さん、彼の手続きを進めてもらっていいですか?

轟:
承知しました。では、別室でご案内しますね。

* * *

轟:
それでは入校の手続きに入ります。
改めて確認したいのですが、志望動機を聞かせてもらっていいですか?

綾小路:
は、はい。
自分はスマートフォン関連商品を扱っている会社で働いているんですが、
売上を上げるための施策をやるにも、限界を感じていて…。
それでSNSを活用できないか模索していたんです。

轟:
ホォホォ。

綾小路:
それで、他の視点からも色々やろうと考えてはいたんですけど、商品自体を改善する余裕もなく。
私自身、これはイケてないなーと思う商品でも、
うまくプロモーションして見せ方をよくして売っていかないと、と思って。
うまくSNSでプロモーションできる方法を学んで、仕事に活かしていきたいんです!

池下:

池下:
…今なんて言いました?

綾小路:
うまくプロモーションして売上を上げないと、と…

池下:
それ本気で言ってますか?

池下:
それで世の中が良くなると思ってるんですか。
良いものがあって、そこから広まっていくんじゃないんですか?
UGCで言ってもそうですよ!良い商品、良いサービスだからクチコミがされるんじゃないですか。
良い商品、良いサービスが熱源となって、どんどん広がっていくんじゃないですか!

綾小路:
あっ、あ…

池下:
いいものじゃないとそもそも話題にしないでしょ!ちょっと考えたらわかることですよ!
プロモーションだけがマーケティングの仕事じゃないんですよ!
視野が狭すぎます。
商品にまで口を出せばいいじゃないですか。
それでもあなたはマーケターですか?大事なことなら泥臭いことでも動かすんですよ!
良い商品をそれを必要としている人のために届けるんですよ!
ウン百万人、ウン千万に情報を届ける仕事をやってるんですよ!
マーケティングという仕事は、人々の購買行動を大きく変えるんですよ!
あなたにそのマーケターとしての矜恃はあるんですか!?

池下:
それにですよ!あの

轟:
(話を切るように)綾小路さん、やだなぁ〜、漏れそうだって?
なんで早く言わないんですか?トイレ行きたいって。
案内しますよ。こちらです。行きましょう。さぁさぁ。
池下さん、話の腰を折ってすいません。ちょっと失礼します。


*  *  *


ーーー足早にトイレに駆け込んだ轟と綾小路。

轟:
綾小路さん、知らなかったんですか?

綾小路:
何がです?

轟:
池下は、お子さんが亡くなられた過去があるんです。

綾小路:
え…

轟:
30年前、2人の娘さんのうち、まだ2歳だった下の娘さんが亡くなったんです。
大きな社会問題にもなった「組み立て型おもちゃ問題」ですよ。
「日本中の子供たちに人気!お父さんお母さんも安心!」と大体的に宣伝されたのですが、
広告に利用されていたその評判の声は全部嘘だったんです。今でいうステマですよ。
しかもおもちゃ自体が粗悪品だったようで、パーツに尖った箇所が多く残っており、
それが皮膚に刺さるなど、多くの方が被害に遭われたんです。
しかも付属品の塗料に安全性が認められていない化学薬品が入っていたようで、
池下さんのお子さんはそれが傷口に入ってしまい、そのまま…。

綾小路:
あの事件ですか…

轟:
あれ以来、池下さんは変わりました。
良いものを世の中に広めるんだという使命感を持って仕事に臨むようになりました。
池下さんの想いは本物です。

綾小路:
わたし、なんて失礼なことを言っちゃったんでしょう…

轟:
大丈夫ですよ、池下さんは。
たまにあるんですよ、こういうことが。
決まって池下さんは「取り乱してしまったようで、失礼しました。」と言いますし。
あ、このことを私から聞いたことは内緒にしてくださいね。
ああ見えて、あの人、気にしぃだから。
では、戻りましょう。綾小路さん。

綾小路:
はい…


*  *  *


轟:
あれ、池下さん、このへんにいたはずでしたよね…?

ーーーダダダダダ

轟:
ん、どうした?犇?

SSS職員・犇:
轟さん、大変です!池下さんが倒れました!

轟、綾小路:
え!?


■次回予告
第4話「拡散されるバグ」
7月9日配信予定。

作:ホットリンクのムロヤ



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