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フォーカルジストニア、治療法の選び方

この記事は本『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』の補足、深堀りです。

リハビリ、手術については『主な治療法とその利点欠点』
・他『ジストニア改善に用いられる身体技法や療法』

精神的負担を減らそう

メンタルが悪化

フォーカルジストニアの治療は、本人の精神的負担をできるだけ大きくしないことが大切です。
音楽家がジストニアになると、演奏部位をコントロールできず大きなショックを受けます。自分の動きや演奏に失望し、音楽家としてのプライドが傷つきます。満足に演奏できないことが大きな恐怖や恥となり、精神面が悪化してしまいます。
治療のために、さらなる精神的負担をかけないことが望ましいです。

不安や怖れが大きくなる

今、世の中は情報過多です。音楽家のジストニアは進行して弾けなくなる、演奏を辞めなくてはならないなどの情報によって、不安や恐れを抱いてしまいます。
不安や恐れは、ジストニアに限らず病状を悪化させてしまいます。さらには、治療法の選択を間違ってしまったらどうしよう、という恐れも出てきます。思考や感情が悪い中、自分にふさわしい判断ができずに治療法を選んでしまいます。

執着してしまう

リハビリに取り組み続けたり、レフティーで弾けるようにひたすらがんばる人もいるでしょう。長期間がんばったり、うまくいかなかったりすると、精神的負担となります。多くの場合、人は自分の精神的負担に気づきません。
右利きの人がレフティーで弾けるようになるには、健全な方の手も学習し直さなければなりません。かなりの時間と忍耐力が必要となります。

特に、ジストニアになる前に熱心に練習されていた方は、リハビリにも熱心に取り組みがちです。熱心にがんばることが、精神的負担を長引かせ、脳を癒やさず逆効果になりえます。

自分の意思で選択しよう

自分に合うのはどんな方法か?

治療法を選ぶとき、自分の意思で選択することが大事です。例えば、癌になった人が、手術する、しない、抗癌剤治療、放射線療法など、選択肢があって、選ぶ権利は患者自身にあります。

ジストニアの場合も、手術しかないわけでも、リハビリをしないといけないわけでも、レフティーになるしかないわけでもありません。どの方法も長所と短所があります。(『ジストニア、主な治療法の利点・欠点』)人がやっている方法だから、自分もそれをやると考えてしまうかもしれません。

知識がある人、権威ある人が勧める方法だからと、鵜呑みにしてしまう人もいます。誰かが自分の病気をなおしてくれると他力本願でいると、自分の体や神経系が、癒える力を発揮しません。
時には、自分のアドバイスに従うようプレッシャーを感じることもあるかもしれません。自分の体、治療のための決定権はその人自身にあります。治療は、本人の負担を大きくしない、力を与えるものであるべきと思います。

ときには、親しい人からある方法を勧められたり、自分が選んだ方法を反対されたりすることもあるでしょう。あなたのためを思って助言してくれるがゆえに、断りづらくなります。
親身にアドバイスしてくれることに感謝を伝え、自分の考えを尊重してください。本当にあなたのことを思っているのであれば、たとえ、アドバイスを受け入れなかったとしても応援し続けてくれるはずです。

どの方法が自分にいいか、選ぶのはあくまでご本人です。それが、演奏をしにくくしているものを、効果的に解消します。
今の時代、素人でも調べて考えることはできます。自分に合いそうな方法、自分らしい選択をしてください。自分にとって大事なことは、本人にしかわかりません。

落ち着いて選ぶ

フォーカルジストニアは、人によって症状、原因が違います。効果の出方、改善しやすさも違います。どの方法が自分の治癒力を高めるのか、自分に一番向いていて脳の神経系が癒えそうか、自分自身が決めることは大切です。

まずは一旦、休みをとって楽器や音楽から離れることをおすすめします。しっかり休んで心身ともリラックスすると、頭がスッキリします。不安や恐れが減って自分らしい思考ができ、自分に合う方法がわかります。前回書いた身体技法で体に目を向けることも、落ち着きやすくなります。
あなた自身がきちんと考え、前向きな気持ちで取り組める方法を選んでください。

手術は納得して受ける

定位脳手術は、うまくいけば効果は早くジストニア症状が改善します。しかし、合併症のリスクが小さくありません。
術後に体や演奏部位を動かせなくなった場合、ショックは計り知れないほど大きいです。覚悟していなければ、術後のリハビリも大変な苦痛となります。合併症やリハビリによって、さらなる精神的ダメージを負いかねません。

他の改善策に納得がいかない、合併症のリスクを承知の上で、手術を選ぶのであれば、その人にとっては最良の選択となります。術後にリハビリが必要でもそれほど苦にならならないでしょう。
術後後遺症がある方でも、秤にかけて演奏できるようになったことをよかったと考えられるようです。選択と結果に対する満足度を決めるのは、当人です。『体験集2 手術症例リスト』

新堂浩子HP;https://www.music-body.com/
『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』
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