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名曲198 「川べりの家」【松崎ナオ】

ーー神番組の裏に神主題歌ありーー

【松崎ナオ - 川べりの家 (Official Music Video)】

 ドキュメント72時間というNHKの神番組をご存じだろうか。これは私、小学生のときに出会いたかったと思っている番組で、大学生のときにドハマりした。毎回録画で見ていたもので、そんじょそこらの小説より人生経験が深まるいい番組であった。ん、まだやっているか。

 私がドキュメント72時間を溺愛していた時期に流れていたテーマソングがこちら。川べりの家である。シンガーソングライターの松崎ナオの曲で、個人的に大傑作と思っている。

{大人になってゆくほど 涙がよく出てしまうのは 1人で生きて行けるからだと信じて止まない}

 さっそくいい出だし。大人のくせに子どものように泣いてしまって、しかもとめどなく涙があふれてしまう。

{それでも淋しいのも知ってるから あたたかい場所へ行こうよ}

 しょんぼりさせたところでこの歌詞は急転直下。落とすテクニックを知っている。なんてあたたかい。そしてサビに向かう。

{川のせせらぎが聞こえる家を借りて耳をすまし その静けさや激しさを覚えてゆく 歌は水に溶けてゆき そこだけ水色 幸せを守るのではなく 分けてあげる}

 日本語が美しい。比喩の使い方も抜群にうまい。歌が水に溶けるという表現は見たことがないが、水色になっているさまを思い浮かべてほしい。透明ではなく、ハンコみたいにくっきりと水色になるのだ。

{なるべく大きくて なるべくりっぱな水槽を 自転車で買いに行き はなしてやろう}

 大自然というほどではない、小自然の中でノスタルジーを感じる情景。

{なんて奇跡の色を持っているの キラキラ揺らめいてる}

{水溜まりに映っている ボクの家は青く透け 指でいくらかき混ぜても もどってくる とても儚ないものだから 大切にして}

 感性が完成されている。タイトルにある川べりの家は幼いころに見た桃源郷なのか。

{一瞬しかない 一瞬しかない}

 短い歌詞と短いメロディーで世界観を作りだしている。こういう曲は昭和こそ多かったが平成の世にこんな名曲と出会えるとは。松崎ナオの作った短編映画を見てみたい。やや失礼な表現になるが歌唱力もちょうどいいのだ。しっくりくる純情さというか。

 ドキュメント72時間が神番組だったのは毎回エンディングで情に訴えかけてくる前奏があったからだと思う。これですべて締まるのだ。どんな終わり方を迎えようと、あのジャン、ジャン、ジャン、ジャンの音が響き渡ればすべて。まだ見たことのない人はぜひ。

          【今日の名歌詞】

歌は水に溶けてゆき そこだけ水色 幸せを守るのではなく 分けてあげる



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