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【今日の一曲】〇と△の歌

今日の一曲は「〇と△の歌」です。

羽仁進監督による映画「不良少年」(1961)中に登場するこの歌は武満徹の作詞作曲です。映画のラスト20分ほどで曲の冒頭がほんの少し紹介されるだけなのですが、その後、作曲者本人によって合唱作品化され、ソロで演奏できる楽譜(SONGS)が登場したこともあり、クラシックの演奏会等でも扱われる作品となりました。

映画の内容は、主人公浅井が強盗をはたらき、特別少年院に入所してから退所するまでが、1時間30分で描かれます。強い人についていく者、部屋でひそやかにタバコをつくり吸う者、気にくわない人がいるとケンカをする者、少年院内のそうした様子は画面への集中を誘い、僕も見始めてから注意が散漫することなく見終わりました。そのほとんどがショッキングなものなのですが、「嘘の無さ」のようなものを映像に感じたからこそ、ずっと画面に集中できたのではないかと思います。それもこの「不良少年」が羽仁進監督の代表作の1つとなっている理由かもしれませんが、演出として、無名な、本当の不良少年たちを集め、映像の中で自身を演じるという手法を採用しており、この斬新な演出は当時の注目を集めました。


「~バカヤロー!」という言葉が作中に何度も出てくるなど、使用されている言葉の荒さもそうですが、その語り口もリアルで、そうしたタッチの中で「〇と△の歌」は浮くことなく聴こえてきます。「地球ハマルイゼ 林檎ハアカイゼ 砂漠ハヒロイゼ ピラミッドハ三角ダゼ」という、漢字とカタカナを用いた表現には、この映画の質感が反映されているように思います。

この曲を演奏会などで聴くと、その旋律の明るさや、演奏される楽器の音色の美しさ、揚々としたリズムなどによって印象が形成されていきますが、そこにこの映画の存在が加わることで、この作品の鑑賞にさらなる広がりや深まりが得られることを期待しています。つまるところ、そこにこそ、演奏としての表現可能性もあるように思います。

今日、私たちが作品と向き合うとき、必ずしも当時のテイストの再現的立場を支持する必要はありませんが、それらを知ったうえで、いかに今日演奏する理由を考えていくのか、「良い曲だから」という理由でも良いのですが、「自分だったらばこう演奏したい」という意図をもってこそ、今日演奏する価値を確認できるようにも思います。


「〇と△の歌」を聴いて、コメントを書く。

実際に授業で見た動画とともに、学生のコメントをシェアします。
学生のコメントについては、ハンドルネームとともに記載します。

この記事をお読みくださっている方も、動画の演奏を否定することなく、演奏家(声楽家、ピアニスト)の表現から楽譜の読みや、演奏に活かせるところを一緒に発見してくれると嬉しいです。
発見くださったものやご感想は、気軽にコメントに残していただけると、一緒に学ぶことができるのでとても嬉しいです。
※不適切な内容と判断するものについては、削除等させていただきます。



まず詩をみたときにひらがなではなくカタカナが使われていたことに、注目した。音楽を聞かずにカタカナの詩をみると記号のような、おもちゃのような詩に感じた。
空ハ青イまでは3連符が多用され、伴奏もスタッカートが使われていて、「地球ハ」と「マルイゼ」の間に休符があることで、明るく弾んだような音楽である。喋るように歌いたいと感じた。
空ハ青イからは3連符の音楽ではなく、音符が長く伸ばす、前半とは違う流れのある音楽になっている。1拍目に「イ」を置いている特徴があるのが、地球ハマルイの歌詞だけ音楽が「る」を1拍目にして二分音符ととても大きな丸が予想されるような音楽である。流れを意識して歌いたい。
また後半の「地球ハマルイ」からは3連符があり前半に戻ったようになるが、文節の間の休符は無くなったことで、最後はfで音が上がっていくこともあり、前半よりも大きく歌いたい。
最後の「バラライカハ三角ダゼ」は「ゼ」を伸ばしても面白いが、歌いきるような宣言する歌い方も面白いと思った。
歌い方や伴奏によってはオシャレな雰囲気にもあり、弾んだような明るい雰囲気にもなる曲だと思った。
by ふわみん

語尾に「〜ゼ」とある詩の部分からは、「俺はこんな事を知っているんだぜ」と自慢げに話している姿が想像できる。そのため、伴奏部分にはスタッカートが付いていて、意気揚々と語る態度を表しているのではないかと感じる。歌でも、楽譜にはないスタッカートで歌っている方もいて、胸を張って喋っているかのようだった。この曲では、「〜ゼ」という部分が印象的なため、自分が演奏する機会があれば、この曲が使われた映画『不良少年』を表現するためにも、少年が自慢げに語っているかのように演奏したいと思う。
by ダンスゴリラ

軽快に歌っていたことで、映画の内容とは裏腹に明るく屈託のない笑顔が脳裏に浮かんだ。『不良少年』を最後まで見ていないので結末がどうなるのか知らないが、最後は社会に戻り真っ当な人間になって暮らしているのではないかと思わせる曲であった。
by ちゃま

・歌詞が青い、深いとかは漢字なのにマルイ、アカイ、ヒロイはカタカナなのが不思議
・伴奏が割とメロディーを弾いてる
・装飾音符が多い→ありきたりな和音を減らすため??
・3文字の歌詞を3連符で2つの音になってるから、最初の文字?音がスタッカートみたいに聞こえた→演奏者の意図か作曲者の意図かはわかんない
・伴奏の1拍目の音がその小節の中の1番低い音なのが多い!
・転調は黒鍵が増えるイメージだけどむしろ減ってる
・あまりクラシックぽくない、個人的にはジャズっぽく感じた、お酒のCMとかの曲っぽい
・この楽譜の強弱記号にメゾフォルテとフォルテしかなく、ピアノがないから比較的静かでは無い曲なのかと思った
語尾が〜ゼなのはあまりパッとした理由が出てこないけど、ひらがなにしなかったのは、がっつり日本の合唱曲、日本の歌みたいにしたくなかったからなのかなと思った
by 玄米茶

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