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フォーカルジストニアがよくなるには?

この記事は『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』の補足、深堀りです。

フォーカルジストニアの改善

ジストニアは不治の病なのか?

音楽家のフォーカルジストニアは、よくならない病気、音楽家人生を奪ってしまう病と言われてきました。これまで多くの演奏者が、練習不足と考えて練習量を増やしたり、動きを矯正しようとムキになって取り組んだりして、症状を悪化させてきました。演奏を諦めたり、日常生活で不自由になった方もいます。

しかし、音楽家のジストニアは、全身や躯幹に起こるジストニアや他の進行性の筋肉系の病気とは違います。
音楽家のジストニアは、演奏と無関係には起こりません。他の書痙や画家、理美容師など起こる動作特異性ジストニアも同じで、その人にとってプレッシャーのかかる動作に、症状が表れます。つまり、原因不明の脳の病気に突然襲われたのではありません。

ジストニアになっても、調子がいい日があったり、演奏しないでいると症状が軽くなる人もいます。『体験集2 リハビリ&手術症例リスト』のように、改善して以前より弾けるようになった方もいます。

ジストニアの改善とは

フォーカルジストニアは、その人の大事な動きの神経回路が影響を受け、演奏での動きを妨げられます。トリガーとなる動作によって、神経回路から筋肉に誤った命令が伝わります。だから、症状がある手や筋肉が悪いわけではありません。
そのため、音楽家のジストニアの改善に必要なことは、脳の神経系が、脳が癒えることです。

人間の体には脳を含めて、癒える力があります。音大受験に合格したり卒業するなど、安心できる状況になることも、改善に向かいます。
環境がいい方へ変わったり、ときには薬の力を借りたり、指導者や医師などの助けがあったり、何かきっかけがあって改善することもあります。
脳が癒えるとは、その人自体が癒やされることです。

ジストニアがよくなるために

休む

ジストニアになる、満足に演奏できないことで、精神状態が悪くなり、考えが悲観的になってしまいます。不安や恐れは、ジストニアを悪化させてしまいます。思い詰めると、抑うつ状態になりかねません。

のんびりしましょう。がんばらないでいてください。安心することが大切です。
ジストニアに限らず音楽家の故障は、立ち止まるよう警告していると捉えてください。本にも書きましたが、腱鞘炎などの痛みやスランプも、気づかない力みがあるか、何かしら負担があるという体からの警告です。いずれにしても、がんばりすぎや弾きづらい状況であることを、体が伝えてくれています。
なので、症状部位だけでなく、体を休めてのんびりしてください。
夜、早めに寝たり、がんばらなきゃいけないことや緊張することを避けたりして、体をいたわってください。

離れる

練習曲や選曲を変えてみたり、楽器から離れたりして、気分を変えてください。練習法、奏法、環境、考え方を見直し、これまでと違う方向に目を向けてみてください。

故障は、自分をリセットするチャンスです。
運動したり、自然、本、旅行、他のジャンルの音楽に目を向けるなどして、リフレッシュするといいです。病院や整体に通って疾患に目を向けるより、改善しやすくなります。

自分を思いやる

何らかをがんばりすぎたり、自分でもわからない心理的な傷が脳にあるゆえに、脳で演奏の神経回路に影響がおよび、ジストニアになってしまったのです。
自覚できない負担や傷みがあり、脳に異常が起きたことを理解し、自分を思いやってください。自分をいたわってあげてください。
「がんばらなくてはいけない」と自分を追い込まないで、自分にやさしい気持ちを向けてください。

自分を受け入れる(自己受容)

ジストニアの症状によりショックを受けている上に、満足に演奏できない自分なんて価値がない、ダメだと、自分を卑下してしまいます。あなた自身が自分を責めないでください。

十分な演奏ができなくても、あなたは価値ある人で大事な存在です。病気の人や障害のある人の尊厳が認められなければならないように、たとえ、演奏ができなくても、自分の価値を認めてください。
ありのままの自分を受け入れ、音楽の成績如何に関わらず、自分の人としての尊厳を認めてください。自己肯定とは、人に認められることではなく、自分を大切な人だと考えられることです。

脳が癒えると実力アップ

楽しく演奏するとき、脳の神経可塑的な変化が起こります。つまり、執着してがむしゃらに取り組むよりも、リラックスした練習のほうが神経回路はつながりやすく、新しい動きを身に付けます。

条件が整うと、体は全部がいい方向へ向かいます。脳が癒えて神経回路がつながりやすくなると、演奏の実力は上がります。思考、感性、動き、健康、あらゆる面で向上するはずです。

病気や困難は、その時は大変辛いですが、自分をより自分にとって好ましい方へ導いてくれます。「体験集1」のシューマンや金子さんのように、故障がきっかけで、新たな才能に目覚めたり、人として、音楽家として、大きく成長することができます。

新堂浩子HP;https://www.music-body.com/

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