見出し画像

film

Lyrics

澱みきった川を渡り 辿り着くはずの岸は遥か遠く
もがくより力抜いて 流される方がラクかな
生きることに執着し 終着点はまだわからない

どこでも どこへも 行けるようで
どこへも どこにも 行けなかった

星すら見えない冷たい夜に溶ける命 今
光失い 振り返ることもなく 朝の来ない道を選んで

あなたの手で巻き上げたフィルム
記憶の箱へと捨てていって 忘れていいよと笑いながら
いつかは私もそこに行くの 辿り着くはずの岸は同じ 旅路の途中と笑いながら 泣いた

澄み渡った川を眺め 向こう岸ひとりで歩くあなた思う 
境界線指で撫でて そっちに行けるかな
定められたリミット 解放されたしなやかな手

どこでも どこへも 繋ぎ合って
どこでも どこへも 連れて行って

虫すら鳴かない 優しい夜に宿る命 今
光見つけて 目覚める時を静かに待つ
安らかな眠りを妨げぬように

(夢見た未来は今ある朝を届け消えていく また 幕を下すために)

私の眼で映し出すフィルム 
記憶の箱から探し取って 思い出すからと笑いながら
いつかはあなたのそばに行くの 辿り着くはずの岸は同じ 旅路の終わりと笑いながら 会いたい

かき集めたフィルム眺め 神様のお気に入りとあなたが笑う


ライナーノーツ by yumi

今まで書いてきた曲の中で、対象が特定の誰かに向けて書いた曲というのは初めて。

テーマやモデルになるものはあっても、聴く人に解釈の幅を持たせられるようにしたいので、特定の「あなた」に向けて曲を書くというのをあえて避けてきたのかも。

でもfilmは、あの子と私のための歌。

この曲を書いていた時期はどんな歌詞を思い浮かべようとしても、彼女のことばかり。
彼女は彼女なりのリミットを迎えた。人それぞれに与えられたリミットの長さは違って、その中を彼女は精一杯生きたんじゃないかな、と友人に言われて、少しずつ受け入れていくことが出来た。それでももう少し一緒にいたかったけれど。

その頃から、「境界線」や「それぞれの世界」というものをずっと考えている。
境界線なんてすごく曖昧で、指でさっと消したらすぐにでも彼女の元に行けるような気がしてならない。

filmという曲名はnobuくんがdemoをあげてきた時にすでについていた仮題。
幕を下ろすというのは、人生の幕を下ろすなど「終える」事として表現される、という事。また、シャッター幕を下ろすという意味では彼女がいた瞬間をフィルムに焼きつける事とも捉え、この曲は仮題のままのfilmがぴったりだと思ったので、そのまま曲名にした。

本編では削った
「夢見た未来は今ある朝を届け 消えていく また幕を降ろすために」
という歌詞には、幕を下ろしfilmに記憶を刻んでまた新しい命の幕開けを迎えるといった思いを込めた。

彼女のお母様は、私にこう伝えてくれた。
「あの子が生まれた時、自分から産まれた子というよりは、神様から授かった子、という気がずっとしてたんです。だからいつかまた神様にお返ししなきゃいけない時が来るんじゃないかって思っていたんです。その時が来たんですね。あの子は今神様のお気に入りで、神様の身の回りのお手伝いをしながらたくさん可愛がってもらっていると思います。」

この曲を何度も何度も私は歌い続ける。
一足先に川を渡った彼女とまたいつか会える日まで。

ライナーノーツ by nobu

変化に順応することだけではなく
不変であること 忘れてはいけないことの大切さを信じたい
そんな想いでこの曲をつくりました。

時間は絶対的に不可逆で
齢を重ねることによって 置かれる立場や周りも変わっていくなかで
諦めないといけないこと 捨てないといけないもの
変化や判断の量に辟易している時期がありました。

境界線をひいて あっち側とこっち側を選択する 割り切っていく
生きていると どうにか決断をしないことがある中で
変えてはいけないもの 変化の中での不変の部分を守ること
自分に嘘をつかず 流されない
そんな判断基準があってよいと気づきました。

2021年にkleeは結成して10周年となりました
音楽を続けていきたい kleeでもっとやりたいことがある
続けてきたことを また繋げて続けていく
この曲を作る過程でその想いがさらに強くなりました。

この曲をきいてくれた方が抱える 変化への迷い 続けていく不安を
それらを解決するまではできないと思うけれど
昔の写真を見返すように
ふと   視点を変えて過去に想いをはせる 
その各場面のBGMにしていただければうれしいです。

繰り返し聞いてほしい1曲です。

Music Video


Sound

Illustrated

illustrated by yuu yamada


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?