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MCSと移植について思うこと

こんばんは。
直近の心臓血管麻酔専門医試験で、自分にとってのメリットは興味の幅の拡大だった。
中でも、「不全心をどのようにサポートしていくのか?」そのストラテジーはとても興味が湧いた。
今日は普段と嗜好を変えて「移植」と「Mechanical Cardiac Support」について思うことを徒然なるままに書いていこうと思う。


移植について


心臓移植は本邦では2010年から2017年までは少しずつ件数が上昇していたが、そこからやや停滞気味である。
長年待機しているうちに適応外となってしまう人もいて、移植を目指さず人工心臓で命が燃え尽きるまで繋ぐというDestination Therapy(DT)が2021年4月に認可された。
これによりLVAD認定施設も増加しており、心臓移植よりもLVADに本邦では目が向けられている。

一方で、アメリカではUnited Network for Organ Sharing(UNOS)の方針によりLVADよりもImpellaやIABPで移植を待機することが多いという。この背景には、HeartMate3(HM3)を装着すると移植の順位が下がることや、Organ Care System(OCS)の開発により長期間の保存や心停止後ドナーからの心臓提供も可能となり、ドナー心が増えたことが原因として上がる。


私見


完全な個人の意見だが、私は他の人の臓器を用いる移植という行為をあまり好ましくは思わない。
もちろん生体同士であることは良いことだと思う。
しかし、人間には未解明な部分がたくさんあり、それが故に他人の臓器を自分に移植する行為には不完全さや限界がいつまでもあることは言うまでもない。
さらに、亡くなられた方を綺麗なまま火葬もしくは埋葬することに個人的には意味を感じる。

一方で、MCSに関しては、あくまで機械であり他者の気持ちを慮る必要はない。そして、自分の免疫や凝固が異常をきたすことはあるが、それ以外に他者の不明瞭な因子が加わることはないし、ドナーが来るタイミングを待つ必要もない。

人間である以上、正論こそ正義ではない。いついかなることにも感情が少なからず介在することは自明である。よって、心臓移植を推進するより、より完全体なMCSを追い求める方が理にかなっているように感じる。


MCSについて


HeartMate3(HM3)という遠心ポンプ型LVADの登場により、移植を目指さず人工心臓で命が燃え尽きるまで繋ぐというDestination Therapy(DT)が認可され、直近の心臓血管麻酔専門医の試験でも大きな山となったことが思い出される。
では、先ほど述べた「完全体なMCS」に必要なことは何があるだろうか。そしてどのような改善が必要だろうか。

MCSの現状と問題点

  1. 機能の限界: 現在のMCSは、それぞれが心臓の機能を部分的にしか補うことができず、全体的な心臓機能の代替としては不十分である。

  2. 耐久性の問題: これらの装置は長期間にわたって使用するには耐久性に問題があり、定期的な交換やメンテナンスが必要になる。

  3. 感染のリスク: 外部と接続している装置は、感染のリスクを増加させる。また、埋め込み型に対してもSurgical Site Infection(SSI)が問題となり、その治療の発展も必要である。

  4. 患者の生活の質: MCSを使用する患者は、日常生活において多くの制限を受ける。装置の大きさや重さ、運動能力の制限などが影響する。昨今のICUでは、MCSがついたままでもリハビリをすることが場合によって推奨されており、MCS自体の縮小や軽量化も必須である。

  5. 血液との相互作用: これらの装置は血液と直接接触するため、血液凝固や免疫系の亢進、血管内皮損傷などの問題を引き起こす。これらの作用が起こらないようにするものの開発が必要である。

改善のための提案

  1. 先進的な素材の開発: 耐久性を高め、感染リスクを減少させるために、新しいバイオコンパチブル素材の開発が必要。

  2. 小型化と効率の向上: 患者の生活の質を改善するために、装置の小型化と効率の向上が求められる。

  3. 血液との相互作用の最適化: 血液と装置との相互作用を改善することで、血液凝固や損傷のリスクを減らす必要がある。

  4. 完全な心臓機能の模倣: 心臓の全機能をより完全に模倣する技術の開発を目指すことが重要。

  5. 長期的なモニタリングとカスタマイズ: 患者ごとに異なるニーズに対応できるよう、長期的なモニタリングとカスタマイズ可能なシステムの開発が必要。


このようにさまざまに課題を並べることで見えてくるのは、MCSには心臓移植のような包括的な機能を求めるより、細分化した劣化した機能の補助を求める方がリーズナブルと言うことだ。

よって、以下に必要とされる人材や物質のアイデアを記載する。

人材に関するアイデア

  1. バイオメディカルエンジニア: 先進的なMCS装置の設計と開発に必要。

  2. 生体材料科学者: 生体適合性の高い新素材の開発に貢献する。

  3. 心臓血管外科医/循環器医: 臨床試験と手術プロトコルの開発に不可欠。MCS装着前の必要な侵襲的介入に必須。

  4. 心臓血管麻酔医/集中治療医: 現象の原因の細かい究明MCSの適応の判断や管理について必要。

  5. 薬理学者: 新たな免疫抑制剤や抗凝固薬など新薬の開発を担う。

  6. データサイエンティスト: 患者のデータ分析によりMCSの改善に貢献する。

  7. 医療機器の規制専門家: 製品の安全性と効果を評価し、規制に準拠させる。

  8. 臨床心理学者: 患者の心理的サポートと生活の質の評価に関わる。

  9. リハビリテーション専門家: 患者の回復と日常生活のサポートを提供する。

  10. 医療倫理学者: 治療の倫理的側面と患者の権利の保護を考慮する。

  11. ヘルスケア政策専門家: 政策立案と資金調達の提案に貢献する。

機械および薬剤に関するアイデア

  1. 各部位毎MCS: 患者の状態に応じて細分化されてサイズダウンしたMCSの開発。MCS自体の自動調整する高度な制御システムの開発。

  2. 微細な血流制御機能: 細かな血流調整が可能な装置の開発。

  3. 植込み型遠隔モニタリングシステム: 患者の健康状態をリアルタイムで追跡するシステム。

  4. 生体適合性材料: 体内での長期間の使用に適した新素材の開発。

  5. 非侵襲型心臓支援技術: 外科手術を必要としないMCS技術。

  6. 血液凝固抑制薬: MCS使用時の血栓リスクを低減する薬剤。

  7. エネルギー供給問題: 長期間使用可能な低エネルギー消費型装置もしくは、非侵襲的に充電できるデバイスの開発。

  8. カスタマイズ可能なMCS: 患者の個別のニーズに合わせて調整可能な装置。

  9. 炎症反応抑制薬: 植込み後の体の反応を抑える薬剤。

  10. 3Dプリンティング技術: 個々の患者の体型や条件に合わせたMCS部品の製造。

これらのアイデアは、技術的革新、研究開発、臨床試験、そして政策の面での支援を必要とする。患者の生命予後を改善するためには、これらの分野での協力が不可欠である。


まとめ


今回は私の興味の一つである「不全心をどのようにサポートしていくのか?」について、頭の中で考えていることを言語化してみた。
この必要となるであろう人材のどこに自分が組み込まれるかは今後の楽しみだが、この狭い範囲をとってもこれだけ選択肢があることにワクワクする。

また、現在のAIやWEB3.0などの発達は目覚ましく、「スーパーファミコンとPS5くらいこの10年で進化を遂げている」と言うエンジニアもいるくらいだ。
自分の進化のスピードを上げるためにはこれらを活用できないことは大きなデメリットである。この分野の勉強も並行してやっていくことは自分にとって必須事項だと考えている。

今回述べたようなことを、途方もないこととは思わず、より短時間で作り上げていき、未来の医療への不安が軽減されるよう研鑽していく。

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