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はらじゅりの好投を、過保護に見守りながら 【3/10侍ジャパン メキシコ戦◯】

「はらじゅりがマウンドに立つだけで泣きそうになる」というのは、去年のCSからいつも繰り返してきたことだ。何度も何度も、泣きそうな顔をしながら降り続けたそのマウンドで、いつの間にか、見たこともないようなたくましい表情をするようになっていた。

まっさらなマウンドで、登場曲をバックに、キャッチャーにボールを投げる、その仕草だけで、5年分くらいは泣ける。…と、私は思ったのだけれど、ここで泣くとノーノーされかねないので、ぐっとこらえた。ここで泣くと3失点しかねない。私は全く同じ気持ちでいたCSを思い出しながら吐きそうになっていた。

同時に、どうかどうかみなさまにご迷惑をおかけしないように、わけのわからない失点だけはしないように、押し出し四球とかだけはやめていただけるように、もうそればかり祈っていた。あと、何よりも怪我しないように。

・・・完全に過保護の親である。わるいオトコにつかまっただめオンナというのはそのうち過保護の親になるらしい。(ありがち。)

と、過保護の親になっていたら、じゅりは先頭打者にさっそく3ボールを与えた。去年前半のできごとが走馬灯のように駆け巡る。これはカラシティー召喚か!?いやカラシティーはもういない!!と、一人で混乱していると、じゅりはそのあとを冷静に、しっかりと、抑えていった。

ボールが先行したって、ヒットを1本許したって、崩れることはなかった。泣きそうな顔で、カラシティーにマウンドを譲るようなことは、もうなかった。

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昨シーズン、じゅりがどれだけ好投しても、誰もさっぱり打たなかった。どれだけ好投しても、誰かががエラーした。「運がない」とはらじゅりは言われた。「勝ち運がない」のだと。5回1失点で負け投手にもなれるし、7回1失点だって勝ちがつかなかった。

でもじゅりはめげなかった。黙々と、そこに立ち続けた。いつしか「原のために打ちました」とてっぱちが言い、勝てる投手になった。完封だってやってのけた。

そして今日、日本代表のユニフォームに身を包み、国際舞台で、そのマウンドに立った。

サムライの若いエースたちは、なんと1回裏にグラスラを打ってくれた。(9回じゃないのだ。1回だ。)じゅり先発の日に雄平がワンバンのボール球をヒットにした時以来の衝撃だ。ありがとうございますありがとうございます。と、私はテレビに向かって手を合わせていた。ありがたや・・・ありがたや・・・

2回表、じゅりはそんな打線に応えるように、しっかり三者凡退に打ち取った。

人は、成長してゆけるのだな、と私は思う。失敗したって、一度はマウンドを降りたって、それでも這い上がってゆくことができる。強く、強くなることができる。じゅりを見ながら私は、また思う。

ただし、こちとらじゅりがボール球を投げるだけでしにそうになっていたので、たった2イニングが、軽く7イニングくらいに感じられた。正直、1回が終わった時点で「もうおなかいっぱいです交代させてください…」という気持ちにすらなっていた。完全に過保護である。隣でオットが爆笑していた。(そういうオットだって村上くんの打席は泣きそうな顔になっていた)

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国際舞台で、短期決戦で、あれだけの結果を残せる若い大砲たちを目の前で見て、ヤクルトの若い三人もとても良い刺激を受けただろうなと思う。だって私だってたくさんの学びがあったのだ。

例えばオリックスは12球団一強いとか。

でもその中で、冷静に投げ続けたじゅりと、一日一善のヒットを打ち、まだまだ慣れない一、三塁の守備をしっかりこなした村上くんと、失点はしたけれどもそのあと崩れることなく、まっすぐその舞台で挑んでいったうめちゃんの、若き希望たちに、ほんとうに、ほんとうにおつかれさまと伝えたい。

ここで得た、かけがえのない経験を、これから始まるシーズンと、そしてまだまだこの先長く続いてゆく野球人生の糧にしていけますように。

素敵な試合を、どうもありがとう。


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