名曲309 「月に帰る」【スピッツ】

ーーアルペジオがたまらない初期の名作ーー

 またスピッツかよとお思いの方、許してやってくれ、私はスピッツ信者なんだ。今回は初期の名曲を。ファーストアルバムに収録されている「月に帰る」だ。

 初期のスピッツはかなり歌詞が難解である。それゆえにあまり評価はされていないが、それだけ世界観を想像する価値?はあるもので、これがすんなりわかった方は創作の才能がある。ちなみに私が推したい難解歌詞曲は「テレビ」。中学生の頃は必死にストーリーを脳内で描いたものだった。

{真赤な月が呼ぶ 僕が生まれたところさ どこだろう 黄色い月が呼ぶ 君が生まれたところさ 湿った木箱の中で}

 作詞はいつも通り草野マサムネ。しかし作曲は三輪徹也である。これは珍しい。え?わかんない?ギター持ってるグラサンかけた見た目ヤバそうなやつですよ。噂だとアルペジオを弾きたいからこの曲を作ったとかなんとか。出だしがいきなり神イントロだ。

{めぐり逢えたみたいだね 今日の日 愉快に過ぎていく もうさよならだよ 君のことは忘れない}

 じわりとサビに繋がっていく。曲調はほとんど変わらない。だがそれが神々しさを増しているかのよう。それだけ元々のメロディーがいいのだ。サビの草野マサムネの高音もいい。ラーンラララ……

{真赤な月が呼ぶ 誰も知らない遠くで 光っている 黄色い月が呼ぶ 誰も知らない遠くで ほどけた 裸の糸で}

「月に帰る」は短い曲だ。詞の内容も比較的シンプル。しかし細部にこだわって考察してみると、これが意外に難解。体感的に20行分をひとつのワードに詰め込んでいる気がする。

{めぐり逢えたみたいだね 今日の日 綺麗に過ぎていく もうさよならだよ 君のことは忘れない}

 絶対に最後まで聞いてほしいアウトロ。三輪ファンはたまらないはず。このアウトロに気持ちを込めたかのように、延々とメロディーが流れていく。メンバーもそれをきっとわかってくれているのだろう。ちなみにスピッツでこれだけアウトロが長い曲はあまりない。まさに月のような美しさだからこそ、長く感じられないのだ。

 いろいろな要素でこの曲を初期の名曲と評する人は多い。私も同意見だ。ちょっと拗らせると逆張りになる人もいるが、いいものはいいと言おう。……なんだっけこの映画。妻夫木聡が頭に浮かんだ。

       【今日の名歌詞】

真赤な月が呼ぶ 僕が生まれたところさ どこだろう 黄色い月が呼ぶ 君が生まれたところさ 湿った木箱の中で


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