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「昆虫食陰謀論」とは? ライター雨宮純さんによる解説(その1)

幻の「コオロギ利権」でいじられる日々

SNSで昆虫食批判が盛り上がるにつれ、こんないじりが飛んでくるようになりました。

「昆虫食の安全性をことさら強調したら、ページ100万円もらえる仕事とか来てないんですか?」
「いよっ、ディープ・ステイト(※闇の支配層)協力者のギリコさん」

うっせーわ。昆虫食反対デモを見学していた時も、はじめましてな方々に「で、補助金もらってるんですか?」なんて聞かれました※。お金の話は、老若男女共通の関心事。「コオロギ事業で公金チューチュー」なんて面白表現もさんざん目にして、お金の話はいかに皆の心を結びつけるのかを、実感する日々です。虫の味の話は、非常に限定された人たちの心しか結ばないのに……。格差がすごい(とは言え冒頭のいじりをかましてきた友人らは、虫の味にも理解を示してくれますが)。一応否定しておくと、コオロギ利権で公金チューチューできる幻の特権階級に成り上がった虫食い仲間は、今のところ確認できていません。私個人は、来世に期待します。

※「コオロギ事業の予算に6兆円の税金が使われている」なるデマが拡散され、ファクトチェック記事までが登場した。

トークイベント「徹底トーク! 昆虫食陰謀論」が開催された

前回のnoteで「今のコオロギ食騒動には、批判の中に陰謀論が混ざり合っている」と書きました。しかし、そもそも「昆虫食陰謀論」とは? 今のコオロギ食騒動の特に怪しげな部分にスポットを当て、状況を整理するために4月16日にネイキッドロフト横浜で開催されたのが「徹底トーク!昆虫食陰謀論⁉」です(現在は配信も終了)。登壇者は、オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家として大活躍中のライター雨宮純さん(著書『あなたを陰謀論者にする言葉』フォレスト2545新書) 。NPO法人食用昆虫科学研究会理事の吉田誠さん(著書『昆虫食のデマとリアル 燃え上がるコオロギ)。そして私、昆虫食愛好家のムシモアゼルギリコの3名です。今回のnoteでは、同イベントで雨宮さんが解説くださった内容を記録していきます。

「陰謀論」の定義

まずはじめに、陰謀論とは何か。定義は難しいものの『陰謀論入門: 誰が、なぜ信じるのか? 』(ジョゼフ・E・ユージンスキ著)がわかりやすいと、雨宮さん。

●ある出来事や状況の主な原因として「陰謀」をあげること。
●権威による公式見解がある場合は、それと矛盾するもの。
(適切な調査が行われていない状況で「陰謀」を持ち出す場合も含む)

「誰かが何かの意図をもって、裏工作をしてるという考え方。情報がまだ明らかになっていない状態で、『〜に違いない』と考えることも陰謀論のひとつ」なのだとか。ただし「ウォーターゲート事件」のように、「ガチ陰謀」は除く(=陰謀論と言わない)。

「確かな証拠がない状態で言っちゃう人って結構いるけど、証拠がないのに言っちゃったら『それ陰謀っぽいよね?』って話になってしまう」(雨宮さん)。

有名な「アポロ計画陰謀論」を例に出しての説明も、とても分かりやすいものでした。

●アポロ計画の月面着陸は実は嘘で、どこかのスタジオで撮影している。
●NASAの陰謀で、アメリカ政府のプロバガンダである。
●そもそも地球は球体ではなく平面であり、宇宙は存在しない。宇宙ビジネスをしたい権力者が、「地球は丸い」という根拠を捏造していて…以下略。               

すべて証拠がなく、公式見解と異なる=陰謀論

あ~わかる。わかりやすい。「コオロギは漢方では毒に分類されてると聞いたが、食べて大丈夫なのか」は健康不安の域だけど、「コオロギは妊婦に禁忌。だからコオロギ食のゴリ押しは人口削減させる計画が裏にある」となると、根拠なく想像で言っているので陰謀論になってしまうということです。

どこからが「昆虫食陰謀論」となるか?

「コオロギはプリン体が多い」「昆虫を食べるとアレルギーを引き起こす」。正確な表現ではないものの、Twitterで拡散されたこのあたりの情報は嘘とは言い切れない事実ですから、陰謀論に非ず。雨宮さん曰く、そこから「誰かが何かの目的のため、強制的に食わせようとしている」と言った瞬間に、陰謀論となると。「コオロギに利権があるから国民に食べさせようと、政府が補助金をばらまいている」も当然、昆虫食陰謀論の領域です(爬虫類人間なと、地球の外の話に言っちゃっているヤツは言わずもがなです)。

「コオロギを食べたくないというだけなのに陰謀論とレッテル張りするな」
そんなご意見もあるでしょう。ごもっともなのですが……声高に「誰かがコオロギ食を押し付けている」といえば、陰謀論がコンタミしています。また、そうした意見の拡散に便乗することも同様。SNSの「いいね」やシェアは気軽に行われる場合が多いものの、それが極端な思想(=陰謀論)の呼び水となるのもよくある現象でしょう。食べたくないというシンプルな気持ちが、陰謀論と合流しているケースも、今回非常に多そうです。

次回は「コオロギ陰謀論が発生した流れ」に続きます。


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