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夜はささやかな絶望に満ちているけれど【7/21阪神戦●】

ホテル近くのコンビニで、ポークたまごおにぎりとかタコライスとかサラダとかを買い込み、近くのビーチでばんごはん、ということにした。

なぜかWi-Fiのはいるそのビーチで(すごい時代だ)、去年と同じように、私はヤクルトの試合を見ていた。去年と同じように、ヤクルトはしょっぱなからピンチを迎え、そしてチャンスをつぶしていた。

だけど南国のビーチでiPadを通じてみる山中さん、というのはなんだかとても、目の前の景色に馴染んでいた。もちろん、いつだってヤクルトは勝ったり負けたり負けたりそして負けたりするわけだけれど、まあそれぞれに、それぞれの試合に、見ている方にも何かしらの彩りを残してくれる。例えばこうして旅の景色に、すんなり入り込んでくれたりする。

もう15年近く前、この島でとった私の運転免許は、自慢じゃないけれどもその後の人生に全く生かされていない。こうしてこの島に戻ってきても結局、私は車のない毎日を過ごす。おかげで小さなホテルの小さなプールで、こどもたちは朝から晩まで信じられないくらい楽しそうに遊ぶ。私はプールサイドで、この文章をぽつぽつと紡ぐ。

車であっちへ行ったりこっちへ行ったりする旅もきっと楽しいけれど、こどもたちと三人の旅はもうずっと、こんな風に過ごしてきた。たぶん私には、それが合っているんだよな、と思う。「普通」とはもしかしたら少し違うのかもしれないけれど、でもたぶん、この島に出会った頃からずっと、私がささやかに求めていた日々は、こういうものだったのだ。

だからそこに毎年毎年当たり前のように借金を抱え、佐世保で出会った社長に「なんでまたあんな弱いチーム応援しよるとね!?みんな打たれよるしみんな打てんよ!不思議たい!!」と言われるようなチームを応援するという謎の修行が加わったところで、まあそれもきっと、私が求めていたことなのだろうしな、と、思うしかないのである。いやもう、なんでこんなことになったのだろう。わけがわからない、とは思うけれど。

「ヤクルトは今日も負けた。」村上春樹も出川哲朗もつぶやくそのセリフを、私だって今日もつぶやく。それはもう動かしがたい、この世の真理のような気すらしてくる。夜は今日もささやかな絶望に満ちている。この夜は、いつまでも、いつまでも、続いてゆく気がする。

だけど「このぷーる、あしつかない!!こわい!!」とぎゃーぎゃー騒いでいたむすめは、あっという間にアームリングだけでいっちょ前にバタ足(もどき)や背泳ぎ(もどき)ができるようになり、自由自在にぷかぷかと浮いている。昨日できなかったことが今日できるようになる、というのは、こどもを見ていれば確実に存在するのがわかるし、去年できなかったことが今年できるようになる、ということだってもちろん、山のようにある。

子どもたちほどの成長スピードはもう、私たちにはさっぱりない。だけど、ランニングの距離を少しずつ伸ばしていくように、今日も明日も何かしらの良き変化があることを、やっぱり信じていたいと思うのだ。私にだって、このチームにだって。

この島にいる間に、少しくらいは勝ちますように、と、ささやかすぎる願いを、今日は私も抱くのである。(結構いるけど。)


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