名曲307 「月のしずく」【RUI】

ーーしっとりと嚙みしめたくなる。月の神秘さを胸に秘めてーー

【月のしずく 柴咲コウ】

 柴咲コウは役者としても有名だ。今回はRUI名義で発表された名曲を紹介。20代以上はしっくりくると思う……とはいかなかった。20代前半で知らない人がいたので、過信はよくない。

 「月のしずく」は映画主題歌である。『黄泉がえり』で草彅剛の演技が印象的だった。幸薄そうな人柄を演じさせるのはうまい。竹内結子。ああ、なぜ自殺してしまったのか。当時は常にCMが流れていたし、この曲も相当耳にしたものである。

{言ノ葉は 月のしずくの恋文(しらべ) 哀しみは 泡沫(うたかた)の夢幻(むげん)}

 言葉回しが古文チックで人によってはぶっ刺さるのではないだろうか。

{匂艶(にじいろ)は 愛をささやく吐息 戦災う声は 蝉時雨(せみしぐれ)の風 時間の果てで 冷めゆく愛の温度(ぬくもり) 過ぎし儚き 思い出を照らしてゆく}

 映画の世界観もあるだろう。絶妙なシリアスが心地よい。

{「逢いたい…」と思う気持ちは そっと 今、願いになる 哀しみを月のしずくが 今日もまた濡らしてゆく 下弦の月が 浮かぶ 鏡のような水面(みなも)}

 至高のサビ。もうこれ以上の伸びやかなメロディーはなかなかないだろう。個人的には「濡らしてゆく」の高音がたまらない。

{世に咲き誇った 万葉の花は移りにけりな 哀しみで人の心を 染めゆく}

 2番をテンポアップさせて短縮させているのも構成としてよし。1番と同じでは冗長だ。あのサビを披露してしまったら、一刻も早く次の弾を打たなくてはならない。

{「恋しい…」と詠む言ノ葉は そっと 今、天つ彼方 哀しみを月のしずくが 今日もまた濡らしてゆく}

{「逢いたい…」と思う気持ちは そっと 今、願いになる 哀しみを月のしずくが 今日もまた濡らしてゆく 下弦の月が 謡う 永遠に続く愛を…}

 絶頂に達して曲が終わっていく。こういったバラードはしっとりと余韻を残すことが多いが、それをあっさりとピアノで流していく演出がいい。アウトロが延々と続いていた場合(NONAとかはそうしそう)はやや感動が薄れてしまう。

 柴咲コウは当時かなり好きだった。一時期より見なくなった気がするが、私が最近のテレビを見なくなったのもあるかもしれない。歌声は本物。役者としても、歌手としても一流の人はそうそう生まれない。貴重な存在だ。

       【今日の名歌詞】

言ノ葉は 月のしずくの恋文(しらべ)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?