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00'sピアノエモ筆頭、Mae特集

 今回は、00年代のEMOシーンの中でも、とりわけピアノエモの筆頭として名を馳せたUSのインディーバンド、Mae(メイ)の音楽をまだ聴いたことがないという方へ、入門となるような記事を書いていきたいと思います。

1.Maeの魅力とは

 Maeの最大の魅力を一つ挙げるとするならば、私はそのオリジナリティ/独創性を推したいと思います。非常にコンセプチュアルで、ユニークなアイディアに富んだ作品を数多く残しているのがMaeの特徴と言えます。

 一例を挙げると、それぞれ『(M)orning』『(A)fternoon』『(E)vening』と題したEPを発表しており、その名の通り、朝・昼・夜をテーマとした連作コンセプトEPといった趣になっています。(各アルバムタイトルの頭文字を取ると"MAE"になるという小ネタ付き)

 サウンド面では、Jimmy Eat Worldの『Clarity』から影響を受けたエモーショナルなギターワークに、キーボードが繊細で美しい音色を添え、そして時に意外にも激しめなドラミングでロックな一面を覗かせることもしばしばあり、そのギャップもまた魅力の一つです。

 ソングライティング面では、オーソドックスなようでいて一筋縄ではいかない、一捻りのある優れたメロディセンスが持ち味と言えるでしょう。

2.プロフィール

 活動拠点:アメリカ🇺🇸ヴァージニア州
 活動期間:2001-2010年、2013-現在
 ジャンル:EMO、インディーロック

<主な活動内容>
2001年 結成
2003年 1st  "Destination:Beautiful" リリース
2005年 2nd "The Everglow" リリース
2007年 3rd  "Singularity" リリース
2009年 EP   "(M)orning" リリース
            EP   "(A)fternoon" リリース
2010年 EP   "(E)vening" リリース
            解散
2013年 再結成
2018年 4th  "Multisensory Aesthetic Experience" リリース

3.勝手に全アルバム+EP格付け

どのアルバムから聴き進めるかの参考として是非。
 ※あくまで私個人の独断と偏見です。
 ※絶対評価だと全アルバムが"S"か"A"になってしまうため、あくまで相対評価にしています。

 まず最上位評価の""は、迷うことなく2nd『The Everglow』。

 一人の少年の冒険と成長を描いた壮大な物語仕立てとなっており、コンセプトアルバムとしてのクオリティが凄まじく高いです。楽曲はシームレスに繋がれており、思わず作品の世界観に惹き込まれます。まるで映画を観ているかのような没入感は、他では得られない至福の音楽体験だと言えるでしょう。各楽曲を単体で評価しても申し分の無い名曲揃いで、繊細な美しさと激しいバンドサウンドが融合した、ハイレベルなビューティフルEMOアルバムとなっています。中でも特に素晴らしい楽曲は、壮大なスケール感の#3 Someone Else's Arms、疾走感と清涼感溢れる#4 Suspension、ソングライティングが素晴らしい表題曲#11 The Everglow


 続いて""評価が2枚。まず1枚目は記念すべきデビュー作『Destination:Beautiful』。

 2ndと比較するとまだ若干荒削りな面があるものの、この時点で既にMae独自の繊細な美しさは垣間見ることができます。例えるなら、ダイヤモンドの原石のような作品です。Jimmy Eat Worldの『Clarity』を彷彿とさせるようなエモーショナルなギターワークといった面においては、最もその影響を感じさせるEMO度の高い作品です。イチオシの楽曲は、Maeの名刺代わりの代表曲#1 Embers and Envelopes、バンド屈指のエモーショナルな楽曲#6 Last Callなど。


 ""評価の2枚目は、EP『(M)orning』。

 個人的には、"朝昼夜3部作"の中で頭一つ抜きん出た存在です。作品全体の統一感もさることながら、楽曲単体の質の高さも非常に優れています。3部作全体を通じてのハイライトと言ってもいいアンセム#2 The Fisherman Songに、普遍性と壮大さを兼ね備えた名曲#6 A Melody, The Memoryと、隙がありません。いぶし銀的存在の#4 Boomerangも個人的に欠かせない存在です。


 続く""評価も2枚。まずは3rdアルバム『Singularity』。

 バンドメンバー本人も実際に語っていますが、当時所属していたレーベルの方針もあり、売れ線を意識した楽曲作りになっています。確かに、サウンドプロダクションが大味で、持ち味である繊細な美しさが影を潜めているのが分かります。ただ、サウンドこそ"Maeらしさ"が薄れてはいるものの、メロディラインの良さは相変わらずの高水準なので、決して駄作とは思いません。が、入門として聴くのであれば、1stもしくは2ndから入ることをオススメします。


 ""評価の2枚目は、EP『(E)vening』。

 キャリアを代表するような頭一つ抜きん出た楽曲こそ無いものの、どの曲も一定の水準を超えてくる安定感があります。アートワークの通り、夜空に浮かぶ無数の星を連想するような、煌びやかなサウンドが持ち味。三部作の最後を飾る#9 Good (E)veningでは、(M)orningで登場したフレーズが異なるアレンジで再登場するなど、連作コンセプトアルバムならではの盛り上がりが見せ場。個人的には#3 I Just Need You to Knowが好きです。


 ""評価には、EP『(A)fternoon』。

強靭かつトリッキーなバンドサウンドが目立つ、ロック色の強い作品。ただ、どうしてもソングライティングの質、メロディックさで言うとやや単調な印象を受けてしまうのも事実。ということで一段落ちるこの位置に。


 最後の""評価となったのが、4th『Multisensory Aesthetic Experience』。

 再結成後初のリリースとなった本作。アルバムタイトルは元々のバンドの由来となった言葉ということからも本作への気合いのような意思が感じられますが、これまでのEMO色は一掃され、シンセや打ち込みを多用したサウンドへと変貌を遂げています。ソングライティング面でも、過去作と比較して普遍的なグッドメロディが減っている印象は否めません。シンセや打ち込みが、生のバンドサウンドと融合する瞬間の格好良さを新境地と捉えられるかどうかで評価が分かれそうな作品。

4.最後に

 独創性が高く、ポップセンスに溢れていて、なおかつしっかりとロックしている。そんな音楽にピンと来る方は是非、Maeの音楽に触れてみてください。

 また、最近アルバム単位でじっくり音楽を聴く機会が減っているという方には、彼らの傑作コンセプトアルバム"The Everglow"での素晴らしいアルバム体験をオススメします。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。


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