『モテル男のアプローチ講座(会社の同僚編)』

気になる人が現れたら……デートのきっかけ、どうやって作ってる? 
http://www.tokiomonsta.tv/hitomebo/column/article/984-hitomebo-date.html


(ボロボロのビルの2階にある広間に、たくさんの男性が並んで座っており、その正面には一人のイケメンがマイクを片手に何やら話している) 

「……というわけで、デートのきっかけ作りなんて、モテる男には楽勝なんですよぉ。今から絶対に成功する方法をお教えしますので、お手元にあるテキストをお開きくださあい」 

(マイクのイケメンに、男性たちが手元のテキストを開く。そこには以下の文章が書かれていた) 


『モテル男のアプローチ講座(会社の同僚編)』

①まず、全身タイツを用意します。Amazonで3000円も出せば簡単に購入できますので、お手軽です。ちなみに色は赤がベスト。あなたは彼女にとってヒーローとなるべき人ですから、やはり色は情熱の赤でしょう。
②そして次に、被り物を用意します。女性のためのヒーローなのですから、工事用の黄色いヘルメットやウサ耳飾りなど、お相手の女性のお好みに合わせて用意しましょう。
③用意が出来ましたら、会社に向かいます。決して着て行かないこと。途中でお巡りさんに見つかったら、会社に遅刻してしまう可能性があります。ヒーローが変身するのは、クライマックスシーンというのが王道ですしね。
④テキパキ仕事しましょう。デートの最中に女性に「……そういえば、あの仕事途中みたいだったけど大丈夫?」と心配されては、身も蓋もありません。もし多少のドジをするなら、彼女の見ている前で。ヒーローとの落差を演出するのも悪くはないでしょう。
⑤お昼休みには、持参した弁当を見せつけるように食べましょう。今流行の『お弁当男子』です。コンビニ弁当を詰め替える程度でOK。ぱっと見ではわかりません。
⑥午後からもテキパキ仕事しましょう。でもがっつきすぎないように注意。気分だはトヨエツかキムタクっぽく。
⑦定時になったら仕事をまとめて、スマートにロッカーに向かいましょう。あくまでスマートに。颯爽と。
⑧ロッカーにしまっておいた全身タイツと被り物に着替えて、猛スピードで女性のもとに向かいましょう。あなたは彼女のヒーローです。彼女への思いを込めて、他の連中などお構いなしに、まっすぐに向かいましょう。
⑨女性を見かけたら、満面の笑みを浮かべて、目の前でポーズを取りましょう。ポーズはもうひとつしかありません。最高のヒーローポーズ、『ジョジョ立ち』です。これでもう女性はイチコロ。目に涙を溜めて喜んでくれることでしょう。
⑩ここまできたらもうあとひと押し。すかさず両手を広げて、次のセリフを感情を込めて言ってください。
 『ヘイベイベー、トゥナイトをミーとトゥギャザーしようぜ!』 と。
⑪普通の女性ならここでもう泣きながらハグしてくると思いますが、お相手がシャイ、もしくは普通の女性じゃない場合は、以下の対策も頭に入れておきましょう。
⑫もしここで断られたとしても諦めてはいけません。更にもう一度ジョジョ立ちで押しましょう。これがホントの推しメンです。
⑬もしこの時に同僚の男性に羽交い絞めにされたとしたら、その男性は間違いなくライバルです。肩の関節を外して羽交い絞めを解き、すかさず背後に回ってジャーマンスープレックスでKOしてあげましょう。
⑭もし女性に逃げられたら、すぐに追いかけましょう。ここで逃げられたら終わりです。警察が――いや、解雇――いや、彼女のせっかくの想いを受け止めることができなくなります。早く、建物から彼女が出てしまう前に追いついてください。
⑮もし⑬⑭が失敗してトラブルになったときは、そのまま一気に屋上に向かいましょう。
⑯屋上に辿り着いたら、ヒーローの独壇場です。そのまま空を飛んで脱出をはかりましょう。たまにはヒーローも負けます。三十六計逃げるに如かずです。 

(全員との読み合わせが終わり、イケメンが再びマイクを取る) 

「さて、いかがでしたでしょうかあ?大事なことはたった一つですよお。あなたが女性にとってヒーローである、ということを自覚することですう。 常に颯爽と。キメポーズはふらつかないように気をつけましょうねえ」 

(ここで入口から司会者らしき男が、受付らしき男とともに登場し、マイクを握る) 

『……はい、皆様お疲れ様でした。先生もありがとうございました。
 ではこれで、『モテル男のアプローチ講座(会社の同僚編)』を終了します。受講費用の20万円は入口横の受付にてお支払い下さい。
 あ、カードでお支払いの方は、こちらで処理をしますので、カードと暗証番号を受付にてご提示くださ――』 

(ここで入口からスーツ姿の男たちが警察手帳を見せつけながら乱入。阿鼻叫喚の騒ぎとなった室内をよそに、緞帳がゆっくりと降りてきて幕となる) 

(了)

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