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勝つことだってある、という希望を胸に【7/17巨人戦○】

ツーランを打たれた山田大樹さんを、ベンチのみんなが拍手で迎え入れた。監督とコーチはじっと、グラウンドの方を見ている。

元サラリーマンとしてはなんとなく胃がきゅっとしながら、同僚のあたたかさにほっとした。みんないつだって、必死で前を向こうとしているのだ。それは16連敗中のベンチからでだって感じたことだ。

待ちわびた夏の日差しが、少しだけ注いでいた。私の思う「夏!」にはまだほど遠いのだけれど(そしてその季節はあまりに短いと知ってしまったのだけど)それでも夏の始まりの空気をようやく感じられた。もうすぐここに、花火が上がるのだ。過ぎ去ってきた夏を思いながら、そしてまた新しく訪れる夏に、思いを馳せる。

久々のバックネット裏2階からは、ベンチの様子がよく見えた。ベンチスタートの選手たちが、前のめりになって声を出す。最初からグラウンドに立つわけではない選手たちの想いが、風に乗って届く。

チャンスはゲッツーになり、ヒットだった当たりがなぜか一塁でアウトになる。こちらにたぐり寄せられたはずのチャンスは、みるみるうちに消えていく。打っても守っても、流れはすぐに相手に渡るように思える。

追いかけても追いかけても、逃げていく月のように、指と指の間を勝ち星はすり抜けていった。勝ち越しの1点はすぐに追いつかれ、そして追い越されていった。

そんなあらゆるものを吹き飛ばすように、3番エイオキは渾身のスリーランを放つ。今年も何も変わることなくめちゃくちゃ元気に躍動するおじさんを見ていると、いったいこの人はどこまでいくんだろうと思いながら、同時に私もまだがんばらなきゃな、と思う。朝の10キロのランニングを嫌々走っている場合じゃないのだ。いやだけど。

だけどそれさえも、次の攻撃で手に負えない坂本さんにの2ランと、今日だって「いっつも亀井!」の亀井さんの犠牲フライで1点差に詰め寄られる。流れはいつも向こう側にあるような気がする。後ろに座った巨人ファンは、「やっぱ今年の巨人は強いわ!!」と言う。私もそう思います。

それでも今日のヤクルトは、なんとかかんとか(命からがら)逃げ切ったたった。あらゆるトラウマが頭をよぎったけれど、あの日やあの時やあの試合の悪夢は起こらなかった。命からがらではあったけれど、その1点差を、なんとか最後まで守り抜いた。

「今日もヤクルトは負けた」と、まあ随分言い続けている。5月も6月も、本当によく負けた。7月になって流れが変わるかと期待し始めると、また負けた。でも、勝てることも、ある。その1点差を守り抜くことができる日も、ある。そう、いつもいつも負けていたって、勝つことも、あるのだ。

それはいつだって、生きる上でとても素晴らしいことじゃないか、と思う。「今年の巨人は強いわ!」というのは真実だけれど、でもその強い巨人に、ヤクルトが勝つことだってもちろん(もちろんと言いたい)あるのだ。

そうやって日々は続いてゆく。負けることがどれだけ多くとも、たまになんとか、勝ったりしながら。それはそれで、しあわせな人生じゃないか、と、私はまた思う。

次は胃に優しい試合が待っていますように、なおみちの怪我が早く良くなりますように。どうか焦らず心折れず、そこに戻ってこられますように。




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