名曲203 「誰がために」【成田賢/こおろぎ’73】[サイボーグ009]

ーーかっこいいとは、こういう曲さーー

 サイボーグ009は石ノ森章太郎原作の名作アニメだ。漫画も有名で、読んだことがある方も多いだろう。私もがっつりではないが目を通した。引き込まれる構成とダイナミックなコマ使いで迫力満点。なかなか楽しめた。

 今回は第2期の主題歌を紹介。これはここ最近で知った曲なのだが、私個人の中では大ヒットになった。凄まじい完成度を誇る。曲も歌詞も歌い手も、ひれ伏すレベルなのだ。近年知ったアニソン界では1位になるだろうか。

 歌うは成田賢。こおろぎ’73も昭和アニメのおなじみ神コーラスグループだ。どちらも素晴らしいが、やはり成田賢の声質である。これほど渋くて魅力的な歌声はちょっと見当たらない。声優としても大成していたのではないか。

{吹きすさぶ風が よく似合う 九人の戦鬼と ひとのいう}

 強烈なイントロに「うっ!うっ!」と野太い男らしい声が最高のマッチングだ。そして歌詞がまた見事。吹きすさぶ、戦鬼。この日本語のチョイスよ。作詞は石ノ森章太郎なのだが、俳人のような気品の高さがある。

{だが我々は 愛のため 戦い忘れた ひとのため 涙で渡る 血の大河 夢みて走る 死の荒野}

 そう、この短い日本語の中に浮かび上がる戦いの情景がいいのだ。血の大河、死の荒野。ハイレベルな韻の踏み方をしているではないか。

{サイボーグ戦士 誰がために戦う サイボーグ戦士 誰がために戦う}

 「誰がために」は「たがために」と読む。これはミスチルのタガタメでお馴染みの方も多いだろう。ともあれ、誰がために戦うのかというシリアスな要素も含まれており、哀愁もほんのりある。

 作曲はあの平尾昌晃。詞は100点として、曲も100点近い完成度。サビは思わずマイクで熱唱してしまう。

{葬いの鐘が よく似合う 地獄の使者と ひとのいう}

 2番もかっこいい。弔いではなく葬いと表現しているのが、より「死」と巡り合わせであるのをアピールしているようだ。

{だが我々は 愛のため 戦い忘れた ひとのため 闇追い払う ときの鐘 明日の夜明けを 告げる鐘}

 2番は鐘が出てくる。闇追い払うの字足がぴったりで気持ちいい。

 改めて書くが、これは本当にアニソン界1位級。とんでもない完成度を誇るのに、古い曲調だからかレジェンド扱いされていないのが惜しい。私が神ならひとまずこの曲を教科書に載せたい。何らかのCM曲に採用させたい。そんなちっぽけなお願いをしているのはまさに誰がために、か。

          【今日の名歌詞】

吹きすさぶ風が よく似合う 九人の戦鬼と ひとのいう だが我々は 愛のため 戦い忘れた ひとのため 涙で渡る 血の大河 夢みて走る 死の荒野

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