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新・オーディオ入門52 パワーアンプ編 パワーアンプの選択

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

パワーアンプの選択において最も重要視するべきは、どのようなスピーカーシステムを使用するかということです。 まずはスピーカーシステムを決め、その上でそのスピーカーシステムとスピーカーが置かれた環境に最適なパワーアンプを選択する・・・という順番が理想です。

例えば、最新の中型トールボーイスピーカーを12畳ほどの部屋で再生するのであれば、50~100wの半導体パワーアンプをお勧めします。

同じ12畳の部屋でもアルテックA5やA7のようなスピーカーであれば、3~10wの真空管アンプが良いでしょう。 3極管を使用したシングルアンプであれば言うことありません。

古いスピーカーでもJBL LE8Tのようなスピーカーであれば、ビーム管や5極管のプッシュプルで10~30wくらいのものがおすすめです。

口径10cm位の新しいフルレンジスピーカーであれば、デジタルアンプというのも面白い選択です。

これらは音質上の相性もさることながら、スピーカーをドライブする最適な電力をパワーアンプの動作点に合わせた結果です。 『最新の中型のトールボーイ型スピーカー12畳ほどの部屋で再生する場合の50~100wの半導体パワーアンプ』では、最新のダイナミックレンジの大きな音源を比較的大音量で聴くという想定をしました。 その場合、瞬発力のある大パワーのパワーアンプが必要になります。これは半導体アンプの得意分野です。

『アルテックA5やA7に3~10w3極管シングルアンプ』では、能率が高いアルテックA5やA7に必要なパワーは1w以下です。 しかし、能率が高いということは微小なパワーの領域においての再生が耳につくことになりますので歪が少なくなくてはいけません。 3極管シングルアンプは回路がシンプルでこういった再生には長けています。 しかし、周波数特性は狭く、立ち上がり特性も悪いため現代的な音源の再生には不向きです。 アルテックA5やA7を選ぶということは1960年代までの古い音源がお好きな方と想像できますのでこの組み合わせで問題はおきないのではないか・・・と考えます。 このような場合最もいけないのは80~90年代のの大出力アンプとの組み合わせです。スピーカーが劣化する危険性があります。