私は深海魚【詩】

 私は深海魚

 深い海の底で生きている

 ずっと暗いところにいたせいで

 目はずっと前に見えなくなった

 体は太く 心はもっと太く

 この深さまで来れるのは

 小さすぎる生き物と

 大きすぎる生き物だけ


 海の底は冷たい孤独

 ほとんど動かず過ごしているけど

 休み方を忘れてしまったのか

 ずっと休んでいるだけなのか

 もう分からなくなってしまった


 私は深海魚

 とても寂しいのだけれど

 賑やかな浅瀬が恋しいけれど

 そこには重さが足りなくて

 長くそこにはいられない

 私の居場所はここにしかない


 私は深海魚

 同族が欲しい

 でも彼は私の姿を見て驚いて逃げてしまうかもしれない

 私自身も彼女の姿を見て驚いてしまうかもしれない

 私たちは誰にも見つからず生きてきたせいで

 きっと醜い姿になっているから

 あぁ でも私たちにはもう見るということができないじゃないか

 そうだ 私たちのこの世界には文字と想いだけ

 姿かたちは消えてなくなり

 そこにあるのは思想だけ


 私たちは深海魚
 
 両親のことは覚えてないけれど

 それでも私たちは雄と雌だから

 いつかきっと出会えるのでしょう

 私たちは長生きするから

 たくさん子供を産んで
 
 この冷たい孤独を増やしていくのでしょう

 人生はそうあるべきなのです


 私たちは深海魚

 深い場所でしか生きられない

 どれだけ醜くても真っ暗な深海ならば

 誰も気にしない笑う人もいない

 ただぬるぬるした体を寄せ合って

 穏やかな快楽に身を浸すのが

 今の私の小さな夢なの


 私たちは深海魚

 誰にも理解されぬ者

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