愛の歌
消してしまいたいあの思い出は、実は美しいものであったのではないか?
精神を蘇らせるには、愛しかないのだと思ったこと。
あの夜のことを覚えている。
「何が僕を救いうるのか?」
そうだ。僕はそれまでずっと、誰かが何かをしてくれることを期待していた。何か、具体的な結果を期待していた。
でもそれじゃ僕は救われないのだと、知っていた。だから、どうすればいいのか、じっと考えていた。
そして、ある日こんな答えが浮かんだのだ。
「そうだ。僕を救うのは、僕の愛だ!」
愛そうと思ったのだ。愛すべきものを、全力で愛そうと思った。でも、自分に何が愛せるのか分からなかった。
心の底から愛情が湧いてくるのが分かった。この愛を捧げる相手を探していた。
そうだ。その愛を、世界に捧げるべきだったのだ。僕はその時、その愛を自分のために利用しようとしてしまった。
自分の生活をよりよくするために、より自分を活力に満ちた存在するために、その愛を犠牲にしようとしてしまったのだ。
それが誤りだった。大事なのは、ただ愛が愛であることであって、それ自体が力であったのに、それに気づかなかったのだ。
一番身近な存在、自分自身を全力で愛するだけでよかったのだ。そうして愛を育てて、いつかその愛が溢れて自然と他者に向かっていくのを待つだけでよかった。
そうだ。焦ってそれを誰かに贈ろうとしたことが失敗だったのだ。そうして愛は下手な化粧をして、美しさを失って、いつの間にか消え去ってしまった。
暗い夜が訪れた。暗い夜が訪れて、僕はもう……生きていけないと思った。愛は全部憎しみに変わってしまった。自分自身への憎しみに。そう、自分を愛することができたというのに、愛さないことを選んでしまったから。
僕は愛に飢えていた。
自殺は、自分自身への愛に気づくために、必要なことだった。そうだ。死にそうになって初めて、僕は僕に死んでほしくないと思っていたことに気づいたのだ。死にそうになって初めて、そうだ、僕には生きる価値があるのだということに気づいたのだ。
そうだ。僕は僕を愛している! 誰よりも強く、誰よりも激しく、誰よりも深く!
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