マカダミアに年功序列は通用しない。
ニンビンで合流した、噂の旅人、みっちゃんと、みっちゃんの旅友達のロミちゃん。
同じ宿には、学生さんや、サーファー、ダンサーなど、総勢十数名の人が、同じ仕事仲間として泊まっていた。
そして、いよいよマカダミアピッキングの仕事が始まった。
農場仕事は、とにかく朝が早い。
まだ暗いうちから起き始めて、弁当を作ったり、朝食をとったりをバタバタと済ませながら車に乗り込み、現場へと向かう。
これまでにタスマニアで、じゃがいも、かぼちゃ、ぶどうを収穫する仕事を経験してきて、農場仕事には、大きく2つの種類がある事を知った。
時給制の仕事と、歩合制の仕事だ。
じゃがいもやかぼちゃの収穫仕事は、自分たちが収穫した分だけ給料になる歩合制に対して、ぶどうなど、ある程度丁寧に収穫する仕事は時給制で行なっていた。(農場のやり方によっても違うそう)
マカダミアナッツの収穫は歩合制。
取った分だけが自分の給料となって返ってくるのだ。
これは燃える。
ルールは簡単。
マカダミアの木の下に落ちてる実を、バケツいっぱいになるまで拾い集めて、そのバケツの数ぶんがお金になる。
初日、既に数日前から始めてた学生の子達に混じって仕事をしたのだけど、みんなとにかく早い。
僕がバケツを一杯にするまでに、彼らは既に二つ目の半分くらいまで取ってるじゃないか!
なんだ、この言葉にならない迫力は。
そういえば、みんな喋ってる様子もない。
黙々と目を下に落としてマカダミアナッツに集中してる。
そうか、そうなのだ!
ここでは、歳の差や性別、国籍、職種など関係ないのだ。
いくら日本の大手の会社で部長だったとしても、営業で数億円の契約を結べたとしても、プロ野球の選手だとしても、モデルだったとしても、ニートだとしても全部関係ない。
ナッツを誰よりも多く手にした人が、この世界のトップに君臨出来るのだ!!
朝のひととき。
女の子とも、スッピンで生活を共にするので、なんだか家族みたく親近感が湧いてくるが、彼女は仕事となるとかなりのやり手だ。
仕事中は、全くかまってもらえない。
農場へ向かう車の中で朝食を食べるのが日課になった。
お気に入りはトーストにバナナとはちみつと、ピーナツバターを挟んだサンドとチャイ。
帰る頃には、後ろの荷台がマカダミアナッツで一杯になる。
なんかみんな余裕あるのに早い。
お、こいつはおっちょこちょいキャラだな、と思っている彼のバケツをちらっと覗くと、結構な量を拾ってる!
ショック!
学生軍団、みんな余裕ありなのに、俺より取ってる!
逆立ちまで決めちゃってるし!!
なにが!?
俺はみんなと、一体なにが違うんだってんだ!
この木の下に落ちてるナッツを列を作って拾いながら進んでいく。
こうして、バケツの上に座った状態で落ちてるナッツを両手で放り込んでいく、ジャパニーズウンチングスタイルが基本のポジション。
両手をいかに早く動かしながら、なるべく木の葉がバケツに入らない様に、ナッツだけを取るのかがポイントなんだとか。
(って、この説って誰が作ったんだろう)
旅人ロミちゃんとは、何か似たものを感じていて安心してたのだけど、歩合制になると急に喋ってくれなくなった気がする。
友情すら壊してしまうのか!
これが、これが、ブ・ア・イ・セ・イ!
そしてまた一人、歩合制の荒波に飲み込まれてしまった人がひとり。
恐るべし、歩合制、恐るべし!!
音楽の力を使ってリズミカルに収穫していくスタイルも!
誰が声をかけても答えてくれないので、きっと怖い人なんだろう。
と噂になる程のリスクを負わなくてはならない、かなり高度でタフな技。
しかし、やるしかないんだ!それが、歩合制!
おかしい。
こんなはずじゃないのに、心のどこかで、歩合制ならそんなにがんばらなくても、誰も怒る奴なんていないぜ。と囁く声が。
そう、僕が取らなかった分、他のみんなにはさらにナッツという名のお金が行き渡るのだ。
これは、一種の、
愛だ!(投げ出しやすいのは、子供の頃からです)
こうして戦い抜いた戦友達は、宿に帰るとまた元の優しいヒューマンビーイングに戻るのだった。
そして、丁度ニンビンに来た翌日が誕生日だった僕を、なんとみんながケーキを作って祝ってくれた!
なんだ、なんってんだ!ちくしょー!!
俺、、オレ、、
まだみんなの名前知らないよ。
一度は挨拶したし、時々話してるけど、殆ど全員の名前忘れちゃってるよ!
知ったかぶった顔してごまかしてるけど、内心ヒヤヒヤなんだよ!
愛してるぜ!!
こうして、翌朝になると、またみんな一緒に、歩合制と言う名の戦場へ向かうのだった。
【インスタでも、オーストラリア編やってます】
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いや、これ誰かからサポートあった時ほんまにむっちゃ嬉しいんですよ!!