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洋楽CDを外国人観光客が購入!グローバルな音楽体験基地に変貌を遂げるタワーレコード渋谷店の話

2024年2月29日に、タワーレコード渋谷店が大規模な改装工事を終えて、リニューアルオープンした。地上8階、地下1階の巨大な建物は、世界最大級の店舗であり、今や外国人観光客が訪れる人気スポットだ。ここでCDやアナログレコードを買って帰る観光客もいる。
今回のリニューアルの対象は、アナログレコード専門店『TOWER VINYL SHIBUYA』、洋楽、クラシックのジャンル。世界的な人気を集めるVINYL(レコード)フロアとともに、洋楽とクラシックフロアの拡充。
音楽の聴き方の主流が、デジタルになっている中でのフロア改修とラインナップの拡充。若者の街から国際観光都市へと進化していく渋谷に立地する店舗で、リニューアルの特徴と目指す方向性について、タワーレコード渋谷店 青木店長と広報部の谷河氏に伺った。

リニューアルされた『TOWER VINYL SHIBUYA』(6F)

外国人観光客、シティポップ、VINYLの人気に胡座をかくのではなく

――本日はよろしくお願いします。タワーレコード渋谷店は、CDもVINYL(レコード)も扱っていますが、たくさんの外国人の方がお店に訪れているのを私もよく目にします。夕方ごろになると、ものすごく混んでいますよね。

タワーレコード渋谷店 青木店長(以下、青木):最近は、アジアからの方が多いように思います。中国、韓国、台湾、タイ、マレーシアなど。もちろん欧米の方も増えています。アメリカ、カナダ、ヨーロッパなどですね。店舗の中を見て楽しむ方もいますが、当然CDやVINYL(レコード)などを買って帰る方もいらっしゃいます。
やはり近年ではネット通販が主流になっているとのことで「CDショップ、レコードショップが無いので、日本のお店に行くのは楽しいよ。」と言われます。

――そうなんですね。リニューアルの大きな特徴の一つである、レコード専門店『TOWER VINYL SHIBUYA』ですが、コロナ期間中の2021年オープンしていますね。オープンしてからの感触はいかがでしたか?

青木:やはりコロナ禍を経た2023年5月ぐらい、入国制限も終わって、外国の方が一気に来だしてから、すごく盛り上がっています。でも、外国人だけではなく、日本人のお客様にも多くご来店いただいています。基本的に、VINYL(レコード)の購買層は中高年の男性が多いのですが、若年層、女性の方も多く来店してご購入いただいています。渋谷の街を歩いていると、若い女性でレコードバッグを持っている人もよく見かけますね。

――「レコードが流行っている」と言う言葉に説得力がある話ですね。最近は、アニメ関連作品のVINYL(レコード)も、注目されているそうですね。他にも傾向はありますか?

青木:ゲームのサウンドトラックとかも含めてリリースが増えていますね。日本のアニメやゲームが海外でも人気ですので、レコードも出ているなら買いたい、という流れかなと。
あとは、日本のシティポップのレコードはブームも続いていて、アジア、欧米に関わらず世界的に需要があります。そのため中古も値段が上がっている傾向があります。でも、今のブームもいつ終わるか分かりません。そうならないように、お店からムーブメントを起こしていくことが必要だと思っています。まだ注目されてない方たちにも発信ができるのが、お店の強みの一つです。

――リニューアルでは、VINYL(レコード)の旧譜(すでにリリースされている作品)の品揃えも強化していくとのことですよね。そのためには、VINYL(レコード)をレコード会社が再プレス(再製造)する必要もあると思います。働きかけなどもしていますか?

青木:まさに、それを今やっています。渋谷店から各レコード会社に、旧譜の再プレスの提案などは常にしてきています。またリニューアルしたフロアでは、中古品の取り扱いにも力を入れており、レアグルーヴ関連商品やJ-POP廃盤商品、ロックの貴重盤なども追加します。新品はロック、ソウル、ジャズなどの聴いてほしい名盤をお求めやすい価格で販売する「Special Price」アイテムも増やしていきます。

――レコード会社への働きかけ、そしてラインナップの充実は、お店からのムーブメントを起こすことに繋がるのかなと思います。それと、店内でのイベントやDJイベントなども強化されていくんですね。

青木:はい。今もイベントは数多くやっていますが、今後は、例えばギタリストの方など日本の音楽シーンを下支えしてくださっているプレイヤーを応援するイベントや来日するアーティストのサイン会なども、より注力していこうと思っています。我々がプレイヤーの方々をリスペクトし応援し続けていることを、もっと目にみえる形にしていきたいと思っています。
リニューアル前でも、ご本人が来店されてはいませんがイタリアのロックバンド、マネスキンの曲をDJっぽくかけたり、90年代のパンク・ロックバンド、グリーン・デイをかけたりしていました。そうすると、やはりお客様は喜んでくれますね。

旧譜もズラリと並ぶ、圧巻の店内。

CDは過去の産物ではないし、CDだけではない店舗づくり

――さて、今回のリニューアルでは洋楽・クラシックのフロアも拡充されます。縮小など寂しいニュースの方が多い中で、この決定には驚きました。まずはクラシックフロアのリニューアルについて、経緯などを教えてください。

青木:今はクラシックと、ジャズ、ソウルなどが同じフロアにありますが、やっぱりそこには違和感がありました。クラシックを好きな方は、特別な空間で静かに音楽を楽しみたい方が多いのでは、と思い、その方たちがお店に足を運びお買い物をするということ自体を楽しめる空間を作りたかったんです。
僕も最近、いろいろなクラシック音楽関係の方と話をしていますが、基本的にファン層が年配の方が多く、次の世代のリスナーがいなくなったら、ジャンルごと消滅するのでは?と言う危機感を持っている方が多くいらっしゃることを改めて知りました。レコード会社さんや関係者、アーティストの皆さんとも協力し、若い世代に、いかにクラシックの魅力を継承させていくか?と言うことも考えていきたいと思っています。
まぁ少し話が大きい感じになりますが、これからもタワーレコード渋谷にしかできないことを思い切ってやっていきたいです。

より充実する、クラシック音楽のフロア(8F)

――確かに。2000年代前半までは、クラシック専門フロアを構えた大型店もありましたが、縮小や閉店が多くなっています。その中で大英断をされたと思っています。

青木:ほんとですか。ちょっとやってみないと、ほんと怖いですけどね(笑)
また、リニューアル後からクラシックCDの中古も扱います。クラシックの中古CDは、実際すごくニーズがあるんです。クラシックファンの方はVINYL(レコード)というよりCDを好む方が多いようです。音質へのこだわりなのか、はっきりとした理由は分からないのですが、クラシックのVINYL(レコード)は、それほどリリースされていないですし、やはり音質と文字通りコンパクトでかさばらないということが理由なのではと推察しています。

――高音質CDもありますものね。販売だけではなくて、ピアノを中心としたインストアイベントや高音質のストアプレイ(店内で聴ける音楽)など、店舗に足を運ぶことでできる音楽体験があるのは素晴らしいですね。

青木:ピアノ中心にしたインストアイベントもありますし、演奏の他にもサイン会やトークイベントなども考えています。ストアプレイでは「タンノイ オートグラフ(TANNOY『Autograph』)」のスピーカーを配置し、よりダイナミックな音響で音楽を体験できるようになりましたので、ぜひ一度ご来店いただきたいと思っています。

インストアイベントでは、近い距離で演奏やトークを楽しめる。

洋楽離れではなく、良いものには時代も国も関係ない

――洋楽が1フロアに集約され在庫数も強化されますよね。これは、やはり海外からのお客様に向けて作ったのでしょうか?洋楽のCDを拡充というのも驚きました。

青木:海外のお客様が、洋楽のCDを買うことは、よくあります。CDショップが自分の国にないのもそうですし、洋楽が流行っている国などもあるようです。台湾の方などに聞くと、今、台湾ではUKロックが流行っているそうで「オアシスとかブラーとか聴いているんです。ザ・スミスとかUKがかっこいいんです」とおっしゃっていました。
それから、メタルは今なお安定した人気で、日本や海外に関係なく人気がありますので、メタルコーナーの展開拡充は最も力を入れたジャンルの一つです。来店された欧米の方から、「VINYL(レコード)だけじゃないんだ、CDもちゃんとやっているんだって。」と言われることも多いですね。
僕自身、VINYL(レコード)だけでなくCDも買われることには、正直驚きました。しかも輸入盤ではなく、帯やブックレットがついている、国内盤を買われる方が多いです。読めない日本語で書かれているものが面白いと感じているようです。

世界中の音楽好きが集まる光景が期待できる洋楽フロア(7F)

――日本人からしたら、驚きのことです。その一方で 日本では、“洋楽離れ”という言葉が付きまとう印象もあります。青木店長は個人的にはどのようにお考えでしょうか?

青木:昔と比べればある程度仕方ない部分もあるとは思っています。日本人のバンドやアーティストが、海外で活躍することが増えてきて、そこに憧れる若いリスナーがいるのは、当たり前だと思います。その流れは変わりませんが、それとは別に、日本の音楽を見直す時が、もうちょっとで来るのかなと思っています。インバウンド需要もそうですけど、今後は日本も世界も区別がなくなってくると思うんです。アジア、欧米も含めて。
例えば、テイラー・スゥイフトのようなアイコンを、特に“洋楽”という範疇ではなく、単純に「かっこいい」と思って聴く若いリスナーも増えていると思います。そこから、ビヨンセやアリアナ・グランデを聴いてみて、というふうに好きな音楽がより広がっていくだろうと。

――古いも新しいも国も関係なく、良いものは良いという考えの延長線のところに、そういったものがあるのかもしれませんね。

タワーレコード広報部 谷河(以下、谷河): 90年代から2000年代は、日本のJ-POPがすごく流行って、そこから洋楽人気が落ちていたように感じます。今も売り上げ的には、低迷をしているとは思いますが。
ただ、今の環境を見ているとTikTokやInstagramなど、本当に色々なところで洋楽に触れることが多くないですか?ああいったところから、ヒットが生まれていると思います。何となく流れていた曲がキャッチーだったり、メロディー良かったりして。「これ誰?」となっていますよね。
今までに知らないアーティストでも、買って聴いてみようかなって思ってもらうこともあるし、色々なところから音楽に入ってもらえれば良いと思いますね。

渋谷で40年以上 音楽好きが音楽好きのために作ってきた結果

――洋楽邦楽の垣根やターゲット層は日本の若者ということでは無く、もっと広い視点で見てみることが大事だと感じました。それと海外のお客様の反応や購買傾向が見られるのは、渋谷の強みかなと感じています。

青木:渋谷という街は、コロナの前からいち早くインバウンドの取り込みを積極的に行ってきた結果、ショッピングや夜遊びなど観光客が日本で最も楽しむことができる街だと思います。

訪日観光客にも人気のハチ公像も渋谷を見つめ続けてきた

――タワーレコードが渋谷に登場して40年以上が経ちました。店舗の場所は時代によって変わっていますが、渋谷の音楽カルチャーを語る時に外せない存在です。そして、渋谷には時代を彩った多くのCDレコード店が立ち並び、それらが切磋琢磨して大きな流れを生んできたように感じます。タワーレコード渋谷店は、他の店舗との差別化や独自のスタイルを築くことを意識し続けているのでしょうか?またその結果が、今回のリニューアルなのでしょうか?

二人:多分、意識をしていることは無いでしょうね。

谷河:「近隣の競合を考えて何かやらなきゃ!」ということは、無いんじゃないですか。まあ、割と単純といえば単純で、なるべく長い時間開けましょう、適正な価格でいきましょうという考えを持っています。そして、一番良いのは、置けるものは全部置きましょうということです。ただスペースにも限りがあるので、常にお客様が欲しいと思うもの、お客様に是非聴いてほしいという音楽をお届けし、提示する場所であることを、ずっとやってきたんだと。
タワーレコードは実は時代の変化や流行に合わせて、お店の中身はしょっちゅう変っています。社会的に大きな流れで変わったのが、2012年の「360°エンターテイメント・ストア」という部分です。モノ発信からコト発信へと言われ、お客様の消費行動が大きく転換してきたことに対応できるよう催事やイベントスペースを増やしました。
それから、ネットへの対応。特にSNSですよね。「写真を撮って頂いて、応援してください」とか「SNSに投稿してください」という考えに変わりました。ただ単にお店を構えて、商品を置いて、コメントカードで書いて、お客様が来るのを待っているのではなく、面白いことをどんどんネットを使って自分たちから発信していくように変わりました。
転換期はありますけど、お店自体は「お客様が喜ぶものを提供していきます」が根本にあると思います。それを、音楽好きが音楽好きのためにやっている、ということですかね。単純だし、綺麗すぎるのかもしれないですけれど。ずっと変わらないですよ。

サブスク時代に手触りのある商品を買うこと、売ることとは

――さて、今日は私(ミュージックソムリエ協会理事長 高安)のほかに、大学生が2名お話を伺いに来ています。彼女たちからの質問にもお答えをお願いできれば。最初の質問です。サブスク利用者が、特にコロナ禍で増えたと思いますが、そのような状況下でCDの買う良さは何でしょうか?

青木:僕もサブスクをよく使っています。使うようになって、買う量は確かに減りましたが、逆に、何回もサブスクで聴くような作品は、やっぱり手触りのあるもので欲しくなっちゃって。 CDでもレコードでも良いんですけどね。どうしても欲しいものだけを買うっていう習慣になりました。昔は試聴などで、こんなに作品を聴けなかったじゃないですか。ジャケットを見て、「あ、これ良さそう」って思って買ったけれど、実際には全然良くなかったとか(笑)今は事前に聴いて、「あ、いいな」と思ったものを買える。なのでサブスクの登場で買い方は確かに変わりましたね。

谷河:弊社のスタッフも、割とサブスクを使っていると思います。すごく便利ですよね。聴きたいものが試聴ができる感じで。個人的には、サブスクだけで楽しむ人がいても良いと思うんですよ。「サブスクで、満足です。なんでわざわざCD買うの?レコード買うの?」という人もいらっしゃいます。
でもそうじゃない人、CDなど手に取れるものが欲しいという人もいますよね。私もそうですし。ただ、サブスクは突然聴けなくなることが、たまに起こるんです。だから私は、そうならないためにも、ということもあるし、やっぱり手に持っていたいなという思いがあります。
自分の好きなものが、部屋に積み重なっていくことって嬉しくないですか。それが別に音楽じゃなくても良いんですけど、きっと、若い人の中にも、そういうタイプの人はいると思いますし。その中で、CDは音楽を聴く最も丈夫で半永久的に聴ける優れたメディアだと思います。

――CDショップ大賞では近年、ジャケットパッケージデザイン賞を創設しました。これは、ジャケットのデザインが素晴らしい作品に授与する賞です。例えば、YOASOBIの『THE BOOK』『THE BOOK2』の初回限定盤が受賞していますが、これはバインダーのような凝ったデザインでした。CDは以前ほどの大量販売ではないと考えると、付加価値をつけたグッズのような、ファンアイテムの1つのような流れは加速しているのかなと思います。

青木:そうです、必要だと思います。レコード会社の方には4,000円、5,000円くらいしても良いので、本当に付加価値のあるものを作った方がお客様には響くというような話をします。例えばですが、昔あったUSのトールボックスなどを出し直すなど、そういった付加価値があるようなものの方が、お客様は絶対喜んでくれるんじゃないかなと。

話題に出たYOASOBI『THE BOOK』と『THE BOOK2』初回限定版

――お客様の傾向などを間近で見ているからこそ、話せることですね。音楽好きが、音楽好きのお客様の喜ぶことを実行したことが、グローバルな人気を獲得した結果なのかもしれませんね。“世界最大級のCDショップ”というと、量に視点が向かってしまうこともありますが、それだけではなくグローバルな視点で音楽と出会える、情報発信基地になるように感じます。今日はありがとうございました。

新しい価値を創造する渋谷の実店舗はたくさん

今回は、タワーレコード渋谷店にスポットを当ててお話しを伺ったが、渋谷には、まだまだたくさんのCDショップ、レコードショップがある。渋谷スクランブル交差点に面したQFRONTにある「SHIBUYA TSUTAYA」は、4月25日にリニュアールオープン予定だ。

渋谷のランドマーク的な存在QFRONTにあるSHIBUYA TSUTAYA。こちらも楽しみだ。

「CDショップへ最後に足を踏み入れたのは、一体いつだろうか?」と思う人にこそ、渋谷の店舗の雰囲気やお客様の様子を見てもらいたい。CDなどのパッケージ商品の新しいあり方、店舗のエンタテイメント性を体感して頂けると思っている。

また、CDショップ大賞の授賞式が3月8日(金)14:30からタワーレコード渋谷店にて開催される。誰でも観覧可能なので、新しい音楽体験の一つとして遊びに来て頂ければ。(詳細は下記参照)

第16回CDショップ大賞2024 授賞式(受賞作品発表)
2024年3月8日(金)
開演 14:30 / 開場  14:00
場所:タワーレコード渋谷店B1 CUTUP STUDIO
入場無料:*ドリンク代 ¥500をお支払いいただきます

インタビューにご協力頂いた方
タワーレコード渋谷店 店長:青木 太一

2003年新宿店入社、広島店店長、新宿店店長を経て現在は渋谷店店長として勤務
タワーレコード広報部:谷河立朗 
広報部部長 1995年入社、広報部、現オンライン事業部、子会社の経営企画室を経て現在は広報部部長として勤務

インタビュアー:髙安紗やか(ミュージックソムリエ協会理事長)

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YOASOBI『THE BOOK』『THE BOOK2』のパッケージ制作秘話に関するスタッフインタビュー。

編集:石井由紀子(ミュージックソムリエ)
取材協力:井手満菜・白神爽香

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