エンジニア未経験の文系大学生が東京で就職しフリーランスとして地元札幌に移住するまでとこれから

2010年、私は小樽商科大学という文系の単科大学に通う大学3年でした。この大学は小さいながらも国公立大学で、卒業生は銀行や証券会社、公務員になる人が多かった印象があります。一方で、社会情報学科という情報系の学科もあり、基礎的なC言語の授業なども存在していました。最初にプログラムを書いたのもその授業でした。それまではHTMLなどは書いたことはあったものの、for文やif文を書いたことすらありませんでした。その授業でプログラムの面白さを初めて感じたのが、エンジニアを目指す大きなきっかけとなりました。そして、次の年の就職活動では主に東京のWeb系ベンチャーを受けていました。大手のコンサルやSIerももちろん選択肢にはあり、Web試験なども受けていたものの、将来的に北海道に戻ってくるためには大企業にいるよりも、小さいベンチャーでエンジニアとしてのスキルをつけたほうが良いのではないか?と感じていたのがWeb系を選んだ大きな理由です。結果的にはその選択は間違っていませんでした。今後、下に書いたような対象の人に少しでも参考になれば良いなと思い、自分のやってきたことをまとめてみようと思います。


対象

・地方(北海道など)でエンジニアを目指している学生
・東京でエンジニアとして働いているが地元や地方に移住を考えている人

戻ってきた経緯などは大体はブログに書いてあるので、こちらには別軸でより詳しく書いてみようと思います。

未経験の文系学生がエンジニアを目指す

私が就職活動していた2011年頃も、文系理系の有利不利みたいな話はありました。しかし、今も昔も「文系なんですけどエンジニアになれますか?」みたいな質問をすると嫌な顔をされることが多いです。私もあまり良い質問だとは思いません。「理系で営業ができますか?」みたいな質問ってあまり聞かないし、そんなの性格などもあるのでわからないですよね。それは文系エンジニアにも同じことが言えます。

・色々なタイプの人がいること(技術志向・ビジネス志向など)
・エンジニアの中でも専門的な知識を多く必要とするものと、基本的なプログラミングスキルとサービスや業界の知識を身につければできてしまう仕事がある

この2つが大きな理由ですが、特に2つ目のエンジニアに求められる専門性というのはかなり幅があります。私の場合はメディアやECのWebサービスの開発やiOS/Androidアプリの開発をメインにしていますが、ほとんどのエンジニアスキルは就職してから身につけることができました。ちなみに就職するタイミングではif文とfor文で基本的なプログラムが書けるレベルでした。

就職して身に付けたスキル

・PHPのフレームワーク(CodeIgniter/Laravel/Symfony)を使ったWeb開発
・MySQLやRedisなど、DBやキャッシュの仕組みを使った開発
・SVN、Gitを使った開発
・大量のアクセスを見越したSQLやプログラムの書き方
・AWS/GCPなどクラウドサービスを使ったWebサービスのインフラの構築
・jQueryを使ったフロントエンドの実装(最近はReactとかVue)
・Objective-C, Swift, java, kotlinを使った、iOS/Androidのネイティブアプリの開発
・スマートフォンアプリで使用するAPIの設計・開発
・綺麗なコードを書く、属人化を防ぐ、見積もり、タスクの優先度付けなどのチームで仕事を進める上でのスキル
・ユーザーの観察などを通してプロダクトをブラッシュアップする手法

これらは就職後5年で基本は身につけることができました。最近はプログラミングスクールや教材などがたくさん出てきていますが、それらはプログラミングの基礎は学べてもそれだけでは実務を行うのは困難です。特にチーム開発の部分や大量のアクセスが来たときに発生する問題などは実務でしか学べません。実際に経験してみてわかるのが、社会人になってからの数年間の集中力というか、費やす時間は非常に大きいです。朝10時とかから夜の23時まで毎日のように頭を悩ませながら上に書いたようなことをやっていましたが、非常に楽しかったです。

自分が大学時代にある人に言われたのが、「20代の最初の3年でその先の社会人生活が決まる」という言葉なんですが、確かに最初の数年間の経験のおかげで北海道に戻るという道も開けたし、色々と将来の選択肢を広げることができたと感じています。

地方に戻るという決断

東京は非常に楽しい場所です。特に20代の人にとっては遊び、仕事、出会い色々な刺激があります。私が就職で上京した一番の理由も、仕事での成長が一番見込める場所が東京だったからです。実際、地元札幌にもいくつかのIT企業はありますが、大手の下請けだったり受託の制作会社が多い印象です。20代で年収500万以上もらえて、スキル的にも面白い仕事ができる企業というのは殆どないんじゃないかなと思います。これは私の勝手な印象だけど、恐らく概ね合っているのではないかと思います。

東京は働くにはとても楽しい場所ですが、どこへ行くにも混んでいたり時間がかかったり、不便なところも多々あります。特に30代には東京の刺激がそこまで必要なくなってくるのかなと思います。私は結婚を機に北海道へ戻ることを決めたのですが、それは地元に戻っても仕事を続けられるという確信が持てたからでした。その辺の経緯はブログに細かく書いてあるので割愛します。私の場合、戻る決断をするために必要だったのは、戻っても仕事が続けられるなという確信を得るために、副業やリモートワークなどを事前に試してみることでした。

地方移住したエンジニアの将来

昨今は副業やリモートワークなど働き方に関する話題を見かけることが多くなりました。特にリモートワークに関しては地方移住する人や地方在住の人にとって明るい話題に聞こえると思います。しかし、これらをやっているのは東京の企業が殆どで、地方在住の人がその恩恵を受けるためにはまず東京の企業にアンテナを張って動かなければいけません。

フリーランスのエンジニアといっても色々な働き方があります。私の場合はもともと働いていた会社にお願いして、リモートで仕事を続けさせてもらいつつ、スポットで知り合いの仕事を手伝ったりしているので、ほぼ会社員に近い感じです。他にもブログに書いたように、いくつかの働き方は存在します。ただ、どれも大事になってくるのはスキル + 信頼関係(実績)です。地方に戻りたい人は東京でスキルと信頼関係を構築して、それを持って地方に戻るというのが一番自分の中ではやりやすいのではないかと思います。一度、東京で仕事をするというのは、自分の中で自信になると思いますし、東京のお金的な相場や案件の豊富さを知るのはとても重要です。プログラミングのスキルは正直、地方にいても身につけられる人はたくさんいると思います。ですが、業界の相場や案件の種類を知っていてそれらの中から選べるかどうかというのは、地方しか知らないエンジニアと東京で働いていたエンジニアの圧倒的な差になると思っています。いくらネットがあるとはいえ、ネットだけでは埋まらない情報格差みたいなものが地方と東京には確実にあります。

今後、5年以内とかで東京の企業が地方に住んでいる人を、地方在住のまま採用する、という可能性は大いにあると思います。すでにリモートワークで有名なキャスターは場所関係なく採用していますし、今後そういう企業は増えていくのではないかと思います。ただ、それは優秀な人を採用するために地域の縛りを外すということなので、地方のスキルや経験が中途半端な人が採用されるようになるというわけではありません。何度も繰り返すようですが、それが地方に戻る人にとってチャンスではあるものの、私はそれでも一度は東京に出ることをおすすめします。それが、経験やスキルとして自分の中に蓄積されて、地方での仕事にも大いに活きると思うからです。

私の地元札幌でも、道外に流出してしまう人がかなり増えていて、抑制目標の倍が道外に出てしまっているというのがニュースになっていました。その理由としては、「就職したい企業がない」というのが殆どなようです。もちろんその数字は喜ばしいことではないですが、将来的にその人たちがどうやったら戻ってきてくれるか、というところが重要だと思います。特に、今後フルリモートワークで働ける企業が増えた時に、その働ける場所やより働きやすい環境を自治体が支援したり、そのような企業への誘致を行ったりそういうことを積極的に行っていくことも大事なんじゃないかなと思います。

まとめ

ということで、エンジニアになるという選択から、今後地方で働くためにはどうしていくべきかという話をしてきました。特に、これから新卒や未経験でエンジニアを目指す人には、ぜひ一度は東京に出て経験を積んで地方に戻ってほしいなと思います。上にも書いた通り、地方に居ながら働ける企業はどんどん増えるでしょう。しかし、まずはスキルや経験のある人を地方在住でもいいから雇いますよ、という流れでしょう。新卒や未経験の人にリモートで教育したりするのは非常に難しいですし、採用の判断もなかなか難しいものがあります。

一度地元を離れ、また戻ってくるというのが本当に正解かはわからないですが、地元から出ず自分で勉強しスキルを高めていくというのは、強い意志とやる気が必要だと思います。一方で、面白い仕事や色々な人からの刺激を受ける中で、人や仕事を見ながら大きく成長する人もたくさんいると思います。何もリモートでエンジニアを続けることだけが戻ってくる手法ではないですし、スキルを身に着けて視野が広がれば何かしら見えてくると思います。そんな人はぜひ、地元を抜け出して経験とスキルを積み、何が自分に向いているか悩み抜いた末、いつか地元に戻ってきてください。

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