名曲402 「Truth」【加藤紀子】

ーー元気の出る名曲はマイナーなほど大事な気持ちが高まるーー

【Truth】

 人は時々信じられないほど落ち込むことがある。それはほとんどが突然だ。その心理状態になると、大抵のことでは這い上がれない。だが、もし立ち直るきっかけがそこにあったらどうだろう。音楽だとしたら。

 加藤紀子はいま、あまり知名度が高くなさそうだ。私もこの曲を知るまではまったく知らなかったのだが、よーく見てみるとかなりの美人さんなのである。といっても容姿はほとんど気にしないので肝心の曲なわけだが、これがまたびっくりするほどいいのだ。

 「Truth」は5枚目のシングル。1995年に発売された。作曲はなんとシャ乱Qのはたけ。作詞はお嫁サンバで有名な三浦徳子だ。なかなかの大物が携わっている。

{誰のためでもなくて 自分のためだから 明日の私を誰かがきっと見つめている 世界中で…}

 加藤紀子自身の張りのある声がきれいにマッチする。穏やかでストーリー性のあるサビがいい。

{愛し続けてみよう ちっぽけなことから あやまちなどおそれないで 現在を力にして 誰のためでもなくて 自分のためだから 生まれ変わる時がふいにやって来ること… 今感じてるよ}

 正直、歌詞はかなりふわふわした綺麗ごとといっていいが、一貫してこの感じで通しているので逆に芯があるようにも思えてしまう。不思議なマジックである。

 ズバリこの曲の優れているところはメロディーだ。私は本当に落ち込んでいたときにこの曲を耳にした。すると、歌詞が頭に入らずともきれいなメロディーに心が洗われていったのである。そんな傷心状態に「愛し続けてみよう」や「誰のためでもなくて自分のためだから」といったわかりやすい歌詞がスッと胸に入っていった。風邪をひいているときのお粥のようである。元気なときに聴いていたら、また違う感想を抱いたに違いない。

 さて、ちょっと調べてみたのだがうーむ、やはり加藤紀子はバラエティーにも出ている芸能人だったようだ。90年代を代表するバラエティー番組、マジカル頭脳パワーにも出演していた。つまり30代以上は知っている人が多いのではないか。

 現在は48歳になる加藤紀子。90年代は歌手としてシングル曲を出してきたが、大成まではしなかった。それでも心に残る名曲を生み出しているので、このまま過小評価では惜しい。きっと私以外の人も刺さるはずだ。

       【今日の名歌詞】

なし


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