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「7時のニュース~きよしこの夜/7 O'clock News/Silent Night」 サイモンとガーファンクル「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム」第12曲

2000年〜2001年発行メールマガジン「all simon and garfunkel」掲載の記事

これは厳密にいうとサイモン&ガーファンクルの作品ではありませんが、珍しいので取りあげておくべきでしょう。
(※オリジナルの歌はクリスマス・キャロル。S&Gの作品ではありません。しかし、二人の重厚なハーモニーとラジオから聞こえてくるニュースをかぶせるというアイデア自体で紛れもないS&Gのオリジナル作品と言える、と今は思っています)

夜7時のニュース。ラジオ放送ですね。早口の英語で、アナウンサーが弾丸のようにしゃべりまくっています。

筆者は大学時代外国語学部英語学科に2年在籍していました。

英語の音声演習授業で「FENのニュースを聞き取れるようになれば、一人前だ」と言われ、一所懸命ヒアリング練習のため聞きましたが、音楽への関心が高く学業よりもっぱらクラブ活動に励んだためものになりませんでした。

卒業して数年後、翻訳・外国語教育の会社に1年だけ勤務したことがあります。当時、仕事でお世話になった実用英語講師ケリー伊藤氏(「テリー伊藤」ではありません・Plain Englishを提唱していて、著書もある実践英語教育者)が「FENを聞いて英語をマスターしてはだめだ。あれは米軍兵がアナウンサーを担当しているから、標準英語ではない」と講座でお話していたのを思い出します。

私の個人的経験談の話はさておき。
この作品「7時のニュース」では、上院議会で法案討議の内容、コメディアンの死亡、住宅開放デモ行進、殺人事件の裁判、ヴェトナム反戦運動関連の騒動、反戦運動に対するニクソン氏のコメントなど、社会的テーマがわずか2分間に述べられています。

聞き取れる人は、ヒアリング力が相当高い方ですね。私はとても無理です。(笑) 

こういう社会的テーマのニュースにかぶせて、「きよしこの夜」を歌うという、斬新な試みは、アルバム発売当時も珍しがられたと思います。

歌についてコメントはしません。本当に単純にサイモン&ガーファンクルが、きよしこの夜をピアノの伴奏で歌っている。それ以上の説明は必要ありません。

言い換えると…、説明は不要と言い換えましょうか。ピアノのアルペジオ、二人の厚みのある美しいハーモニー。聴き慣れたクリスマス・キャロルもサイモンとガーファンクルが歌うと、全くのオリジナル作品に思えてくるから不思議です。

二人はこの作品で何を語りたかったのか?その判断は、私たち一人一人にゆだねられているかもしれませんね。

(ここまでの文は2000〜2001年頃配信メールマガジン「All Simon and Garfunkel」の記事をベースに若干加筆したものです。)


2023年12月24日(本日)の加筆

メールマガジンでこの作品について書いてから20年。テクノロジーの発展と共に、執筆を助けてくれる様々な道具が登場してきました。

BGM的に流れているラジオニュース風な弾丸スピーチ。いったい何を言っているのだろう、といまさら興味が湧いてきます。

ヒアリング能力が低いため自分でディクテーションは不可能です。そこで、このラジオニュースの音声をディクテーションアプリでiPhoneに聞かせテキスト化してみました。他力本願ごめんなさい、笑。でも、いやあ、すごい!

さらに、Google翻訳とChatGPTの助けを借り、作成した翻訳文、というか厳密にいえば五木寛之氏の「カモメのジョナサン」のように、創訳。いえ、私の場合はいつもの迷訳(^_^)が、以下の文章です。

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おなじみ反対陣営一堂を集結させたものの、採決で擁護者たちは最強の支持者たちからの票を得られませんでした。もともとジョンソン大統領は、全住宅におけるすべての人による完全な差別禁止を提案したのです。しかし、可決不可能であることは議員全員がわかっていた、つまり想定内だったわけです。結局妥協案が下院司法委員会で痛々しく苦慮の上まとめられる結果となりました。

ロサンゼルスでコメディアンのレニー・ブルースが死亡しました。麻薬の過剰摂取によるものと考えられます。ブルースは42歳でした。

マーティン・ルーサー・キング博士は、シカゴの郊外シセロへのオープンハウジング・マーチの計画を中止するつもりはないと述べています。クック郡保安官のリチャード・オグルビーは、キングにマーチの中止を要請し、シセロ警察は、もし行われるならば国民警察動員要請をすると述べました。キング博士は現在、ジョージア州アトランタに滞在中で、火曜日にシカゴに戻る予定です。

シカゴでは、学生看護師9人の殺人容疑者のリチャード・スペックが、今日、起訴のために大陪審へ送られました。看護師たちは、シカゴのアパートメントで刺され、絞殺された状態で見つかりました。

ワシントンでは、アメリカ合衆国非米活動委員会(HCUA)の特別小委員会が、反ベトナム戦争の抗議行動に関する調査を続ける中、今日も緊張感が漂っていました。抗議者たちは反戦スローガンを唱え始めるやいなや公聴会から強制的に退去させられました。

前副大統領リチャード・ニクソン氏は、ニューヨーク外国戦争退役軍人大会におけるスピーチでこう語りました。「ベトナムにおける現行の戦力増強が行われない限り、アメリカは向こう5年間の戦争継続を覚悟しなければならないだろう」と。ニクソン氏は、さらに「この国(アメリカ)における戦争反対の意思表示こそが、自国アメリカに対する最強で唯一の武器になる」とも述べています。

以上、午後7時版のニュースでした。おやすみなさい。

サイモンとガーファンクル「7時のニュース~きよしこの夜 7 O'clock News/Silent Night」
BGM的に流れるニュースの書き起こし。迷訳 by musiker

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近年発刊されたポール・サイモンについての2冊の書籍における、本作品についての記述が大変興味深いので、以下英文の引用とChatGPTによる邦訳に私が若干加筆した文を掲載します。

“7 O’clock News/Silent Night,” one of a very few overtly political, antiwar songs to make its way onto any Simon & Garfunkel album. Protest music was by now dead in the water, and neither Paul nor Artie nor Columbia Records wanted any real part of it, although this last cut very effectively blended a beautifully melodic version of the traditional Christmas carol “Silent Night” with the voice of a newscaster reading horrific headlines about the war in Vietnam, the civil rights struggle, and other disturbing images that played extremely well against the beauty of the Christmas song.

「7 O’clock News/Silent Night」は、Simon & Garfunkelのアルバムに取り入れられた非常に少数の明白な政治的な反戦ソングの1つです。プロテスト音楽は(当時 ※musikerの添え書き。以下同)既に影を潜めており、ポール(・サイモン)やアート(・ガーファンクル)、またはコロムビア・レコードもそれに本格的に関与したくありませんでした。ただし、この最後の曲は、伝統的なクリスマス・キャロルである「Silent Night」の美しい旋律と、ベトナム戦争、公民権闘争などに関する戦慄の見出しを読むニュースキャスターの声が非常に効果的に調和しており、クリスマス・ソングの美しさと対照的に非常に印象的でした。

引用;Eliot, Marc. Paul Simon: A Life (p.75). Wiley. Kindle 版. /翻訳:ChatGPT 加筆:musiker

Two weeks later, Simon and Garfunkel recorded “7 O’Clock News/Silent Night,” a conceptual piece that once again addressed the gap between the country’s ideals and such disheartening news as continuing civil rights setbacks, the escalation of the Vietnam War, and the senseless drug overdose of a personal hero (Lenny Bruce, to whom the album was dedicated). “I was driving home, and I just started singing ‘Silent Night,’ and the news was on, and I started playing around with the volume, and the piece came together,” Simon explained. On the track, Simon and Garfunkel sang the Christmas carol “Silent Night” while an announcer read the mock newscast. As the track continued, the solemn news report gradually drowned out the hopes contained in “Silent Night.”

2週間後、サイモンとガーファンクルは「7 O’Clock News/Silent Night」を録音しました。これはコンセプチュアルな作品で、再び国の理念と続く公民権の後退、ベトナム戦争のエスカレーション、そして個人のヒーロー(アルバムが捧げられたレニー・ブルース)の無意味な薬物過剰摂取などといった、失望させられるニュースとのギャップに取り組んでいます。
「家に向かって車を運転していて、突然『Silent Night』を歌い始めたんだよ。そしたらラジオからニュースが流れていて、音量をいじり始めているうちに、この曲(のアイデア)ができあがったんだ」とサイモンは説明しています。
トラックでは、サイモンとガーファンクルがクリスマス・キャロル「Silent Night」を歌いながら、アナウンサーが架空のニュースキャストを読み上げる想定になっています。音楽が進むにつれ、厳かなニュースレポートが「Silent Night」に込められた希望を次第にかき消していきました。

引用;Hilburn, Robert. Paul Simon: The Life (pp.101-102). Simon & Schuster UK. Kindle 版.
翻訳:ChatGPT/迷訳:musiker

ロバート・ヒルバーンの原書の翻訳本は『ポール・サイモン/音楽と人生を語る』(DU BOOKS刊/訳:奥田祐士)で発売されています。


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