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ハードコアパンクとEMOの邂逅 The Coastguards『I Refuse』(2014)

The Coastguards(ザ・コーストガーズ)は、千葉県柏市を拠点に活動する、メロディック・ハードコアバンドである。

 彼らが参照する音楽は、Dag NastyLifetimeといった80's〜90'sのハードコア・パンクから、Further Seems ForeverStarmarketJimmy Eat Worldといった初期EMOまでを網羅している。

 それらの音楽を見事なまでに鮮やかにクロスオーバーさせてみせたのが、2014年リリース、彼らにとって唯一のフルアルバム、『I Refuse』である。

 結論から言ってしまうと、ハードコア・パンク/EMOのファンにとって、これほど最高なアルバムは無い。国内の同シーンにおいては最高峰だと、私は言いたい。

 しかしながら、ハードコアやEMOのファンでも彼らの存在を知らないという人は多いと感じる。もっと多くの人に聴かれるべき音楽だという風に思えてならない。

 色々と文章を並べるよりもまずは聴いてみるのが早いということで、ハードコア/EMO好きだけど彼らのことは知らない、という方は是非リンクから聴いてみて頂きたい。

 代表曲の『All I Want』、『Final Word』。

 ハードコア好きなら『Break Down The Walls』、『Walk Among The Dead』、EMO好きなら泣きのアルペジオ炸裂の『So Long Nostalgia』、『Disconnected』が特に刺さることだろう。

 もし聴いてみてピンと来たという方は、バンドについても少し詳しく書いていくので、こちらも読んで頂ければ幸い。

 結成は2011年。バンドの中心人物は、ドラマーの"Marcy"こと嶌田政司。元ヌンチャクの向達郎が解散後に結成したハードコアバンド、kamomekamomeのドラマーとして千葉県柏市のハードコアシーンを牽引してきたほか、同じく柏のEMO/プログレッシヴバンドBuddhistsonや、 インディーロックバンドOCEANLANEといったスタイルの異なるバンドを幾つも掛け持ちしてきた、百戦錬磨の強者だ。

 The Coastguardsでは、そんな経験豊富な嶌田が全曲の作曲を手掛けている。

 そしてそこにボーカルhajimeが歌メロを乗せるという制作スタイルである。

 このバンドにEMOの要素をもたらしているのは、泣きのギターアルペジオも勿論大きいが、hajimeの透き通るような歌声とメロディセンスによるところが大きい。

 hajimeは元々OCEANLANEのフロントマンとして嶌田と活動を共にしていた。

 OCEANLANEは、EMOからブリットポップまで多種多様なジャンルの音楽を吸収したインディーロックバンドで、ハードコアとは程遠いスタイルであった。The Coastguardsが単なるハードコアバンドで終わらないのは、メンバー個々の多彩な音楽遍歴に由来する。

 OCEANLANEを解散後、ハードコアをルーツに持つ二人を中心に、kamomekamomeやaieなど柏のシーンを盛り上げてきた経験豊富なメンバーを加えて結成したのがThe Coastguardsというプロジェクトなのである。

 活動頻度は決して高くないが、直近では3月にBraid、4月にStarmarketの来日公演でサポートアクトを務めることが決まっている。

 EMOレジェンド達の来日を観に行かれる方は、是非The Coastguardsにも注目してみてほしい。

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