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阪神ファンと、広島ファンと、ヤクルトファンと、オールスターと。【7/13オールスター戦○】

「お昼くらいに集合してお好み焼き食べに行こうよ。とりあえずお好み焼き」

いつものことだけれども、この人たちとの約束はぎりぎりまでとてもゆるい。「お昼くらい」が何時かもよくわからないし「お好み焼き」のお店がどこにあるかもわからない。近所に住んでいる友達じゃないのだからもう少し計画的にきっちり物事を決めても良いのでは、と思うけれども、もう10年ほどこんな感じでやってきているので今更変えられるわけもない。そのゆるさが心地よいのだろうな、と、なんとなく思う。

「12時くらい?」「それじゃとおなかすくわ(ジュディマリか?)」「じゃあ11時半」前日の夜中に決めた集合時間に合わせて、9時発の新幹線に乗り込む。一人で乗る新幹線は何年ぶりだろう。それだけで嬉しくなってしまう。移動の時間、というのがいつもなんだかとても好きだ。

「駐車場の近くで待ってるわ」と、大阪の友達からLINEが来る。もちろん、「駐車場」がどこにあるかもわからない。新大阪駅は広い。

それでも私たちは、なんだかんだでどこかの駐車場の前に集合した。いつだってなんとかなる。ゆるくても、ゆるい日々でも、例えばゆるい育児でも、なんとかなると思えるようになったのは、たぶんこの人たちのおかげだ。(いや元からゆるかったじゃないかとかはまあ気にしないで)

阪神のユニフォームと、カープのユニフォームと、ヤクルトのユニフォームをカバンに詰めて、私たちは甲子園を目指した。「もうカープ弱すぎじゃ」とゆずこは言う。「何連敗?」とみどりんが言う。「11連敗。」とゆずこが言う。「まだまだ甘い。」と私は言う。

阪神電車には、いろんなチームのユニフォームを着た人が乗っている。「関西巨人魂」という刺繍の入ったユニフォームを着た人もいる。「東京で阪神ファンとして生きるより、関西で巨人ファンとして生きる方が数百倍大変だろうに、えらいね」と私たちは話す。何がどうなってそんな茨の道を歩むことになったのかはわからないけれど、とにかく甲子園でそのユニフォームを纏うことのできる強さに私は感服してしまう。多様性は大事だ、強く生きて欲しい。強いと思うけど。(まあそもそも、巨人自体がめちゃくちゃ強いわけだし・・・)

甲子園にはパラパラと雨が降っていた。奇跡的にとれたチケットはなかなかの良席で、目の前で村上くんがアオダモの木に水をあげていた。アオダモの木に水やりをする村上くん、というのは令和にみたものの中でもなかなかのかわいさを誇るものであった。良いものを見た、と、私はビールを飲んだ。

ホームランダービーで、鈴木誠也が優勝するのを見ながら、ゆずこは「それでいいんよ、それでいいんよ誠也…」とつぶやいている。みんなそれぞれ、それぞれのチームの痛みを抱えているのだ。鈴木誠也さんはこれをきっかけに調子を上げるかもしれないね、と私は言う。もちろんヤクルト戦以外にして欲しいけど。

スガノは今日もにやにやと投球し、近本は先頭打者ホームランを放った。タイガーステンガロンハットをかぶったみどりんは、ちかもとおおおおおお!!!と嬉しそうに言っている。ゆずこと私は、「これ阪神のこわいOBがどっかに見に来てるんじゃない?」と言いながら、特大の拍手を送る。

てっぱちは静かにヒットを放ち(でもいつも高橋周平が三塁で止まり、打点にはならない)、昨日ヒットがなかった村上くんも途中出場でしっかりヒットを放った。今年もヤクルトたちは、こっそりしっかり活躍する。スターたちと一緒にしっかりとそこに立つ姿に、なぜかこちらが緊張しながら、でも少し誇らしいような気持ちになる。何よりそこに、小川さんがいることもうれしい。

オールスターらしく、みんなが打ちまくり、笑いまくり、そして雨に打たれまくった。甲子園の辛口カレーは全く辛くなくて、台湾風まぜそばは辛くて美味しかった。イオンで買ったきゅうりの一本漬けは、甲子園とビールにとても合った。阪神のユニフォームと、カープのユニフォームと、ヤクルトのユニフォームを着た私たちは並んでにこにこ写真をとり、藤川球児の登場曲を熱唱した。甲子園は今日だけの特別な空気に、包まれていた。

つかの間の、お祭りの時間。プロたちが本気で、でも楽しく、ぶつかり合う時間。巨人の選手にもカープの選手にも阪神の選手にも拍手を送る日。つらい日々があるからこそ訪れるその楽しい一日を、今年もたくさん楽しんだ。

隣にいる「ママ友」だった人たちが、いつの間にか「野球友」になっているのを見ながら、野球を好きになってよかったな、と、私はまた思う。



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