続・計画は常に変わるから計画なのです。
アメリカ行きを延長して、ニンビンという山間の街でマカダミアピッキングに明け暮れてたある日、僕は気付いた。
このペースで世界一周って出来るんだっけ?
世界一周航空券(50万)の有効期限は1年。
そして今、1カ国目のオーストラリアに来て既に4ヶ月以上が経過していた。
世界一周、合計20回のフライトが出来る券で、これまで使った回数は、
1回。
毎日働いた帰りに、ヴィガンドーナツを買い食いしたり、時々セールになったヘンプブランドの洋服を買ったりと、結構楽しくやっていた。
年齢や性別関係なく、えらくみんな仲良くて、いつの間に昼ごはんも大体一緒にとってる。
雨で仕事が休みの日は、まとめて洗濯したり、ちょっと贅沢なスウィーツを買いに出たりと、日々の生活するリズムが一緒になってきてる。
特にそれぞれ一人で旅をしてる、みっちゃん、ユウキ君、ロミちゃん、ハギ氏達の経験談がギャグで、毎日色々教わってた。
さすらいのオシャレ旅人、ハギ氏。
謎が多過ぎてそこも謎なんだけど、絡むほどに味が出る、まるで出汁のような人。
同じ仕事場の仲間が宿を出るとなると、ハギ氏をはじめ、料理の得意な人達が腕を奮ってご馳走が出来上がる。
食べる時間は何より大事なのだと痛感中の日々。
食べるエネルギーと楽しく食べるエネルギーじゃ、得られるエネルギー量が違うのだ。
仕事と自分の時間の両立がうまく出来ていると、同じ「時間」がこうも贅沢になる事を知った。
毎日が本当に楽しくて、あれよあれよで、日々は過ぎていってる。
そんな中、前回延長していたフライトの日が2週間後に迫ってきた。
今回は早めに準備して、計画的に事を運ぼうと、二段ベッドの下で寝ていたみっちゃんに事情を説明することにした。
ユウキ君にはまだ言えない。
言うとどうなるか、大体想像がつくからだ。
【前回延長した理由はコチラ】
僕)いやー、そろそろオーストラリアも終わりかなー、2週間後にはアメリカ行きだわー。
み)え!むさピーそうなの?
少し驚いた様子のみっちゃんは、少し間をおいてから、こう切り出した。
み)でも、このままアメリカはないでしょー! もう少ししたらマカダミアの仕事も終わるし、とりあえず仕事が終わるまではいるでしょ。
僕)いやー、そうなんだけどね、次のフライト予約してるし、そろそろ出時かなーとね。
まだ2週間くらいはあるけどね。へへへ。
そりゃ、一ヶ月以上二段ベッドの上下で寝ていた仲だ。
軽く引き止めてくれるのは嬉しいものだ。
少し何か考えてる様子のみっちゃんは、続けて話す。
み)でもさ、むさピー、よく考えてみて。
このメンバーでこの場所に集まれるのって、もうこれで最後かもよ。
まだやりきってないんじゃない?
僕)やりきったかー、確かにまだまだみんなと遊びたいし、やっとオーストラリアの事わかってきた所だけどね、、
でもまあ、世界一周航空券(50万)があるしね。
もう1回延ばしてるし、さすがに2回目のってのはねー、、。
今流れてる空気の変わる気配を察知した僕は、少し緊張する。
なんか妙だ。
不吉な「何か」がよぎる。
【不吉な何かを予兆させるようになった出来事はコチラ】
一旦その話は終わり、夕食の時の事。
ユウキ君達数人と話してると、こんな話が飛び出た。
ユ)実は、今度皆既月食があるらしいんだ。
オーストラリアで見れるやつが。
しかも、その日は満月なんだって!
多分さ、ウルルとか行ったら、すんごいパーティーとかやってそうじゃない?
一同、ざわつく。
そして、みっちゃんも続く。
み)いやー俺ね、ここの仕事が終わったら、ちょっと旅するのも面白いなーって思ってたんよねー。
車持ってるし。
例えばキャンプとかしながら、ウルルとかまで行くのも面白そうね。
僕)へ?
う、、、ウルル?
ウルルって、あの、ウルル!!っすか、、。
地球のへそと呼ばれる、あの、あの聖地ウルルへ、目の前の男達は今、あそこへ車で挑もうと言ってるのか!
(ウルルでググってみた)
そう、僕はオーストラリアといえば、コアラかウルル(エアーズロック)しか知らずにこの地に降りてきて、来た当初はウルルは絶対行きたい!!
と、思ってたのだけど、想像以上に遠い上、行くチャンスも特に訪れないままここまできたので、今回は行くのを諦めかけてた。
なぜなら、世界一周航空券(50万)を1年以内に使わなくてはいけないから!
みっちゃんはそんな僕の心の内を知ってか知らずか、話を続ける。
み)毎日みんなでキャンプしてさ、一緒にドライブしながらウルルまで行けたら、めちゃくちゃ面白いと思うんよねー。
あぁ、まるで、まるで映画じゃないか。
夢にみてた車での旅。
砂漠と荒野の中を、車で砂埃を立ち上げながら駆け抜け、途中、錆びれた町のバーで一杯やりながら、どこまでも続く地平線と青い空の境目を眺める自分。(僕はお酒が飲めません)
さらに皆既月食で、世界中から集まった人達と踊り明かすなんて、最高じゃないか!
ハードボイルドだぜ!
そんな俺、ハードボイルドだぜ!
(ハードとボイルドがひとつの単語なのかすら定かじゃない程、意味は知らないけど、とにかくハードボイルドだ)
ウルルという響きに、胸が高鳴ってしょうがない僕。(イメージです)
ふと、旅に出るきっかけをくれた自由人、高橋歩氏が本に書いてた文が頭を過ぎる。
出来るとか、出来ないとか考える前に
まずは、自分という人間の欲求を解放するんだ。
あなたは、何を望んでいる?
あなたは、何を求めている?
まずまずの人生をこのまま続けるか?
二度と無い人生を求め続けるか?
高橋歩(人生の地図より)
僕の心は正直、揺さぶられ始めてる。
いや、既に心の荒波は、僕の当初の計画を飲み込み始めてるのかもしれない。(結構簡単に起こる僕の中の荒波)
ユウキ君達は、ウルルまでの距離や、車が何台必要なのかとかいう話で盛り上がり始めてる。
ユ)ウルルで月食パーティー、絶対やばいでしょ!
僕)いや、正直めっちゃいいなー!
ウルルかー、完全に諦めてたけど、ホントに行けるんかな?(ドキドキ)
み)そりゃ行けるでしょー。
むさピーと一緒に行けたら、絶対面白いと思う。
俺もこのタイミング逃したら、次はいつ行けるかわからんしね。
やっぱ、全部タイミングよね。
僕)タ、タイミング!!(グサッ)
そうだ!タイミングってのは何より大事な事を、ここオーストラリアで写真を撮りながら、いつもいつも一番感じてた事じゃないか!!
(ケアンズのビーチで、最高のタイミングに出くわした時の一枚)
(Timing -タイミング- / BLACK BISCUITSより)
そうなのだ。
全てはタイミング。
今、ここに集まってるメンバーだって、偶然という奇跡が重なって集まって来てる訳だし、これを大事にするのも、軽く流してしまうのも自分次第なのだ。
せっかくこんなに深く仲良くなったみんなと、航空券の期限ぽっちのせいで別れるなんて、そんな俺は俺じゃねえ!!
ガソリンひとつとってもタイミング。
一回でも注ぐタイミングをミスると、車だって道に横たわる、ただの重りだ。
そんなスリリングな環境で、ウルルまで行くなんて、ロマンしかない!
(ガソリンの注ぎ方には、おそらく深い意味はありません)
翌日、僕は航空会社に2度目の延長を告げた。
しかも次のフライト予定は、今から2ヶ月以上も先にした。
これで、オーストラリアには7ヶ月滞在することになる。
世界一周航空券を持ってるのに!だ。
まだ1回しか使ってないのに!だ。
電話をきった僕は、ふと思った。
やった。
マジでやっちまった。
そしてこの時、既に気付き始めていた。
俺、、世界一周出来ないかも、、と。
でも、なんだかとてもスッキリしている自分もいる。
なんだ、この湧き出る高揚感は!
本当にウルルに行くのか!行けちゃうのか!
しかも車旅で!!
いやー、みっちゃん、ありがとう!
なんか俺、今、嬉しいよ!
笑顔の優しい旅人には用心しろ!という教訓をすっかり忘れて、僕はウルルの事で頭がいっぱいだった。
【インスタでもオーストラリア編やってます】
【感想はコチラが嬉しい!】
【ケニアで出会った動物達を大判のポスターカレンダーにしました】
いや、これ誰かからサポートあった時ほんまにむっちゃ嬉しいんですよ!!