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名曲34 「おじいさんのでんしゃ」【山野さと子】

ーー路面電車は生き続けるーー

【おじいさんのでんしゃ】

現在、東京を走る路面電車は都電荒川線のみになった。

都電はやはり時代に反してレトロでゆっくり走る。それこそまさにおじいさんのでんしゃである。昔はよく走っていたというが、私が生まれた90年代にはもうほとんどその姿を見ていない。もっといえば、私は未だに都電荒川線にすら乗ったことがない。なぜか。効率化を謳う現代において乗るメリットがないからだ。

しかしなくなってほしくない。そんな存在である。

この曲は子ども向けの曲にしては妙に詩的で雰囲気もしんみりしている。特に前奏から1番の歌いだしにかけてが秀逸だ。その寂しさは路面電車そのものの泣き声に聞こえる。

この曲が作られた当時から路面電車の減少化が叫ばれていたのだろう。おそらく90年代前半か80年代に作られていると思う。

子ども向けに「ろめんでんしゃのうた」とするのではなく、おじいさんにしたのが素晴らしい。おじいさんはかつて運転手を務めていた、本当の意味でのおじいさんと捉えるのが普通だろう。しかしこの曲に出会った当時3歳のころの私は、おじいさんを路面電車そのものと捉えていた。野球に付き合わず、路面電車に乗る子どもを描写していたのではないかと。歌詞の中に{うんてんしゅなのさ おじいさんはね}とあるのだが、それこそも比喩だと思っていた。

おじいさんのでんしゃは、うまいことに令和のいまでも通用している。

{ぼくしらないけど よるになると パンタグラフにひばながちるんだ こんどいってみるおじいさんとね わせだからみのわまで パチ パチ パチ ひばながもえてるのかもしれない いまでも}

本当に子ども向けかと。作詞が驚愕の出来である。3歳のころにこの曲に触れて感性を磨けたのはよかった。古臭さを感じさせない最強の子ども向け電車ソングである。ぜひとも後世に残したい。

【今日の名歌詞】

パチ パチ パチ ひばながもえてるのかもしれない いまでも


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