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スウェーデンの伝説的ロックバンド、Kentを知っていますか?

 2016年に惜しまれつつも解散した、スウェーデンの伝説的ロックバンド、Kentを知っていますか?

 世界的な知名度こそ高くないですが、スウェーデン国内では「国民的バンド」と言っても差し支えないほどの人気を誇っていました。

 今回は、そんなKentの音楽をまだ聴いたことがないという方へ、入門となるような記事を書いていきたいと思います。


1.Kentの魅力とは

①独自路線を貫き通すカリスマ性
 Kentの楽曲は全曲スウェーデン語で作詞されており、自国内での活動に特化していました。90年代後半に一度世界進出を試みたことがあり、3rdアルバムと4thアルバムはスウェーデン語盤と英語盤の両方をリリースしましたが、期待した成果を挙げることが出来ず、5thアルバム以降は再びスウェーデン語のみのリリースに戻し、自国内での活動に専念したのです。結果的に、スウェーデングラミー賞の常連となっただけでなく、『Sverige』という楽曲(『スウェーデン』の意味)が第2の国歌的な扱いを受けるほどの人気を獲得するなど、国内ではその存在が神格化され、カリスマ的人気バンドとなったのです。

②スウェーデン語の響きのカッコ良さ
 これはもう実際に聴いてみるのが一番早いです。この感覚を言葉で説明するのは非常に難しい。とにかく英語とは一味違った発音が格好よくてクセになるので、是非聴いてもらいたいですね。感覚的な話にはなりますが、『V』とか『D』とか、濁点が付く単語が非常に多い気がしていて、それも関係しているのかもしれません。Kentのボーカリスト、"ヨッケ"ことJoakim Berg(ヨアキム・ベルグ)の歌唱表現によるところも大きいと思います。

③ジャンルレスな独自のバンドサウンド
 Kentのサウンドは時代の移り変わりと共に変化を見せます。初期は『スウェーデンのRadiohead』と称されたこともあり、"Pablo Haney"、"The Bends"時代のレディヘを彷彿とさせるようなギターロックを展開していました。後期はエレクトロニカを大胆に導入したシンセポップへとシフトチェンジしています。その二つの時代の間には、過渡期とも言える、何とも形容し難いオルタナティブ・ロックを鳴らしている時期が存在しています。とにかく、一つのジャンルにとらわれないスタイルが魅力です。

④コレクター精神をくすぐるアートワーク
 Kentのアートワークは本当にどれも秀逸です。↓にディスコグラフィーを並べてみました。デザイン性、インパクトの強さ、色彩豊かながらもシックな色合い、お決まりのバンドロゴ、どれを取っても本当に格好良いんです。



2.プロフィール

 活動期間:1990年〜2016年
 活動拠点:スウェーデン🇸🇪
 ジャンル:オルタナティブロック

■メンバー
 Joakim Berg (Vo, G)
 Sami Sirviö (G)
 Martin Sköld (B)
 Markus Mustonen (Dr)


■ディスコグラフィー
初期(1991年〜2001年)ギターロック期
 1995年 1st "Kent"
 1996年 2nd "Verkligen"
 1997年 3rd "Isola"
 1999年 4th "Hagnesta Hill"
 2000年 B面集 "B-sidor 95-00"
中期(2002年〜2008年)過渡期
 2002年 5th "Vapen & Ammunition"
 2005年 EP "The Hjarta & Smarta"
 2005年 6th "Du & Jag Döden"
 2007年 7th "Tillbaka Till Samtiden"
 2008年 ボックス盤 "Box 1991-2008"
後期(2009年〜2016年)シンセポップ期
 2009年 8th "Röd"
 2010年 9th "En Plats I Solen"
 2012年 10th "Jag är inte rädd för mörkret"
 2014年 11th "Tigerdrottningen"
 2016年 12th "Då som nu för alltid"
 2016年 ベスト盤 "Best Of"
 2016年 解散


3.勝手に全アルバム格付け

どのアルバムから聴き進めるかの参考として是非。
 ※あくまで私個人の独断と偏見です。
 ※絶対評価だと全アルバムが"S"か"A"になってしまうため、あくまで相対評価にしています。


 ""評価が2枚。まず1枚目、最高傑作として推したいのが、2002年リリースの5th、『Vapen & Ammunition』。

 初期のギターロックでもなければ、後期のシンセポップでもない、ジャンルレスでどことなく不穏な雰囲気を醸し出したサウンドが格好いい、傑作アルバム。全10曲がそれぞれ強烈な個性を発揮しつつ、楽曲としての完成度も高い。国民からの絶大な支持を誇り第2の国歌的な扱いまで受けた『Sverige』の他、『Dom Andra』や『FF』等の人気曲を多数収録した、ファン人気抜群の一枚。ホワイトタイガーのジャケも最高。

お気に入りトラック:Sverige



 ""評価の2枚目は、1997年リリースの3rd、『Isola』。

 初期のギターロック期を代表するアルバム。1st、2ndよりも雰囲気は暗く、寂しげな空気感を纏っており、どことなくサイケな要素も。キャッチーな楽曲は皆無。また、本作はスウェーデン語盤だけでなく英語盤も存在する。ライブで最後に演奏するのが定番の大人気曲『747』は本作に収録。個人的には、『Elvis』も屈指の隠れ名曲だと思っています。

お気に入りトラック:747



 ""評価は3枚。まず1枚目は、1999年リリースの4th、『Hagnesta Hill』。

 この頃から、ギターロック時代からシンセポップ時代への過渡期に入りますが、まだギターロック寄り。前作『Isola』に比べてメロディアスな楽曲の割合は増したように思います。ギターリフが最高に格好いいロックナンバー『Musik Non Stop』や、極上の名バラード『Kevlarsjäl』等の名曲を収録。

お気に入りトラック:Musik Non Stop



 ""評価の2枚目は、2005年リリースの6th、『Du & Jag Döden』。

 本作のサウンドは、彼らのキャリアの中でも特に異彩を放っています。ダークでシリアスな雰囲気ながらも、繊細な美しさも持ち合わせており、なおかつ楽曲展開が非常にドラマティックで壮大。アルバム全体を通じての統一感という意味では一番。

お気に入りトラック:400 Slag



 ""評価の3枚目は、2012年リリースの10th、『Jag är inte rädd för mörkret』。

 バンド後期、シンセポップな音楽性へと転換して以降のアルバム群からは唯一"A"評価に選出しました。本作は純粋に、後期の作品の中で最もソングライティングが優れています。特に、冒頭の『999』は後期の代表曲で、ファン人気も高い大名曲です。

お気に入りトラック:999



 ""評価は3枚。まず1枚目は、1996年リリースの2nd、『Verkligen』。

 まだ荒削りなギターロックを展開していた頃のKent。ただ、サウンドの作り込みこそ荒削りではあるものの、メロディセンスはこの頃から既に非常に優れた才能を発揮していることが分かります。特に最高なのは、しっかりとギターロックしつつも甘酸っぱいポップネスを秘めた『Halka』。

お気に入りトラック:Halka



 ""評価の2枚目は、1995年リリースの1st、『Kent』。

 記念すべき1stアルバムは、サウンドメイクは最も荒削りですが、最もギターを掻き鳴らしている作品でもあります。ソングライティングの面では、全体としては2ndよりも劣りますが、トリの『Frank』に関してはずば抜けた名曲で、初期を代表するロックバラードです。

お気に入りトラック:Frank



 ""評価の3枚目は、2010年リリースの9th、『En Plats I Solen』。

 彼らのキャリア史上、最もシンセサイザーが前面に押し出された作品で、前編にわたって色彩豊かで煌めくようなサウンドを展開しています。ソングライティング的にはさほど優れているとは言えないものの、アルバム全体の雰囲気がよく統一されており非常に聴きやすい作品ではあります。

お気に入りトラック:Skisser För Sommaren


 ""評価は3枚。まず1枚目は、2007年リリースの7th、『Tillbaka Till Samtiden』。

 後期に入る直前の作品ですが、サウンド面においてもソングライティング面においても
やや迷走気味な印象で、今ひとつ集中力に欠けるアルバムです。シンセポップな音楽性へとシフトする前の迷いのようなものを感じるというか。個々の楽曲単位では『Ingenting』のようなキラーチューンもあり決して悪くはないのですが、アルバムとしてはやや散漫な出来なのは否めないかと。

お気に入りトラック:Ingenting



 ""評価の2枚目は、2009年リリースの8th、『Röd』。

 シンセポップな方向へと振り切れた作品。初めて2曲目の『Taxmannen』を聴いた時はあまりの音楽性の変化ぶりに驚いたものです。ただ、ソングライティングが優れた曲とそうでない曲の差がはっきりと出た作品で、この評価になりました。

お気に入りトラック:Taxmannen



 ""評価の3枚目は、2014年リリースの11th、『Tigerdrottningen』。

 キャリア史上最も地味な作品ではありますが、サウンドプロダクションが緻密で、じわじわと良さが分かってくるようなスルメアルバムです。『La Belle Epoque』はミニマルながらもスケール感のある名曲。

お気に入りトラック:La Belle Epoque



 最後の""評価となったのは、2016年リリースの12th、『Då som nu för alltid』。

 解散の直前に発表したラストアルバム。『Vi är inte längre där』や『Gigi』等、個性的な楽曲が揃ってはいるものの、ソングライティング的に目立っている楽曲が無いのと、アルバム全体としての個性が今ひとつ弱いためこの位置となりました。

お気に入りトラック:Vi är inte längre där



5.最後に

 いかがだったでしょうか。もし興味を持って頂けた方は是非聴いてみてほしいのですが、彼らのフィジカルはいかんせん入手困難です。(まだ活動中だった当時から、アルバム発売日の1ヶ月以上前からamazonで予約していても、発売日から1ヶ月以上遅れて届くほどの流通難でした。)なので、まずはサブスク等で聴いてみることをオススメ致します。

 また、初期〜中期にかけてのコレクションとして、『BOX 1991-2008』なるものが存在します。もしKentの世界にどっぷりハマった方は、激レア品ではありますが何としてもコレを入手してください。何故なら、ボーナストラックとして、アルバム未収録曲が多数収録されており、そしてそれらのクオリティが驚くほど高いからです。本編に匹敵するどころか、本編を凌ぐほどの名曲すらあります。そしてジャケットも素晴らしく格好いいのです・・・


 最後まで読んで頂きありがとうございました。

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