MVP vs MVR for Ischemic MRの2年予後 : N Engl J Med 2016; 374:344-353

Two-Year Outcomes of Surgical Treatment of Severe Ischemic Mitral Regurgitation


Daniel Goldstein, M.D., et al., for the CTSN

N Engl J Med 2016; 374:344-353
PMID:26550689

要旨

この研究論文は、重度の虚血性僧帽弁逆流に対する僧帽弁修復と僧帽弁置換の比較結果を2年間にわたって検討しています。左室終期収縮期容積指数(LVESVI)や生存率について、2つの手術法間で有意な違いは見られませんでした。しかし、僧帽弁修復を行った患者は、中度または重度の僧帽弁逆流の再発が有意に多く、これが心不全に関連する有害事象と心血管の再入院率の増加につながっています。

既存の研究との関連性: この結果は、重度の虚血性僧帽弁逆流の2つの治療法に関する長期(2年)の比較データを提供することで、先行研究を補完しています。これは、個々の患者に最も適した治療法を臨床的に決定する際の情報提供に重要です。また、修復後の僧帽弁逆流の再発が重要な問題であるという証拠にも加わり、再発の予測因子を特定し、結果を改善する新たな戦略を開発するためのさらなる研究が必要であることを示唆しています。

Abstract

背景
重症の虚血性僧帽弁閉鎖不全症患者において僧帽弁修復術と僧帽弁置換術を比較した無作為試験において、術後1年の左室収縮末期容積指数(LVESVI)、生存率、有害事象に有意差は認められなかった。しかし、修復群では中等度または重度の僧帽弁閉鎖不全症の再発が有意に多かった。この試験の2年後の成績について報告する。
方法
251例の患者を僧帽弁形成術群と置換術群に無作為に割り付けた。患者は2年間追跡され、臨床的および心エコー学的転帰が評価された。
結果
生存患者において、2年間のLVESVIの平均値(±SD)は、僧帽弁修復術で体表面積1平方メートルあたり52.6±27.7ml、僧帽弁置換術で1平方メートルあたり60.6±39.0mlであった(ベースラインからの平均変化、それぞれ1平方メートルあたり-9.0ml、-6.5ml)。2年死亡率は修復群で19.0%、置換群で23.2%であった(修復群のハザード比、0.79;95%信頼区間、0.46~1.35;P=0.39)。2年後のLVESVIの順位に基づく評価(死亡を組み入れた)では、群間に有意差はみられなかった(z score=-1.32、P=0.19)。2年間の中等度または重度の僧帽弁閉鎖不全症の再発率は、置換群よりも修復群で高かった(58.8% vs 3.8%、P<0.001)。重篤な有害事象と全再入院率に有意な群間差はみられなかったが、修復群では心不全に関連した重篤な有害事象(P=0.05)と心血管系の再入院(P=0.01)が多かった。Minnesota Living with Heart Failure(心不全とともに生きるミネソタ)質問票では、置換群でより改善する傾向がみられた(P=0.07)。
結論
重症虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁修復術または置換術を受けた患者では、左室逆リモデリングや2年後の生存率に有意な群間差は認められなかった。僧帽弁逆流は修復群で再発頻度が高く、その結果、心不全関連の有害事象や心血管系の入院が多く発生した。

主要関連論文

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