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「リチャード・コリー」 Richard Cory サイモンとガーファンクル セカンドアルバム「ザ・サウンズ・オブ・サイレンス」第7曲

この作品は、当時聴いたサイモン&ガーファンクルの歌の中で、最もインパクトの強い歌でした。

詩のストーリーは…

生まれたときから、何の苦労もなく、お金の心配もせず、親の七光りで生きてきた人物。世間はいつも注目し、その行動一切を注目している。容姿も、たたずまいも、一流。彼が行動するたびに、色々なコメントが出るけれど、おおかた好意的。賛美に近い評価。

お話は、そんな高貴な階級ではないけれど、それなりに裕福な世界の人たちのこと。きっと、どんなちっぽけな、街でも、こういう人物や族はいつの時代もいる。

リチャード・コリーはある街の有力者。彼は街では英雄扱い。行動がすべて注目されている。

この歌の主人公は、彼の富を恨みながら、彼が経営する工場で働いている。でも、心では彼のようになりたいと思っています。

オペラ劇場にいけば、そのことを報道され、ショーにいくと、またもや世間に知らされる。それほど、世間みんなが彼の行動を見ている。

これってプライバシーが全くないということ。

ところが、結局、富や名声もありながら、リチャード・コリーは自殺する。

彼の心を知る人はいなかったのか?

「とても変わった人」という歌では、変わり者として、自殺していったある人物を歌っていますが、リチャード・コリーとある意味似ているような気がします。

音楽としては、当時のフォークロック的メロディとアレンジ。リードは、ポール・サイモン。

主人公は、彼をうらやみますが、結局彼に憧れています。

But I work in his factory
(でも、僕はあいつの工場で働いている)
And I cruse the life I'm livin'
(俺は自分の人生を呪っている)
And I curse my porpety
(俺は自分の貧しさを呪っている)
And I wish that I could be,
Oh, I wish that I could be
Oh, I wish that I could be Richard Cory
(でも、リチャード・コリーになれたらなぁ)

Lyrics by Paul Simon 迷訳:musiker

誰もが認める実力者の真の苦悩を、知る人は少ない。
私のような下世話な人間は、それでも、彼らに憧れてしまう。
心ではこれでいいのか?と問いながらも、、、。

エレキギター(死語!)のサウンドが懐かしいです。リズムギターも、アコースティックでなくエレキギターで刻んでいます。当時の流行なのでしょう。

E.A.Robinson作の原詩と興味深いコメント

メールマガジン「all simon and garfunkel」読者のN.T.さんから教えて頂いた「リチャード・コリー」の元となったと想像できる詩について調べてみました。

それは米国のEdwin Arlington Robinsonという詩人が書いた"Richard Cory"という詩です。
日本国内で発行されている書籍等では詳しい情報を得られることができなかったためYahoo.comで調べた所、"http://www.medialab.chalmers.se/guitar/richard.cory.html"というサイトを見つけました。
(※この文を書いた2002年頃の事。今はリンク切れになっているため確かめようもありません。が、当時書いたままの文を以下続けます)

そこには、ロビンソンの原詩とサイモンの歌詞、1973年に出版された "Paul Simon : Now and Then"(Spencer Leigh)という書籍に記述されている「リチャード・コリー」についてのコメントです。

ロビンソンとサイモンの詩は、内容は似ているものの、全く同じというわけではありません。詩はサイトを参照いただくとして、書籍の内容について英文からの要約をしますと、


「リチャード・コリー」という新しい歌は、詩人ロビンソンの詩を題材としたと言い訳をしておく必要がある。この歌は、同じように新聞記事に触発されて書かれた「とても変わった人」とイメージを重ねてしまうが、時代はさかのぼる。

1897年、「Frank Averyが銃で自分の腹を撃ち抜いた」という記事を読んだ詩人E. A. Robinsonがその3ヶ月後友人に「『リチャード・コリー』という短いけれどいい詩ができた」と語った。「詩に理想主義をかかげているわけではないが、何か多くのものを込めている。たぶん、人間性だろう。私は、それを理解してもらえるよう訴え続けるつもりだ」

ロビンソンは、リチャード・コリーが自殺する様子を、ショッキングな表現で書いた。ポール・サイモンも同じ場面について書いている。しかし、いずれの詩においてもなぜリチャード・コリーが自殺に至ったか全く説明がない。

サイモンは、リチャード・コリーが自殺した最後のフレーズの後(そこで終わらせず)、コーラスを繰り返した。こうして労働者たちがリチャード・コリーの自らの命を絶つという勇気ある行為を称えていることを表現したのだ。

ロビンソンの詩がポール・サイモンの心にどれほど訴えるものがあったかは容易に想像できる。二人とも、群衆の中における人間の孤独というものを理解していたのだろう。


「とても変わった人」「アイ・アム・ア・ロック」そして「リチャード・コリー」。いずれの歌にも共通したテーマが感じられます。

それにしても「リチャード・コリー」に元となった詩があったとは驚きです。

サイモンとガーファンクル1967年ライブ版「リチャード・コリー」は、レコードとは一風変わった雰囲気です。ぜひ聞いてみて下さい。


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