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石垣島2023.2 (供養の場として

 遠征記を作ろと思ったんです。大学では生物系のサークルに入っていて、そこで会誌は作っているのですが、そこだけでは遠征記の全てを消化しきれず(一応「サークルの」会誌なので僕ばかり何十ページも自分の旅の話を書くわけにはいかないのです)、じゃあいっそのこと僕が一人で一冊作ってしまえば良いじゃないか、ということで僕の個人誌制作が始まりました(現在鋭意制作中、今のところ三回生(2024年度)のおわりまでの遠征を収録して四回生(2025年度)のNFでの販売を予定しています)。
 しかし、一人で出すなら出すで別の問題があります。印刷費です。しかもカラー印刷にしようと思っているのでかなりの費用になってしまいます。色々考えた結果、自分の中で掲載したい内容と費用のバランスが取れるラインが海外遠征に絞った出版でした(正直に言うと、国内遠征をお金を取るに値するレベルに引き上げる自信がなかったという面もあります)。国内遠征がまた行き場を失ってしまいました。
 
 そんな国内遠征記の供養の場としてnoteを選んだわけです。もともと興味はありましたから、ちょうど良いきっかけになりました。飽きるまでは、国内遠征記以外にも色々書くと思うので、楽しくやれるといいなと思っています。
 第一弾は2023年2月の石垣島遠征です。時期的にそこまで生き物の量が多くなかったので、非常にあっさりした内容になっています(書くこと、所謂「山場」がなかった)。僕は基本的に常体で文章を書くので、以下から急に文体が変わりますがお気になさらず。

2度目の石垣
 期末試験や車校の卒研や受験直前期で佳境に入った塾講師バイトを終え、ワカサギ掬いに行ってウハウハして、そんなこんなであっという間に2月半ば、石垣島へ。K(中学同期)とは長い付き合いだが遠征らしい遠征に行くのは初めてだ(もっとも、高校時代の僕らにしてみれば琵琶湖へ行くのも「遠征」だが。こうやって当たり前の範囲を広げていくのだと思う。)。ウキウキで、さて南国!と思って空港を出るとなんだか肌寒い。11月でさえ30度を軽く超えていたのに、日が暮れると強風も相まってめちゃくちゃ寒い(名蔵の干潟で凍えた)。森に入れば風は無いので、前勢に避難してサキシママダラを筆頭に「石垣島らしい」生き物を観察した。
タナゴモドキを求めて
 前回は虫屋ばかりの編成だったが、今回は水生生物屋さんと一緒なので良い具合に初見の生き物が入る。海釣りでは南国らしい魚がポロポロ釣れるし、マングローブ林や河川中流部でガサればハゼの多様性がすぐに分かる。さて、今回の石垣遠征はあまり具体的な目標がなかったのだが、数少ない事前に目をつけていた生き物のうちの一つがタナゴモドキだ。文献を手に入れてそれなりに具体的な生息地を把握していたのでまあ採れるだろうと思っていたが、現実はそんなに甘くはなかった。1か所目、確かにタナゴモドキがいそうな見た目だ。早速入ってみる、と、スボボボボ。一歩で腰まで沈んでしまった。Kに引き上げてもらう(一人だったら詰んでいた)。ここは諦めて次の場所へ向かおうとなり2か所目、今度は河川だ。ここならさっきみたいに沈むことはないだろう、と思っていたが今度は濁りが僕らの進行を阻んだ。どうやら八重山は2月が田植えシーズンらしく、代掻きの影響でカフェオレ色の河川になっていた。水底の状況が見えない上にかなり深く、とてもじゃないが網を入れられる状況ではない。これは時期を改めるしかなさそうだ。仕方ないのでイタリコ(崎枝にあるイタリア料理店)で元気をつけて、今度はサソリ探しに向かった。
サソリは何処
 日本には2種類のサソリがいる。2種類とも石垣にいる。これはコンプリートするしかない。前回の石垣島遠征ではマダラサソリを捕獲したので今回ヤエヤマサソリを捕獲すれば晴れて日本産サソリ全種採集達成だ。前回は手がかりさえ掴めなかったヤエヤマサソリだが、今回は樹皮めくりを中心に行った結果あっさり見つかった。なんだ簡単じゃないか。ネット上の「比較的簡単に採集できる」という文言にようやく納得した。さて、あとはマダラサソリさえ見つかれば晴れてもう一人の日本産サソリ全種採集者が誕生するのだが、これが見つからない。一晩中浜を歩き回っても一向に見つからない。あれ、前回は簡単にみつかったのに…浜を歩き回ってたまり続ける疲労と共に今回はお預けか~のムードが流れ始める。だがここでもうひと踏ん張りするのがKらしい。引っ張られて僕も着いていく。いよいよ帰りの飛行機の時間が迫り、最後に30分ぐらいだけ空港裏の浜を覗く。こりゃもう無理だろうと思いながらも石垣島に来た虫屋として何もしないわけにもいかないので頭を空にして石をめくり続ける、と、小さな影が飛び出した。マダラサソリだ。君を見たくてどれだけ探し回ったか。思う存分写真撮影をして海斗に渡す。晴れて2人そろって日本産サソリ全種採集者となり石垣島を後にした。

マダラサソリ

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