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『週末、部屋の片隅で』

ども、ならざきです。
即興です。
                                                                                                                                                                         

――言葉が、出てこない。

誰かと話をするとき、
最初の一言は出てくるんだけど、
その次の言葉が思いつかない

                                                                                                      

”ねえ”とか 
”やあ”とか 
”ちょっとすみません”とか 
最初の言葉は思いつくのだけど、そこからが思いつかない。 

テンプレートは、頭のなかにいっぱい有る。 

”元気だった?”とか 
”調子どう?”とか 
”昨日の○○、面白かったよね~”とか 
用件があるときは、いきなりそれを切り出してみるとか 

そんな程度の”つなぎ”で良いはずなんだけど、 
誰かと――何かと真正面から向きあうと、 
テンプレさえも浮かんでこなくて 

で、結局、しどろもどろになる。 
話してる相手の顔が、 
『……なに言ってんのこの人』 
みたいな顔になる。 

――ああ、うん。 
もちろん、もしかしたら相手はそんなこと思ってないかもしれない。 
もしかしたら、私の話もちゃんと伝わってるかもしれない。 

でも、私にはそう見える。 
だから、もっと言葉が出てこなくなる。 
だから、話が続かなくなる。 
だから、空気が気まずくなる。 
だから、その人は私から離れていく。 
そんな気がする。 

どうでも良い人なら、別にいい。 
どうでも良くない人が離れていくのは、いやだ。 

だから、私は必死に話をつなげようとするけど 
必死になればなるほど、頭のなかがぐるんぐるんして 
けっきょく、言葉が出てこない。 

いっぱい本も読んだ。 
いっぱいドラマも観た。 
アニメだって、漫画だって、いっぱい。 
でも、言葉が出てこない。 

なんでだろうな。 
なにが悪いんだろうな。 

頭かな。 
性格かな。 
運命なのかな。 
遺伝なのかな。 

父さんや母さんも、 
じいちゃんやばあちゃんも、 
みんな、おんなじように悩んだのかな。 

ほんの、 
ほんのちょっとでいいから 

上手く話せるようになりたいな。 

体育座りをしながらそんなことを考える、 
そんな退屈な土曜の午後。

(了)

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