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てっぱちが年に一度見せてくれる、その笑顔を【9/4広島戦◯】

盗塁の時にはオーラを消しまくり「まるで幽霊」と言われる背番号1は、今日は9回裏、満塁のチャンスで抜群の存在感を見せつけた。それはもう、スターにしかできない仕事だった。

試合がないこのあいだの月曜日、私はなんとなく、去年てっぱちがサヨナラHRを打った時の動画を延々とリピートしていた。あの時、てっぱちははにかんだような笑顔で拳を突き上げ、ダイヤモンドをゆっくり回った。それはとてもとてもとてもいい笑顔だった。

今年、てっぱちが打っても打っても、勝てない試合が続いた。ダイヤモンドを回るその姿に、いつも笑顔はなかった。いつもいつも、クールな顔をして、ホームランなのにどこか悔しそうな顔をして、てっぱちはそこを回っていた。

打ってもうつむいたまま球場を後にする日が山ほどあった。

ポーカーフェイスといえばそれまでだ。そもそもそのポーカーフェイスが、盗塁の時には「オーラ」までも消してくれる、武器にだってなったのかもしれない。

それでも去年の動画を見ながら私は思った。やっぱりてっぱちに笑っていてほしいな、と。その笑顔が見たいと。去年のあの日みたいに「野球をやっていてよかった」とたくさんたくさん思ってほしい。あまりに多くのものを、期待と、賞賛と、批判も全て背負うその背中が、いつも少しだけ、重たそうだったから。

だけどその全てが今日に繋がったのだとしたら。辛い日々だって、あの試合だって、例えばてっぱちが打てなかった日々だって、うつむいて帰って行った日だって、今日に繋がっていたのだとしたら。やっぱり私は思う、意味のないものなんて、ないんだよな、と。あの日々を乗り越えてきたから、今日があるんだよな、と。

そうだよな、いつもいつも笑っている必要はない。ここぞのところで、年に一回の最高の笑顔を見せてくれたらそれだけでもう、幸せだ。

大事なのはいつだって、どん底から這い上がる力だ。それは、持って生まれた大きすぎるものを背負う人も、そうじゃない人も、同じように。

てっぱちは打てない日も、走り続けた。その積み重ねは、素晴らしい記録に繋がって行った。てっぱちがホームランを打った試合は勝てない、なんていう記事が出たって、それでも打ち続けた。

それは必ずいつか何かに繋がっていくのだ。そう、通算200号となる、サヨナラ満塁ホームランにだって繋がっていく。

てっぱちはみんなが待つホームの手前でヘルメットを高く投げ、とてもいい顔で笑った。それはやっぱり、最高の、別格の、スターだけが持つ笑顔なのだ。

しんどいことだってある。うまくいかない日もある。16連敗もすれば、とんでもないサヨナラ負けを何度もする。チームは断トツの最下位だ。だけど、こんな夢みたいな日も、ある。それは、生きていく上での希望そのものだ。てっぱちは、多くの人たちにそれを見せてくれる。いいことだってちゃんとあるんだよ、と、教えてくれる。

どれだけの人がその1本に救われただろう。どれだけの人がその1本に希望を見出しただろう。てっぱちの仕事は、そういう仕事なのだ。それは、スターの仕事だ。

ありがとう、と、私は今日も思う。つらい毎日にだって素晴らしい瞬間はあることを、教えてくれてありがとう。

てっぱちの笑顔を見て今年もまた、私は涙する。選手一人ひとりの喜びは、私たちファンにとっての喜びそのものなのだ。



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