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Aiming For Enrike『Music For Working Out』(2020)

 Aiming For Enrikeというバンドを紹介する際によく用いられる、『ノルウェーの爆裂マスロックデュオ』というキャッチコピーがとても気に入っている。

 『爆裂』というワードだけ聞けば何とも陳腐な響きだが、実際に彼らの音楽を聴いてみれば、成るほど確かに『爆裂』が相応しいように感じられるし、それ以外の言葉では彼らの音楽を形容することは不可能だとさえ思えてくる。

 ギターとドラムのみの2人組というミニマルな編成ながら、圧倒的な演奏技術と、エフェクターを最大限に駆使した多彩な楽曲アイディアで、オリジナリティ溢れる音楽を創り上げてきた。

(左) ドラム Tobias Ørnes Andersen
(右) ギター Simen Følstad Nilsen

 ライブにおいては、弾いたギターの音をその場で録音するリアルタイムサンプリングの手法を用いている。録音したフレーズをループ再生させる装置を何台も同時操作しながら、一人で幾つもの音を重ねていく。そしてドラムも圧倒的強度と手数の多さでそれに応戦。常に緊迫感のあるライブを行っているのもこのバンドの大きな特徴の一つだ。

 音源としては、2012年の結成以降、5枚のフルアルバムをリリース。

 私は普段、この手のマスロックやポストロックを熱心に聴くことは少ない。"超絶テク"を披露されても、『た、確かに凄いけど….』と若干引いてしまうことの方が多い。だが彼らの4th『Music For Working Out』は例外だ。"凄い"だけでなく、純粋に曲が良い。ダンスミュージック的な要素も持ち合わせており、非常にキャッチーに仕上げている。

『Music For Working Out』(2020年)


 中でも特に神懸かり的な出来なのが3曲目の『Infinity Rider』。中毒性の高い音像、スリリングな楽曲展開、どれを取っても素晴らしく、"凄い"と"曲が良い"を高次元で共存させた、あまりにも見事な楽曲だ。(ライブでの再現度も"凄い"。)


 そんな『Infinity Rider』と双璧をなす素晴らしい出来なのが、4曲目の『Hard Dance Brainia』。本作のダンスミュージック要素が最も如実に現れた楽曲。


 上記の2曲が頭一つ抜けているが、他にも『Undead Horse of Thunder and Metal』や『Ponzu Saiko』(?!)など、面白い楽曲が詰まっているので興味のある方は是非聴いてみて頂きたい。


 再来月、5年ぶりの来日公演を行うことが発表された。

 5th『Empty Airports』を昨年1月にリリースして以降では初の来日となる。5thはアンビエント要素が強い異色の内容で、個人的には正直あまりピンと来なかったので、どうかな〜と思っている。もしかしたらライブで化けるのかもしれないが…。

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