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縁日とバザーとヤクルトと。【7/6中日戦 ◯】

PTA縁日のバザーで、慌ただしく袋詰めをしていたら、いつの間にかヤクルトの試合は始まっていた。

学生のバイト以来の「接客」の仕事をしながら、私はごくごく個人的な人間だし「他人に興味がなさすぎる」といつも言われるし自分でもそう思うけれどもその割に、接客ってそういえば結構好きだったな、と思い出す。

お会計をして袋に詰めて一瞬だけ会話をしてその時に生まれる空気感とか、その一連の作業をいかに効率良く進めるかと手を動かしながら考えていくこととか(私の場合この「手を動かしながら」というのがいつもすごく重要なのだ。頭の中だけでは全く何も組み立てられない)、そういう「動く時間」のようなものが結構好きなのだと思う。計画的に完全に練られたものよりも、進む時間の中でころころ色合いが変わり、そしてその都度それに自分も合わせて変えていくようなものが、好きなのだ。

だから野球も好きなのかもなあ、と、ふと思う。いや、野球が好きだなんて子供の頃は思ったこともなかったけれど、そもそもこの「動く時間」が好きだと気付いたのも最近だ。頭の中だけで物事を組み立てるのがしぬほど苦手だ、と気付いたのだって結構最近だ。自分のことも、自分が好きなものも、気づくのにはそれなりに時間がかかるものなのかもしれないし、そもそも好きになるのなんていくつになったって構わないのだ。

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あっというまにカツオさんは1失点をしていた。でも大丈夫、今日の私にはやるべきことがある。目の前のバザーの品を全て売っていかなければいけない。あの大物のおむつ用ゴミ箱は早めに売りたい。カツオさんがんばれ、私はあのゴミ箱をがんばって売るから。

よくわからないことを念じていると、お友達がもうすぐ出産だから、というお母さんが、おむつ用ゴミ箱を「これいいねプレゼントしようか!」と話していた。「ぜひ!ぜひ!新品でこの値段はめっちゃお得です!というかこれ、大きいから早く売りたいです!!」とどストレートに言うと、笑いながらお母さんは買ってくれた。なんでも正直に言ってみるものである。

ゴミ箱が売れると、なんとヤクルトは3点を取って逆転していた。私はゴミ箱を売り、ヤクルトは得点をする。人生とはとても、ドラマに満ちている。満ちていますよね。

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無事にバザーを売り切り、お会計をしめ、最後まで待ってくれていた息子と一緒に夜道を帰る。縁日の「クイズ王決定戦」で優勝したらしい息子が、その時のことを事細かに嬉しそうに話してくれる。なんといってもその時私はゴミ箱を売っていたのでさっぱり知らなかったのだが、野球のチームを答える問題が出て、1球団でいいところを12球団全部答えておいたらしい。みんなすごいって言ってたよ!と、息子が言う。今度名前入りメダルをもらえるそうだ。よかったね。

クイズ王話を聞きながら速報を開くと、もちろん9回のマウンドにマクガフが上がっていた。ところがどっこいマクガフは、マウンドに上がって早々えらいピンチを迎えていた。「マクガフさまのストライクが入らない…」と息子に言うと、「大丈夫だよ、マクガフだし。僕も優勝できたし。」とよくわからない自信をのぞかせる。小3というのは、自信や自意識やでも小さな不安や焦りやなんやらが入り混じって、おもしろいのである。

家に帰ったら、むすめとオットがリビングで寝落ちっていた。付けっぱなしのテレビでは、まだマクガフが投げていた。1死二、三塁のどえらいピンチで、マクガフは三振を奪った。バザーで疲れ果てていた身体に、ビールとマクガフの投球が染み入る。そのまま、最後のバッターをショートライナーに打ち取り、ヤクルトは勝った。

「楽しかったね!いい一日だったね!」と息子が言う。ソファに寝ていたむすめが「ままー!かつおさんがね、なんかすごかったよ!てっぱちはほーむらんうったよ!でもむすめちゃんねちゃった!」と言いながら起きてくる。少しの時間だけでも離れていた子どもというのは、なんだかいつもとびきりにかわいい。

今年も夏が始まるな、と、私は思う。夏が一番好きな季節なのだ。ヤクルトの夏も、始まったばかりだ。


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